シンクーが大切にしているのが、香りです。
100%オーガニックの精油を、
スキンケアの一部に配合しています。
精油とは、植物の花や葉、果実から、
天然の香り成分を抽出したオイルのこと。
化粧品の原材料として大切なものです。
精油のブレンドをお願いしたのは、
ジル・べートゥミュウさん。
南仏の古城に仕事場を構え、
世界各国の生産者を訪ねる
植物原料の第一人者です。
どんなふうに精油をブレンドしているのか、
お話を聞きました。
担当はシンクーの鈴木です。

>ジル・べートゥミュウさんプロフィール

ジル・べートゥミュウ

100%有機の自然原料(精油など)を扱う
シリウス社を1994年に設立。
アロマテラピーなどの植物学に基づき、
スキンケアからボディケア、食品、
サプリメント、ハーブティまで、
幅広い商品を世界中のクライアントのために開発。
フランスの国際有機認証機関である
エコサートの基準を満たした製品を取り扱う。
オフィスとラボは、15世紀に建てられた
南仏・ラセール城の中にある。

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第2回 植物からメッセージを託された人。

──
秋に発売を予定している化粧水のために、
「ジェントル・ウーマン」と名付けた香りを
提案してくださいました。
(実は、今年の秋に化粧水を発売予定です!
楽しみにお待ちいただけたらうれしいです。)
ローズなんだけれど、それだけじゃない。
もっと複雑で深くて。
シンクーチームでもすごく人気がありました。
ほかにどんな精油が入っているんでしょう?
ジル
特徴的なものは、ベチバーですね。
ベチバーというのは、香水の世界では
男性のものに使われることが多いんです。
マスキュリン(男性的)で、深くて、持続時間が長い。
でも、私は、こういうベチバーが
女性から香るのがすごく素敵だなって思って。
──
ええ。垢抜けていて、軽さもあって。
ジル
もうひとつは、シダーウッドオイルです。
シダーウッドも、どちらかというと
マスキュリンに分類される香りです。
でも僕のブレンドだと、
もう少し愛らしいイメージが加わっています。
──: 
なにか香りの設計図のようなものがあって、
そこに最適な精油をあてはめていくんでしょうか?
ジル
いえ、システマティックに作るというよりは、
「感じる」に近いですね。
精油はそれぞれが完璧なシンフォニーをもってます。
それらが一緒に演奏されてうまくいくように
組み合わせるのが、私の役割だと思っています。
たとえば、ある香りの一部分と、
別の香りの一部分が合わさって、
まったく違う香りが生まれたりする。
時間を置くことでも、香りは変化しますから、
そういうことも全部ひっくるめて、
常に冒険なんですよ。
大切なのは、バランスを取ることです。
──
ジルさんが作る香りは、
原材料の種類が多いぶん、香りも複雑です。
今回、「祝福、幸せ」というキーワードに対して
ジルさんが作ってくれた香りを嗅いだときに、
「そう、これ、この感じ」と
理屈抜きに一瞬で惹かれてしまいました。
私たちとジルさんはまったく違う人生を歩んできたのに、
香りを介して、コミュニケーションができる。
それがすごく不思議で。
ジル
香りには、言葉を超える力がありますよね。
私やスタッフの経験や技術もありますが、
なにより、植物の魔法だと思ってます。
太陽と土だけで育つなんて、
植物ってすごいと思いませんか?
収穫されたあとも精油として残り、香りが生きている。

──
こうしてお話しする前は、
ジルさんは特殊な技術をもっていらして、
戦略的に香りを作るひとというイメージがありました。
でも、そうではなくて、植物と人間のあいだに立ち、
植物の力を私たちに伝えてくれる存在なんですね。
植物からのメッセージを託された人というか。
ジル
その表現、うれしいですね。
香りを作る以外にも、
大事な仕事があると思っているんです。
原材料を育てている現地のひとに会って、
彼らが栽培している思いまで汲み取って、
化粧品などの製品化につなげたい。
生産者の生活を守る役割まで、負っているんです。

(続きます)

2021-09-28-TUE

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