南伸坊さんと糸井重里が
あちこちを小旅行しながら、
めくるめく雑談をくりひろげる、
そこそこ人気のシリーズ、黄昏。
思えばずいぶん久しぶりの新作です。
奈良に居を移したゲージツ家、
「クマ」こと篠原勝之さんと話します。
それぞれが二十代のころから
とっくに雑談し合ってる3人、
はたしてどこまで行くのやら。
どうぞ、のんびりおつき合いください。
必然、「老いと死」についても語ります。

>糸井重里

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糸井重里(いといしげさと)

コピーライター
株式会社ほぼ日会長

雑談オールラウンダー。
ダジャレもシモもどんどん行く。
タコの話なども得意。

>南伸坊

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南伸坊(みなみしんぼう)

イラストレーター
エッセイスト

蓄積した雑学から雑談を展開。
さまざまなモノマネ経験あり。
タコの話なども得意。

>篠原勝之

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篠原勝之(しのはらかつゆき)

ゲージツ家
作家

鉄や土の作品をつくる一方、
文筆家としても活躍し、
泉鏡花文学賞を受賞する。
過去のエピソード豊富。

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第14回  床下の泥棒と横尾さんちのメロン


糸井
赤瀬川さんが死んでから、
もうだいぶ経つね。
篠原
原平さん、亡くなったときいくつ?

糸井
若いんだよ。
77歳、かな。
糸井
だって『老人力』を書いたのが、
60代に入ってすぐだったからね。
案外若くして『老人力』を書いてたんだよ。
そうだよね。
篠原
あの本は売れたんだよな。
糸井
だって、あれで家が建ったから。
ニラハウス。
糸井
そうそう、ニラハウス。
篠原
屋根にニラが生えてる家な。
糸井
あれ、どうしたんだろうね。
いまも屋根にニラがあるのかな?
ねえ。
ニラは生えてないかも。

糸井
ああ、そうか。
クマちゃんが昔、すごく寒い家に住んでてさ、
地面から寒気が上がってきて、
あまりにも寒いからっていうんで、
床下に藁をつめてたよね。
篠原
ああ、昔だろ。成城の家だ。
成城なのに、ねえ(笑)。
藁は家全体の床下に藁をつめたの?
篠原
いや、俺がよくいる部屋のところだけ、
床下に藁をつめた。
糸井
日本昔ばなしみたいだね。
「長老は、あんまりさむいので、
ゆかのしたに、わらをつめた」。
篠原
昔の家だから床下があったんだ。
最近の家にはもう床下がないな。
床下って、隙間からのぞき込むと、
なんかいろんなものがあっておもしろかったな。
猫が死んでたりしてな。
糸井
泥棒が隠れてたりね。

篠原
そうそうそう。
糸井
よく泥棒が隠れるんだよ、ほんと、
困ったもんだよ。
成城の家の床下に、藁と猫と泥棒が。
糸井
思い出した。
あの、成城の、クマちゃんの家の近くには、
アフガン犬がいたんですよ、
アフガン・ハウンド。
篠原
あっ、あの犬な。
糸井
細くて、尻尾がくるくると
蚊取り線香みたいに巻いてる犬。
クマちゃん、その尻尾のことをよく言ってた。
「こうなってんだよ」って。
篠原
あれは、名前もシャレててな、
ポチとかそういうんじゃないんだよ。
糸井
金持ちの犬だから。
篠原
そうそう。なんか、ポチとかじゃなく、
アドルフとか、ルドルフとか、
そういうのなんだよ。
糸井
アドルフ(笑)。
ルドルフ(笑)。

篠原
いや、覚えてないけどさ。
なんか、そういうのだったよ。
糸井
あの成城の家は、
横尾(忠則)さんちのアトリエに
けっこう近かったよね。
篠原
そうそう、何度か行ったな。
糸井
俺も一緒に行ったことあるよ。
篠原
どういうわけか、
かならずメロンが出てくるんだよね。
横尾さん、メロンが好きなのかな。
糸井
あのメロンはもらいものだよ。
だってさ、ふつうの家はメロンを買わないよ。

あはは、至言だね(笑)。
糸井
あと、横尾さんちに行くと、
よく連れていかれたのが
多摩川の河原のところにある焼肉屋。
だいたい横尾さんがじゃあ行こうかって言って、
そこの焼肉屋でバーベキューするんだよ。
篠原
俺は行ったことないな。
糸井
そこもちょっと変わった店でさ、
ものすごく煙を出して焼くんだけど、
どんだけ煙を上げても、河原だから平気なのよ。
いいねえ(笑)。
篠原
横尾さんなぁ。いま、もう、だって、90?
糸井
89歳かな。6月に90歳になる。
篠原
90かぁ‥‥。

(3人のなかではクマさんが一番年上。つづきます)

2026-03-10-TUE

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  • 写真・山口靖雄(MountainDonuts

    これまでの「黄昏」シリーズ

    黄昏

    黄昏放談

    黄昏 日光・東北編

    黄昏 あちこち編

    黄昏 スカート編

    黄昏 ブータン編