
南伸坊さんと糸井重里が
あちこちを小旅行しながら、
めくるめく雑談をくりひろげる、
そこそこ人気のシリーズ、黄昏。
思えばずいぶん久しぶりの新作です。
奈良に居を移したゲージツ家、
「クマ」こと篠原勝之さんと話します。
それぞれが二十代のころから
とっくに雑談し合ってる3人、
はたしてどこまで行くのやら。
どうぞ、のんびりおつき合いください。
必然、「老いと死」についても語ります。
糸井重里(いといしげさと)
コピーライター
株式会社ほぼ日会長
雑談オールラウンダー。
ダジャレもシモもどんどん行く。
タコの話なども得意。
南伸坊(みなみしんぼう)
イラストレーター
エッセイスト
蓄積した雑学から雑談を展開。
さまざまなモノマネ経験あり。
タコの話なども得意。
篠原勝之(しのはらかつゆき)
ゲージツ家
作家
鉄や土の作品をつくる一方、
文筆家としても活躍し、
泉鏡花文学賞を受賞する。
過去のエピソード豊富。
- 糸井
- 石川啄木のことなんだけどさ。
- 南
- 石川啄木。うん。
- 糸井
- 啄木がさ、
「じっと手を見る」って言ってたじゃない。
高校生のとき、あの歌が教科書にあって、
俺、先生に質問された覚えがあるんだよ。
啄木はなぜ見たんでしょう? みたいな。
で、そこで俺は
「ただなんとなくじゃないですか」って
答えた覚えがあって。
- 南
- ははははは。
- 糸井
- それ、いつまでも妙に、
あの答えはないなぁ、って、
この年になっても思ってるわけよ。
- 南
- はははははは。
- 篠原
- はははははは。
- 糸井
- ないよなあ、やっぱり。
でね、またそれを考えてたんだけどね、
あれ? って思ったのよ。
「じっと手を見る」ってさ、
100人中100人が、
手のひらだと思ってるじゃない?
- 南
- そうだね。こう。
- 糸井
- 手の甲を見るってことは
誰も言わなかったなと思って。
俺、手の甲を見る方に
ちょっと1票入れてみたい。
- 南
- 「なんとなく甲を見てるんじゃないですか」
ってことね。
- 糸井
- なんとなくじゃなくて(笑)。
今回は、しっかりした答えだよ。
- 糸井
- というのもね、歳を取るとさ、
ああ歳取ったな‥‥って、
手の甲を見て思うんだよ。
- 南
- ああ、ああ、思うね。
シワがあったりシミが出たりとかして。
- 篠原
- うん。だいたい、
じじいになると手の甲を見るね。
- 糸井
- じじいになると見るよね。
- 篠原
- 女の人もな、手に歳が出る。
逆に手のひらは、ほとんど歳関係ないから。
- 糸井
- そうなんだよ、甲なんだよ。
こっちだよね。
- 篠原
- うん、こっちだ。
- 南
- 啄木は、じっと手の甲を見てた。
- 糸井
- ただね、残念なことに‥‥
あの歌を詠んだとき、
石川啄木、二十代。前半。
- 南
- 手のひらだな、やっぱり。
- 篠原
- ふつうは、手のひらだな。
- 糸井
- つまんないなあ、それじゃ。
甲にしてほしい。
- 南
- 啄木も、まだまだだね。
じっと甲を見てほしいね。
- 糸井
- まだまだだね。
でも、年齢が手の甲に出るっていうのは
みなさんの同意があってよかった。
- 篠原
- 見るよ、俺、手の甲。
老けてきたなあ、とか思う。
- 糸井
- 若くないなと思うよね。
歳をとってもきれいな
女の人たちっているじゃない?
あの人たちも手の甲は
写真に撮らせないんじゃないかなあ。
あ、でも、クマちゃんの手は若いね。
土をやってるからかな。
- 篠原
- 俺か?
- 糸井
- 80過ぎた手じゃないよ、それ。
- 南
- そういえばそうだね。
- 篠原
- いや、シワシワになってきたよ。
おじいさんになったよ。
- 糸井
- しょうがないよね、それは。
- 篠原
- 大根の漬物みたいに干しちゃえばいいかな。
一日干してたら、水分がちょっと飛んで、
張りが出てくるんじゃないか。
- 南
- 手を干すのはたいへんだよ。
取り外せないんだから。
- 篠原
- そりゃそうだな。
- 糸井
- そんなことよりさ‥‥。
- 南
- うん。
- 糸井
- 高校時代のあの
「なんとなくじゃないですか」
ってのは、ダメだったなぁ‥‥。
もうちょっとあっただろう。
- 南
- はははははは。
(自分の手の甲を見ちゃいますね。つづきます)
2026-03-27-FRI
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写真・山口靖雄(MountainDonuts)
これまでの「黄昏」シリーズ
黄昏
黄昏放談
黄昏 日光・東北編
黄昏 あちこち編
黄昏 スカート編
黄昏 ブータン編






