
おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
星野概念(ほしの・がいねん)
精神科医として働くかたわら、執筆や音楽活動も行う。いくつかの場所での連載や寄稿のほか、著作もあり。音楽活動はさまざま。著書に、いとうせいこう氏との共著 『ラブという薬』(2018)、『自由というサプリ』(2019)(ともにリトル・モア)、単著『ないようである、かもしれない〜発酵ラブな精神科医の妄言』(2021)(ミシマ社)、『こころをそのまま感じられたら』(2023)(講談社)がある。対話や養生、人がのびのびとできることについて考えている。
- 概念
- VOWの編集長もやってるのかと思って。
- ──
- そうなんですよ。
- 概念
- 狂ってるなあ。
- ──
- わはは、ありがとうございます。
総本部長という、
わざわざ仰々しい肩書を拝命しています。
- 概念
- しかも‥‥現在は『sweet』で連載中?
- ──
- そうなんですよ。もう10年くらい。
- ただし、『sweet』のまぶしい読者層と、
VOWの内容および投稿人って、
まったく一致してないと思うんですよね。
- 概念
- でしょうね(笑)。
- 今回、かなり久しぶりに読みましたけど、
あいかわらずおもしろかったです。
ぼく、VOWの他にも、
『バカドリル』とか『テレビブロス』が
大好きだったんですよ。
- ──
- やっぱり。概念さんって「精神科医など」
という肩書ですけど、
絶対にこっち側の人だと思っていました。 - それではさっそく、
好きなネタを教えてもらっていいですか。
- 概念
- まず、この子どもの作文。
- 新聞かなんかに載ったやつだと思うけど、
もう、展開がミステリーすぎて。
『ベスト・オブVOW』より
- ──
- ラスト数行でひっくり返してくるやつ!
しびれますよね。
- 概念
- あと何気なくタブーにさわってるでしょ。
- 子どもが書く文章って、
そのあたりのすごみがあると思うんです。
- ──
- いきなり「死人」が出てきますものね。
- ひらがなを主体とした作文の最後の行に、
唐突に、遠慮会釈もなく、「死人」が。
- 概念
- あと、大ネタじゃないけど、
「安全運転してイルカい」も好きでした。
- ──
- はい、かわいいと思います。
『ベスト・オブVOW』より
- 概念
- こういう看板ネタも定番だと思いますが、
やっぱりおもしろいですよね。
『ベスト・オブVOW』より
- ──
- わはは、呪いの看板か。
- ちなみに
立ちション禁止やフンさすな系の看板に
「鳥居を描く」って、
ひとつの常套テクニックらしいんですよ。
- 概念
- あ、そうなんですか。
- ──
- つまり「神さまが見てるぞ、すんなよ!」
という意味を込めているそうです。 - 東京国立近代美術館の学芸員であられる
成相肇さんが言ってました。
- 概念
- ああ、バチが当たるぞと。
同じ意味の看板では、これが最強ですね。
『ベスト・オブVOW』より
- ──
- 立ちションひとつで、死んだり負けたり。
- 概念
- ぼく、書いた人は詩人ですらあると思う。
- だって、そもそもこのメッセージを、
お金をかけて
わざわざ金属の看板にしちゃった時点で、
ここにいたるまでの、
ことの成り行きの長い道のりを感じるし。
- ──
- たしかに、紙や段ボールの貼り紙でなく、
少なくとも
10年くらいはもつような看板ですしね。
- 概念
- 似た系統のやつだと、これもきてますよ。
どうして人は、
こういう極端な表現をしたくなるのかな。
『ベスト・オブVOW』より
- ──
- 何度も何度もやられて、
もう辛抱たまらんみたいなことですかね。 - 「糞は飼い主の方が持ち帰ってください」
みたいな気持ちの段階は、
とっくに通り過ぎてるってことですよね。
- 概念
- そうそう。
- ──
- 現代って、AIのおかげでもあいまって、
コンテンツが
死ぬほどうみだされてるじゃないですか。 - だから、ほとんどの創造物は、
つくった瞬間に、埋もれていきますよね。
- 概念
- つまり、他との差別化ってことか。
- ──
- NO MORE フンの気持ちを、
その他多くの立ちション禁止看板の海に
埋もれさせないために。
- 概念
- 大声で「どりゃーっ!」まで叫んで。
- AIを含めた
現代におけるすべてのイマジネーション、
クリエイティビティ、創意工夫‥‥
そういう言葉でひと括りにされる何かを
あっさり超えてきてますよね。
「あ、それ言っちゃうんだ」みたいな。
- ──
- とにかく、人間がやってる感じがします。
生身の人間が怒ってんだなっていう。
- 概念
- こっちの「日本は終了しました」とかも、
よく出会うなあと思いました。 - こういう状況に。
『ベスト・オブVOW』より
- ──
- 全世界に散った、
われらがVOW投稿人たちの包囲網よ。 - 何年か前に、ネット上で
「日本死ね」って有名になりましたけど、
あのとき、
このネタを思い出したりしていました。
不謹慎にも。
- 概念
- でもこちらの「日本は終了しました」は、
ただの報告にすぎず、
書いた人の感情は入ってないんですよね。
- ──
- わはは、ただのVOW物件ですしね(笑)。
ハル9000からの報告のようにクールです。 - ちなみに個人的には、
このへん、くだらなくて好きなんですよ。
- 概念
- あ、見出し系。
- ──
- そうそう。新聞の見出しを考える人って
整理部の記者さんなわけですが、
けっこう
わざとやってるんじゃないかってくらい。
『ベスト・オブVOW』より
- 概念
- これを書いた人の意図はともかくですが、
これを見つけて送ってくる人のセンスと、
それを
こうして集める人のセンスもありますね。 - 「本番へムード高まる」は、かなり好き。
- ──
- 「ホテルは満室状態」というフレーズも、
サブタイトル的でグッときます。 - 新聞という媒体がまとう、
書いた人は真面目な記者さんですよね、
という暗黙の前提が、
ネタのエッジをより際立たせています。
- 概念
- そこへ、VOW投稿人の「解釈」と、
編集部のサンプリングセンスが加わって。
- ──
- 書いた人、送ってきた人、載せた人。
- 概念
- そう、その「三位一体」が
VOWのおもしろさ、なんでしょうね。
『ベスト・オブVOW』より
(つづきます)
2026-09-11-FRI
