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糸井 |
あ、中沢くんだ。 |
中沢 |
こんにちは。 |
タモリ |
あ、どうも。 |
糸井 |
こんにちは。
きてくれてありがとう。
『アースダイバー』
タモリさんが、すごい
おもしろがってまして。
「タモリさん、食いつくぞ!」
と思って、送ったんだけどね。 |
中沢 |
おもしろかったですか? |
タモリ |
すごくおもしろかった。 |
糸井 |
『アースダイバー』の
まえがきのコンセプトは、
血わき肉おどったよなぁ。 |
タモリ |
うん。
なんで、あんなに
ワクワクするんだろうねぇ。 |
糸井 |
つい
眉唾になるぐらい、
よくできてたもん。
でも感動しました。
ほとんど詩だね。あれ。 |
中沢 |
パリやローマを歩いても
こんなに深い話までいかないんです。
ローマはせいぜいローマ時代だから、
二〇〇〇年もいかないでしょう。
東京には、縄文時代からの、
ほんとにへんなものが残ってて。
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タモリ
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「坂道研究」を
やってますので、東京は、
ずいぶん、歩きましたが……
『アースダイバー』のような
「縄文からの東京の歩きかた」
というのは、衝撃だったです。
縄文のことを思いながら
歩いたことは、ないので。
だから、縄文というのが
おもしろくなってきていますね。
そもそも、ある場所に
人がなぜ住もうと思うか、
にも、興味があるんです。
なんでベーリング海峡を
移動しようと思ったのか?
それから
アメリカに定住にしたやつ。
中米にいくやつ。
最南にいくやつ。
「いや、俺はここでいい」
「ちょっと俺は先にいく」
そういうやつに
わかれるわけでしょう? |
中沢 |
そうそう、それがおもしろい。
途中でわかれていくんですよ。
のちの
インカ帝国のあたりで迷うらしい。
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タモリ
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(笑) |
中沢 |
コスタリカのほうにいったり
また戻ったり、渦巻くらしい。 |
タモリ |
そうとう
逡巡するものがあるんだろうなぁ。 |
中沢 |
アンデス山脈の
どっちを通るか。海側か内陸か。 |
糸井 |
(笑)東名を走ってる時、
みたいな悩みだね。 |
中沢 |
わかれたり、躊躇があったり……。 |
タモリ |
中米で
「わしたちはここでいいけんね」
ってやつも、いるわけですよね。 |
中沢 |
そこに
残ってるやつもいるわけです。 |
糸井 |
タモリさんは「いいけんね」が
知りたいわけですよね? |
タモリ |
そうそう。 |
中沢 |
最初に移動したやつは、
とにかくマンモスを追ってったじゃない? |
糸井 |
それはわかりやすいんだよね。 |
タモリ |
うん。 |
中沢 |
そいつらが、
マンモスを、食うわ食うわ……。
最短の仮説だと、
北アメリカから
南アメリカの突端の岬まで
三〇〇年や四〇〇年だったらしい。
この仮説、すごすぎるけど、
ぼくは好きです。
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糸井
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短い!
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タモリ
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(笑)かなりイケイケだったんだね。
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中沢 |
モーレツなスピードで、
南まで行っちゃったらしいんです。
ついていけないのが
いたんじゃないですか。
「俺は、このへんで
マンモス獲ってたほうがいい」
ってやつと……。 |
タモリ |
俺、寒いところイヤだから、
アラスカではイケイケ組だと思う。
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糸井
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イケイケというか、
彼らには
「進む」という外見はあったの?
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中沢
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とにかく追ってったらしい。 |
タモリ |
そこまで深追いするのかな。
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中沢
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いや、それで
アメリカ大陸の
マンモスやバイソンが
全滅しちゃうわけです。
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タモリ
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(笑)獲りすぎで?
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中沢
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そう。 |
糸井 |
マンモスは
人間が絶滅させたんだよね。
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タモリ
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うわぁ。 |
中沢 |
そこで、
反省が起こったらしいんだよね。
アメリカインディアンの
自然に対する哲学というのは、
最初はそこから出てくるんです。
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糸井
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(笑)マンモスの反省。 |
タモリ |
(笑)「やりすぎた」という。 |
中沢 |
マンモスの反省が、
自然との共生の思想を生んだ。 |
糸井 |
(笑)よくできすぎてるなぁ。 |
中沢 |
もともと、
インディアンなんてなかったんです。 |
タモリ |
マンモス獲りつくすといっても、
ものすごいマンモスの数がいたわけでしょ? |
中沢 |
そうそう。
食いつづけた。 |
タモリ |
食いつづけたんですか……。 |
中沢 |
マンモスの死体の場所なんか見ると、
けっこう荒い食いかたしてるんです。
おいしいとこだけ食ったり、
穴に追いこんで全滅させて
ちょっとしか食わないとか。 |
タモリ |
(笑)穴に追いこむの、
なんか、絵で見たよね。 |
糸井 |
(笑)沼地に追いこんで
歩けなくするっていうの、
NHKでやってた。おもしろかったなぁ。 |
タモリ |
……もう、食うというより、
半分、レジャーでやってたんですか?
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糸井
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(笑)
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中沢
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(笑)
ご先祖さまに対して、
言いたくはないけど。 |
糸井 |
(笑)おもしろくなっちゃったことは
確かだろうね。 |
中沢 |
確かだろうけどね──。 |
タモリ |
絶対、
おもしろくなったんだろうなぁ。 |
糸井 |
「俺のほうが狩りがうまい」
「こうしてやれば、いいぞ」 |
中沢 |
南米の端まで行って、
岬に立ってみて、
呆然としたと思いますよ。 |
糸井 |
先がない!(笑) |
中沢 |
マンモスもいない!(笑) |
タモリ |
しかも寒いじゃねえか!(笑) |
中沢 |
寒い!
ペンギンもいる…… |
タモリ |
寒さをイヤがった連中は
愕然としたろうねえ……。 |
糸井 |
(笑)タモリさん、
「寒さ」に関しては
ほんとにイヤみたいだね。 |
中沢 |
それが、マンモスの反省なんです。 |
糸井 |
たしかに、
「生き物を無闇に殺しちゃいけない」
なんて、いきなり思うはずないよね。 |
中沢 |
アメリカインディアンは
極端に自然を大切にします。 |
糸井 |
「俺たち、食いつくして
いい気になってた」と……。 |
中沢 |
北米から南米まで、
三〇〇年から四〇〇年。
山あり谷ありのすごい地形を
徒歩で岬に立っちゃったわけ。
タモリさんがさっきいってた
「途中で残っていく連中」は、
最初はカリフォルニアあたりらしいです。
あそこがいちばん古い連中みたいですね。 |
糸井 |
カリフォルニアも
ちょっと東京みたいにあやしい場所だね。
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中沢
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あやしい。
出た土器は縄文土器にかなり近いという……。
不思議な話ですね。原因はわからないらしい。 |
糸井 |
三〇〇年、
四〇〇年って
短いですよねえ。
あっというまだよなぁ。
ドロンズでさえ
一年ぐらいかかってるんだからね。 |
中沢 |
(笑)なんでドロンズの話が。 |
糸井 |
いや、それはつくづく思うよ。
短いなぁ!
(明日に、つづきます) |