04.先生は何をするのか?

糸井 当たり前の理屈で動いてるものは、
自然の自浄作用のように、
けっこう何とかなっていくものなのかも
しれません。
それが専門化したり、
理念として形になると、複雑になってしまう。
その全部の「複雑」を、いまの学校は
かかえているんですね。

これから小学校の先生になる人に、
何か言うとしたら、
吉本さんならどういうアドバイスをしますか?
吉本 そうですね、いちばん言えることは、
自然にしているのがいいですよ、
ということです。
努力していい先生になって、
いい教育をしてやろうと
思わないほうがいいです。


子どもの世話でも、科目を教えるのでも、
やりすぎることはありません。
ごく自然に、自分の地のまんまで、
自分が怠け者なら
うまく怠けた授業をやるんです。
子どもをよくしてやろうとか、
そういうふうには
格別思わないようにしたほうがいいです。

生徒のほうを見ずに
黒板ばかり向いておしゃべりして
「わかったか?」とか言うだけでも
いいんです。

なぜ、それがいちばんいいと言えるかというと、
小学一年生かそこらになると、
子どもというのは、
もう先生のことなんて、
みんなわかってるからです。
親のことだって、わかっています。
「親は、文句言ったときはおっかねぇけど、
 ほんとはそうでもねぇんだ」
とか、そういうことは、
口で言わなくても
子どもはちゃんとわかっています。

ことさらいい先生になろうと思って、
懸命な授業をやって、笑いを取ったり、
楽しく授業を受けさせて、
身につけさせて──そういうふうに
自分はどうやったらなれるだろうかなんて、
馬鹿馬鹿しいことは考えないことです。

もし、二日酔いで、
今日は動きたくもねぇや、
というときには
その科目が得意な生徒に
「俺の代わりにちょっとしゃべってみろ、
 出てきて黒板に計算してみろ」
とか、そういうふうにしたっていいんです。

とにかく、もう本当に自然に、
自分の地のまんまを出してやれば、
子どもは必ずわかります。
「この先生はこうだけど、
 本当はこういう先生だ」
とか、そんなことは
もうはじめからわかっているんです。

子どもは言わない、
言えないだけでね、
黙っててもわかってるんです。

先生になる人には、
まず第一にそれを言いたいです。
糸井 吉本さんが「まず」と言うということは、
人はそうじゃないふうに動くものだ、
ということなんですね。
吉本 そうだと思います。
そういう人をさんざん見てきたし、
自分でもやってきました。
俺もかっこいいことばっかり人に言って、
それで、けっこう
ゼニもらったりしてきました。
自分でやってしまったことは、
やっぱり気にかけています。

(明日につづきます)

2008-05-01-THU




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