今年『ナイン』は大当たりする!
去年は知らなかったくせに、応援します。

               
「ナイン」大阪公演、今日からです!!
               


シェフ

いやー、ついに初日だねぇ。
ぼくたちも、今晩19時の
第1回目の公演の取材に
大阪に来ています!


べ3

ほんと、わくわく、どきどきです。
「ほぼ日」枠チケットのお客さんも
観に来てくれているかなあ?と、
思っていたら、うれしいメールが。

=
「シアターBRAVA」のHPで
こちらのサイトの紹介があり、
「ほぼ日」枠で希望日のチケット取れました。
ありがとうございます。
「ナイン THE MUSICAL」進行表、
とってもありがたいです。
こんなに詳しくお稽古状況や
裏話を教えてもらえることってないので、
しっかり予習もできて、劇場に行く日を
ワクワクしながら待っています!
実は「ナイン」が「シアターBRAVA」の
こけら落とし公演というだけで
「シアターBRAVA」の会員に
なってしまった大阪人です。
悲しい事故のおこった関西ですが、
劇場に足を運べる幸せを感じながら、
「こけら落とし公演は観客にも福がある」
私も信じます!!
(花水木)

シェフ
どうもありがとうございます!
「ナイン」進行表は、このページの
一番下にありますんで、
この公演の初日までのストーリー、
ぜひ、読んでみてくださいませ。
そうそう、「ほぼ日」枠のチケット、
昨日、新幹線で運んできたんですよ。

べ3
この「ほぼ日」枠の特別チケットも
おたのしみに!
早速、観た!という方、ご感想など、
どしどしメールをくださいね!
それでは、今日も、はりきって、
主人公「グイド」の話、その2です。
どうぞーー。

               
第十三回 「グイド・コンティーニ」は
こんな男! ──その2

               



このミュージカルのタイトル『ナイン』は、
現実には40歳のグイド・コンティーニが、
幻のなかで出会う少年時代の自分の年齢、
「9歳」からきています。
少年時代に「グイド」がなにを経験したか、
お話してみようと思います。

● 「サラギーナ」との出会い

9歳の誕生日、
愛する「ママ」から拒絶された体験については、
「男が泣けるミュージカル!」の回で触れましたが、
もうひとつ、9歳のグイド少年は大きな体験をします。

それは、砂浜の近くにあった寄宿学校(男子校です)
「サン・セバスチャン」を抜け出し、
「サラギーナ」という女性に出会ったことです。

「サラギーナ」の名前は学校じゅうの噂でした。
でも、まだ誰も会ったことがありません。
教師(神父)たちはその女性のことを、
「邪悪で、気狂いで、砂浜にすむ悪魔のような女、
けして近づいてはいけないよ」
と教えていました。
また、カトリックには古くから、
女性は「良き妻」と「娼婦」の
2種類がいるという教えがあり、
「サン・セバスチャン」校の少年たちは、
そのとおり習っていたのです。

ところが、教室の窓を抜け出し、
砂浜で出会った「サラギーナ」は、
グイド少年にとっては、けして悪い人でも、
恐ろしい人でもありませんでした。
それどころか、とても素敵な女性です。


サラギーナ(田中利花さん)ー去年の舞台よりー

「サラギーナ」は、
学校で習ったこととはまったく別のことを、
グイド少年に教えます、「愛」のことを―

サラギーナ“あんたに女を狂わす言葉教えるよ
     「ティ ボリオ ベーネ」って言ってごらん
     「いつもおまえがほしい」って”
     “忘れちゃだめだよ
      愛の言葉のリハーサル
     「ティ ボリオ ベーネ」”
     “だけど本当の愛は
      おしゃべりのあとからが本番
      おいで もっとそばに
      教えてあげる”


女性は自分とは違う種類の生き物だと
教わって来た少年にとって、
「サラギーナ」の授業は格別でした。
愛の言葉を教わると、
つぎは女性とのふれあいかた、そして、ダンス。

砂浜で踊りながら「サラギーナ」は続けます。
「あんたはイタリアの男になるんだ」
「イタリア男はね、チャンスを狙ってキスを盗むの」
「イタリア男はね、女をただ抱くんじゃだめ、
 ここを強くつねるの、このお肉を」
「イタリア男はね、歌って、恋をして、
 きょう燃えつきる覚悟で生きるのよ!」

人から悪魔と呼ばれ、
教会の儀式にも参加できない孤独な女性が、
グイド少年の個性を認める最初の女性になりました。

この場面について演出家は言います。
「サラギーナは、
 ひとりで砂浜にやってきた少年の孤独を、
 救ってあげたいと思ったんだ。
 そのとき、グイドは人生で
 いちばん自由なときを過ごしただろう。」

そうして砂浜は、「グイド」にとって、
生涯忘れられない場所になるのです。
(砂浜のこと、どうぞ覚えていてください。)

●9歳の心のやり場を探して

ところがグイド少年は、
「サラギーナ」と会ったことを、
学校の教師から、そして愛する「ママ」から
ひどく咎められます。
言いつけを破り、悪魔と踊った罰として、
部屋に閉じ込められ、食事を抜かれ、
孤独と罪に向き合わなければなりませんでした。
修道女たちに、あるいは教会の鐘の音に、
救いを求めても答えはありません。
9歳の少年はひとりきり、
完全な拒否を経験したのでした。

グイド少年はとうとうそこから逃げ出し、
再び、あの砂浜へ向かいます。
唯一、自分を認め、愛を表現してくれた女性に会いに。
けれどもそこにはもう‥‥

「グイド」は、40歳になった今もまだ、
9歳にとどまっています。
人生の問題に突き当たると、
そこから逃げ出し、
自分に愛を示してくれる女性を求めます。
『ナイン』の物語は、
少年時代に痛めた心のやり場を
探している男の物語でもあります。

演出家、いえ芸術家デヴィッド・ルヴォーが
昨秋の稽古場でした話を紹介します。
これは『ナイン』の演出ための言葉でもあり、
デヴィッドの演劇に対する言葉です。

「一度愛される価値はないと教えられると、
 何人に愛されても自分は価値がないと思えてしまう。
 誰かが自分を愛すことをやめてしまう前に、
 自分から逃げ出さなければ、と。
 なぜなら自分は愛される価値のない人間だから。
 …悪い教師、悪い大人が世界じゅうにいて、
 みんなどこかでそう思い込まされて生きてる。
 愛される価値が危うくなる、その思いが、
 グイドに芸術を創らせ、映画を撮らせてる。
 映画は彼に少しでも価値があることを教えてくれる。
 救いようのない事態からどう逃げるか、
 みんなに見せてあげよう、映画で、演劇で、芸術で。
 そして重要なのは、それが間違ってるとは、
 誰にも言わせないことだ。」

デヴィッドが『ナイン』を演出した理由を、
ぼくはここから感じました。

(つづきます!)


2005-05-06-FRI
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