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芦田健一郎さんインタビュー その3
「色を決めるということについて。」

 
 
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9月14日に発売されたばかりの
任天堂の新しいハード
「ニンテンドー ゲームキューブ」。
あなたは、もう手に入れましたか?
〔編集部でも、もう、遊んでますよ〜!)
ここでは、ハードウエアをデザインした
芦田健一郎さんのお話をお届けしています。
そうそう、前回更新した
「任天堂 裏スペースワールド」の模様も
ぜひ読んでくださいね。
 

 
 ほぼ日編集部が、小さなスペースワールドになった日。 
 ■裏スペースワールドへは、こちらからどうぞ。■ 
   
 
  さて、芦田さんのお話の続きです。
“ニュートラルでフレンドリー”
というキーワードのもと、
どんなアイデアでこの形ができていったのか。
今回は“色”に焦点をあてて
お聞きしてみましたよ!
 
 
 
 
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────: 革新的という言葉が出ましたが
デザインの面では、
たとえばどういうところで
いままでと違うんでしょう?
 

芦田 健一郎
(あしだ・けんいちろう)
任天堂総合開発本部
開発部係長 デザイン担当
芦  田: これまで任天堂のゲーム機は
可能な限り低価格で
全世界に数千万台販売できるような、
生産効率重視のデザインをしてきました。
しかし、この考え方だけのデザインでは
壁にぶちあたってしまったんです。
コンパクトな8cmのディスクを
採用したマシンを
いかにポジティブにアピールできるか?
世界中のあらゆる世代の人たちに
遊んでもらうためのマシンのデザインは何なのか?
こういった課題を解決するために選んだ答えが
「小さな立方体」だったんです。
立方体のデザインは一見簡単に
安く造れるように見えますよね。
実はそれは違うんですね。
本当はロクヨンのようなデザインの方が
生産効率が良くて、
ずっと低コストなデザインなんです。

 
────: このゲームキューブは、
開発コンセプトの中に、
スペックを追求していくっていう
ゲームマシンのあり方に対して
批判的な気持ちがあって、むしろそれは、
ゲームソフトを作る人たちを
辛くさせてるだけなんじゃないかと。
で、それはあるところで抑えて構わないから、
遊ぶ人も楽しく遊べて作る人も楽しく作れて、
で、全員がハッピーになるようなものを目指す。
“早い”とか“すごい”とかっていうことの
ほんとうに上の方の部分は、
“安定”の方にまわすんだ、
みたいな考え方があるというふうに
発表なさっていたと思うんですけれど。
そういうのってデザイン的にも
影響されるんですか?
 
芦  田: その話はあくまで
ゲームキューブのパフォーマンスに関する
設計思想ですね。でも、言い換えると、
ゲーム開発者やユーザーのためには
何が本当は必要なのか?
ということだと思います。
思想的にはリンクしているんですが、
インダストリアルデザインでは
そのための翻訳作業が必要になります。
それが、「ニュートラル」とか
「フレンドリー」っていうことなんです。

 
────: なるほど。
ちょっと細かいことなんですが
あ、リセットや、パワー、
こういうのって全部英語ですよね。
このスロットAとかっていうのも……。
 
 
芦: そうですねえ。
 
 
────: こういうのって協議するんですか?
日本語がいいんじゃないのとか
英語のほうがいいんじゃないのとか、
記号にするとか。
 
芦: 確かにそこは
「フレンドリー」じゃないかもしれませんね。
国内では英語表記だと
読めない人もいますからね。
イタイとこ突かれました。
任天堂のハード商品はそのほとんどが
ワールドワイドに販売しますので、
それらに表示する文字は、
国内だけで販売する商品を除いて、
すべて英語にすることが
原則になってるんですよ。
これまで、特に問題になっていなかったのは、
ゲーム機がPCやビデオデッキのように
接続やボタン操作が
複雑でなかったからでしょうね。

 
────: なるほど。
本体の色なんですけれど、
先々、黒やオレンジも発表なさると
聞いていますが、最初に発売されるのは
この色のみなんですよね。
 
芦: そうです。バイオレットだけです。
 
────: なんでこの色なんですか?
 
芦: 第一の理由としては、
スケルトンではない色で、
ゲーム機として
斬新な色を作ろうとしたんですよ。

 
 
────: ゲームボーイアドバンスにあった
スケルトンというのは?
もう時代遅れなんでしょうか。
 
 
芦: 確かに、最近、家電製品に
スケルトンのデザインは
ほとんどなくなりましたね。
それから、スケルトンは
ロクヨンでさんざんやったので、
もうやめたいという気持ちはありました。
何か別のチャレンジをしようと
考えていたんです。
また、本体のボディを
スケルトンにはできない規制があったのも、
スケルトンにしなかった大きな理由です。

 
 
────: 規制っていうのは
中身が見えるとダメだっていうような?
 

2000年に発表した
最初のゲームキューブ
芦: そうですね。
ゲームキューブは
「クラス1レーザー製品」というものに
該当していて、外部からレーザー光が
見えないようにしないといけないんです。
ですから、レンズは絶対に
覗き込まないようにしてください。
この事に関係するんですが、
2000年のゲームキューブ発表会の本体は、
天面を透明にして
ディスクのレーベルを見せるという
デザインだったんです。
でも、この規制のために
ボツになっちゃいました。
部分的に、しかも機能的に使う
「透明」デザインは、
気に入ってたんですが、残念です。

 
────: そうですよね。
最近は家電製品もスケルトンを全体ではなく、
部分に使うようになってきてますね。
 
芦: 全体に使ってた頃の話をしましょう。
1999年は
ゲームキューブのデザインと同時並行して
ロクヨンのカラーバリエーションの
商品企画をやっていたんです。
ちょうど、
iMacのスケルトンブームのときです。
結局、全世界でロクヨンは
13色もカラーバリエーションを
出したんですよ。
さっき、さんざんロクヨンで
スケルトンをやったと言いましたよね。
実は13色中、
スケルトンは10色! なんです。
でも、これら一連のロクヨンの仕事は
ゲームキューブの色を決める
アイデアやヒントになりましたね。

 
────: スケルトンはやり尽くした、
という感すらありますね。
ロクヨンのカラーバリエーションは
最初から計画されたものだったんですか?
 
芦: ロクヨンの場合、
コントローラのカラーバリエーションは
最初から想定していたのですが、
本体のカラーバリエーションやスケルトン化は
デザインしている段階では
考慮していなかったんです。
やっぱり、各構成部品の色・カタチの
面積的なバランスが悪いと、
ボディカラーを変えたときに
どうしても違和感がでてしまいますね。
この点で僕自身非常に無念さを感じつつ、
ロクヨン・カラーバリエーションの
仕事をしてたんです。そこで、
本体のボディカラーを変えても、
そのデザインがみっともなくならないように、
どんなボディカラーにでも対応できるデザインを
ゲームキューブでは目指すことにしたんです。

 
────: ええ。
 
芦: では一体どんなボディカラーが
ゲームキューブに相応しいのか?
とりあえず、ゲーム機として斬新で、
シンボルカラーになるような色を
考える事にしました。
でも、「ニュートラル」な色で
パッとするやつはなかなかないんですね。
黒だとかグレーだったりでね。
他のゲーム機に
似たような色になっちゃうんですね。
そこで、ファッションの
トレンドカラーも研究したりしました。
結局、
ロクヨン・カラーバリエーションの経験から
欧米でも好評だった青系に
焦点をしぼることにしました。

 
────: 青の中から。
しかし、青のバリエーションにも
いろいろありますよね。
 
芦: そうですね。
僕が考えていたのは、
深い青、青にも見えるし
紫にも見える色なんです。
全世代のユーザーに向けて
アピールできる特別な青だったんです。
でもそういう微妙な色は
色見本帳をいくら探してもないんですね。
そこでいちからその色を作る事にしました。
まず、塗料を混ぜて調色し、
立方体モデルに塗装してみました。
それから、そのモデルを照明にあてて、
明暗の調子による色の変化を確認しながら
何度も何度も調色しました。
立方体は照明の強さや種類で
ガラリと雰囲気が変わるんです。
同じ色が各面で別々の色に
見えたりするんですよ。
さらに、プラスチックで調色し直して、
試行錯誤の結果、
このバイオレットができました。

 
────: なるほど。色を再現するというのは
とてもたいへんなことなんですね。
 
芦: でもね、色はやっぱり好みがありますから、
このバイオレットが
「ニュートラル」というコンセプトに
合っているとは言いきれないんですよ。

 
────: そうですよね。
ユニクロみたいに
単価をものすごく安くできる商品であれば
じゃ、いっそ逆に100色出しちゃうことで
それでニュートラルって意味を
出すことができるんでしょうけど。
こういうものってそうはいかないですもんね。
 
芦: うーん、100色はきついですね。
でも、ロクヨンが13色ですから
ゲームキューブはそれ以上
出るような気がしてるんですよ。
逆にそうしていくことが僕も
「ニュートラル」ってことに
なるんだと思います。
今後はバイオレット以外に、
ブラック、オレンジも
追加することになりましたので、
好みの違う、より幅広い世代で
喜んでもらえる商品に
なっていくと思っています。

 
 
 
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  次回のお話は「クリック感」についてです。
ゲームキューブをすでに手に入れたかたは
おわかりだと思いますが、
このゲーム機、ボタンのクリック感が
とってもいいんです。
そのあたりのヒミツについて、
お聞きしてみますよ。


 
2001-10-03
 
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