岩田 |
Wii Uというハードが年末に出るんですが、
今日は、糸井重里さんを交えて、
この新しいハードがいかにできたか、
ということを話していければと思っています。
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糸井 |
今日はもう、聞き役のつもりで。
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宮本 |
よろしくお願いします。
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糸井 |
宮本さんはハードの責任者でもあるんですか。
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岩田 |
責任者というか、全体を見てますよね。
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宮本 |
そうですね。役員でもありますしね。
やっぱり、新しいハードが出るときというのは、
ソフトも含めた、遊び全体の話になるので。
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岩田 |
ハードづくりというものが、
昔のハードづくりとは
意味合いが大きく変わってきているんですよ。
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糸井 |
ああ、なるほどね。そういう感じはする。
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岩田 |
だから、ひとつのハードをつくってるというよりは、
仕組みづくりだったり、プラットフォームづくりに近い。
宮本さん、昔の、ハードが独自につくられて、
ソフト屋さんがそれに合わせて
いろいろ考えてた時代からすると、
大きく変わったと思いません?
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宮本 |
劇的に変わったのはDSからですよね。
ニンテンドーDS以前のハードというのは、
基本的には、まず、
前のハードを高性能化するプランがあって、
その高性能になったものをソフトで
どう料理しようかっていうのが常だったんですけど、
DSをつくるときは、
「高性能のゲームボーイアドバンスをつくっても、
果たしてそれが求められているのか?」
というところから考えはじめました。
よそも新しい携帯ゲーム機を出してくるなかで、
たんなる高性能機でいいの? と。
そういう話をしているときに、
山内(溥)さんから「2画面に」という提案があって。
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糸井 |
ああ、そのタイミングで山内さんの
「2画面や!」があったんだ。
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岩田 |
「2画面や!」とはおっしゃってないですけど(笑)。
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糸井 |
そこは勝手に脚色させてもらってさ(笑)。
「ええか、これからは2画面や!」。
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宮本 |
まあ、とにかく(笑)、
そういうタイミングでしたから、
簡単な提案ではなかったんですけど、
その線はたしかに追うべきやと。
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糸井 |
つまり、岩田さんのことばを借りれば、
既存のゲーム機の延長線上にある
「ただの高性能化」よりも2画面のほうが。
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宮本 |
そうですね。
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岩田 |
このまま、いままでと同じようなことを
くり返すように新しいハードを出しても、
新しさは感じられないだろうし、
ゲームをやる人は増えないだろう、と。
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宮本 |
それはもう据置型ゲーム機も含めて、
同じようなものをつくってても、個性はない。
個性がないところには価格競争が起こるだけだと。
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糸井 |
はーー、それは、
言ってもらってありがたいことばだね。
それは、「なにをやってるんだ!」ぐらいの
強いことばで言われたわけ?
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岩田 |
ああ、おっしゃってましたね(笑)。
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糸井 |
そのへんのさぁ、
山内さんの「キツい言い方」って、
ちょっと聞いてみたいね。
それは、山内さんのファンとしてさ。
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岩田 |
(笑)
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糸井 |
宮本さんも言われるんですか?
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宮本 |
ぼくにはわりとね、直接はおっしゃらない。
ふつうの提案はよくされるんですけど、
ちょっとよくないことを言うときなんかは、
ぼくには電話はかかってこない。
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糸井 |
へぇーー(笑)。
でもさぁ、「そのままではあかん」っていうのをさ、
懇々と説く役目の人が、
いま、世の中の会社には、
ものすごく欠けているのかもしれないよ。
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宮本 |
そうですねぇ。
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岩田 |
DSが生まれる前に、山内さんの
「いままでと同じことしてたらあかん」というお話は、
もう、ほんとうに何度も、ぼくら聞きましたよ。
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宮本 |
それはもう、耳にタコができるぐらい(笑)。
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糸井 |
ああ、そうですか。
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岩田 |
ただ、おっしゃってることが理解できても
すぐに答えがポンと出るわけじゃないですからね。
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糸井 |
そりゃそうだよね(笑)。
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岩田 |
だから「ちょっと待ってください」って(笑)。
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宮本 |
わかりますけど「答えが難しいんですよ」って、
ぼく、山内さんによく言ってました。
たぶん、ぼくがもうちょっと上の世代の社員やったら、
ガツーンと怒られてますよ。
ぼくらの子どものような世代になると、まあ、
「苦笑いして終わり」くらいでしたけど。
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糸井 |
ぼくも、山内さんの話を定期的に
聞いてた時期があるからわかるんですけど、
すごく核心を突かれるんですよね。
「娯楽屋がよそと同じことして
どうすんねん」、みたいな。
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宮本 |
そういうことはもう、一貫してるんですけども。
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岩田 |
だから、信念がずーっと変わってないですから。
それはどこかでわれわれに乗り移ってるんですよね。
やっぱり。
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糸井 |
ああーー、感じますよ、それは。
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宮本 |
だから、山内さんの信念と自分の原点みたいなものが、
とけてしまってるというか。
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岩田 |
乗り移ってますよね。
ま、語り口は多少ソフトになってるとは思うんですけど。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
それはさぁ、いわば「哲学」じゃないですか。
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宮本 |
そうですね。
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糸井 |
つまり、山内さんはいつも、
根底を問うてるわけだよね。
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岩田 |
はい、はい。
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糸井 |
そういう人が会社にいるっていうのは
そうとう希有なことだと思いますね。
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宮本 |
以前、山内さんがおっしゃったことばに
「一強皆弱」論っていうのがあって、
「娯楽の世界は秀でたものが
独占するんだ」っていう話なんですけど、
山内さんがそれを持論として言ったときに、
傲慢な思想だとも言われたんですよ。
でも、山内さんが言ってる「一強皆弱」っていうのは、
市場を独占するとかそういうことじゃなくて、
「ほかが思いつかない無二なものをつくって、
それが勝ってしまったら、
ほかは追いつけない」っていうことなんですよ。
つまり、娯楽の世界というのは、
「一強皆弱」になってしまう構造なんです。
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糸井 |
あー、なるほど。
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宮本 |
だからこそ、よそと同じでどうする、と。
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糸井 |
いや、逆に言うとそれしかないですよね。
エンターテイメントでなにかやろうとするときに、
「よそとそっくりなんですけど、
うちのほうがちょっといいんです」
とか言ったって、興味持てないもんねぇ。
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岩田 |
どう違うのかをひと言で説明できないだけで
人は興味を失ってしまいますからね。
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宮本 |
その一方で、
よそにないものがあるのはいいんですけど、
よそにあるものがないっていうのは、
それはそれでみんな嫌がりますから。
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糸井 |
ああー、そうか。
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宮本 |
だからといって、よそにあるもの、
過去にやってきたことをぜんぶ盛り込むと
新しいことができなくなってしまう。
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岩田 |
まあ、ぜんぶを盛ったうえに
独自のことを追求しようとなると、
サイズも価格もどんどん上がっていきますし。
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宮本 |
だからこそ、やっぱり、
よそにない新しいことが重要なんですよね。
それがないと、古いものを外せないので。
ハードの技術を直線的に積み上げているだけだと、
こわくて、ぜんぶ、盛っていくしかないんですよ。
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糸井 |
そのあたりも山内さんの言ってることと
根っこのところでつながってきますね。
おもしろいなあ、その、
哲学というか、DNAというか‥‥。
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岩田 |
そうですね。
その意味でいえば、Wii Uって
「テレビゲームが2画面になったらどうなるの?」
っていうものでもあるので。
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糸井 |
あ!
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岩田 |
Wii Uの開発に向けて、山内さんは
なにひとつ具体的なことは
おっしゃってないんですけど、
間接的には、山内さんのDS時代の提案から
つながってるとも言えなくはないですよね。
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糸井 |
ああ、そうだねぇ。
しかも、まさにあれだ、
Wiiにあるものを残しつつ、
よそにない新しいものを加えて。
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岩田 |
はい。
(つづきます) |