オトナ語の謎。 オレ的にはアグリーできかねるんだよね。 |
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第12回 オトナの基本用語:その12 ■■■ 以前より書いているように、 当コーナーに届く数々のメールは オトナ語の現場である オフィスより発信されていることが多い。 (ちなみに、メールが発信される 時間帯についての考察は、 別コンテンツである 6月14日付編集後記に掲載したので 興味のある人はご笑覧ください) つまり、最前線のビジネスマンが 現場から直で送ってきているわけだが、 興味深いのは、そういったビジネスマンに 「ハンドルネーム」という 概念があまりないということである。 ハンドルネームというのは、 ネット上でのペンネームにあたるもので 要するに、「掲載するときはこの名前にしてください」 というあだ名のようなものなのであるが、 どうやらオトナにはそういった習慣があまりないため ハンドルネームをつけることに 照れを感じるようなのである。 それでどうなるかというと、 多くの投稿にはハンドルネームがない。 あっても非常にシンプルである。 ひらがな二文字とか、アルファベット一文字とか、 名字や名前をカタカナにしただけとかで、 「考え抜かれたハンドルネーム」という感じがしない。 だからどうしたというわけではないが、 投稿を見ていて非常に興味深いので、 ここに報告させていただいた。 なお、投稿に際してハンドルネームは必須ではない。 ハンドルネームがない投稿を採用する場合、 本名の掲載もマズいのかなと考慮し、 こちらで勝手に名前を省略する形で 提供者名を記しておりますので、念のため。 また、同ネタに多数投稿があった場合、 その代表者として数名を記しています。 みなさんオトナなので平気かと思いますが、念のため。 というか、本編テキストも たっぷり書かなければならないというのに 私はなにを四の五の書いているのであろうか。 お待ちかねのみなさんすいませんでした。 全国のオフィスでがんばる諸先輩方、 お世話になっております。 たとえあなたと私が初対面でも お世話になっております。 たとえあなたが元気いっぱいでも お疲れさまです。 たとえあなたと会ったのが深夜でも おはようございます。 どなた様か存じませんが お世話様です。 社会に飛び交う謎めいたオトナ語を紹介する当コーナー、 会議で熱心に「オトナ語」を拾ってメモしていたところ 「人の話を真剣に聞く、なかなか感心なやつだ」 と上司に褒められたとの報告もあります。 合い言葉は「なるはや? 午後イチ? ペンディング?」 謎めいたオトナ語を叡智の光で照らせ。 外回りに出かけるあなたの前髪を掻き上げる一陣の風、 それがすなわち「オトナ語の謎」! あいみつを取りつつソースを確保したうえで 死んでるマシンをケアしながら、 手前どものにんげんが参上いたします。 おっしゃることはよくわかるんですが いずれにしても、おしりまでご笑覧くださいませ。
■あらためて書いてみるとすごい言葉だなと思うが、 要するに人手のことであり、 それを遂行するために必要な人員の意味である。 「OKですけど、問題はマンパワーですね」 「そっち、マンパワー足りてる?」などと使う。 「マンパワー的には」という奇妙な言い回しも ふつうに使いこなすのがオトナだ。
■仕事はすべてマニュアル化しておけば、 その人が突然会社に来なくなっても平気なのだ。 実作業はもちろん、電話応対もマニュアル化、 会議室の使い方もマニュアル化。 しまいにはマニュアル化のマニュアルができる始末。
■オトナは「できません」なんて言わないのだ。 丁寧に、へりくだって、「いたしかねる」のだ。 「残念ながら、その条件ではいたしかねます」 にしても、そこまで言う必要があるのかどうか。 主語を変えれば、サムライだぞ、これ。 「拙者、その条件では、いたしかねる」
■ザブ〜〜ン!! と飛び込むわけではない。 清水の舞台から飛び降りるわけでもない。 アポなしで、そのへんの事務所などを 突然訪れ、売り込みをかけること。 なかなかタフな仕事である。おつかれさまです。
■仕事をほかの人や会社にまるごと委託すること。 まるごと投げるから「丸投げ」であり、 これはオトナ語としてもかなりわかりやすい。 ところが「あいみつを取って丸投げする」となると とたんに相撲めいた話になるので注意したい。 もの言いがついたりしてな。
■以前に紹介した「マネージャー」と同じく、 この言葉も、学生諸君の認識と 社会人のそれが大きく異なる言葉である。 司会者の横でニコニコと笑う女性ではないのだ。 補佐的な役割を果たす人を広義に意味し、 昨今では事務職系の社員をこう呼ぶこともある。
■挙がってきた企画から、写真、アイドルに至るまで、 仕事に関わるすべてのモトを素材と呼ぶ。 オトナがその素材をどうするかというと──。
■料理するわけである。 会議室などでいろんな部署のにんげんが集まり、 「塩こしょう」したり、 「スパイス」を利かせたりするわけである。 だいたいのところまで企画を練り上げたら──。
■煮詰めていくわけである。 たんに「詰める」というときもある。 いよいよ企画は現実的になっていくわけであるが、 企画というものは、 しばしば最後の最後に障害が生じたりする。 そうなるとどうなるかというと──。
■煮詰まるわけである。 「煮詰める」と「煮詰まる」は大違いなのである。 ふつうの言葉で考えると、 「煮詰まる」というのは「いい状態になる」ことと 思われるが、オトナのいう「煮詰まる」は 「行き詰まる」という意味で使われる。 一度煮詰まった企画は、なかなかうまく運ばない。 それでオトナはどうするかというと──。
■寝かせておくのである。 いったん「棚上げ」するわけであり、 いわゆる「ペンディング」するわけである。 しかしながら、寝かせておいたものが 勝手に熟成していい企画になることはあまりない。 それで、寝かせておくのをやめて 無理矢理に「見切り発車」して 世に出したりすると──。
■焦げつくわけである。 ここでいう「焦げつく」は赤字が出ることを意味する。 というわけで、やや強引ではありますが、 「オトナ語料理講座」をお送りしました。 番組の最後にレシピを紹介します。ウソです。
■技能、って言われてもなあ。 たしかに学生諸君には把握しにくい言葉ではあるが、 社会に出るといつの間にか スキルという概念が染みつくから不思議である。 むしろ「スキルはスキルとしか言えない」とまで 思えてくるから不思議である。
■これまた学生諸君には説明しづらい言葉である。 ようするにアレだ、ステーキを思い浮かべてみたまえ。 焼きたてのステーキを思い浮かべてみたまえ。 それは、ジュージューしているだろう? その「ジュージュー」がシズルだ!! その「ジュージューしてる感じ」がシズル感だ!! つまり、訴求すべき対象者に、 そのものの持つ「ジュージューしてる感じ」を伝えて、 お客さんを「そそらせる」ことが、 「シズル感を出す」ということなのである。 おお! 我ながら見事な説明だった! 説明したら、腹が減ってきた!
■いったんゼロに戻す。あるいは、条件を同じにする。 などと書くと、クレバーな印象があるが、 実際にこの言葉が飛び出す現場は 大混乱していることが多い。 「いや、もう、とにかく、いったんフラットにしよう」 といった感じで使用される。
■後妻の抱えた借金を取り立てに 金融関係者が押し掛けたところ、 夫の浮気相手が居合わせたため、 姑が激怒してたいへんなことに── というわけではなく、 忙しくてバタバタしているということ。 「篠原はただいま取り込み中でして」 電話をかけて先方からそう言われたとき、 前述したような場面を思い浮かべてはいけない。
■膨大なデータを処理し、 それを最後にたしかめたところ、 ひとつのミスもなく完全な仕事だった。 その表を前にして思わずつぶやく。 「美しい……」 理系の上司などがつぶやきがち。
■えらそうなことを言っていても オトナはさびしがり屋だ。 孤立状態を非常に嫌う性質を持つ。 だから、いろんな人に、仲間になってもらいたい。 「小林さあ、もっとまわりを巻き込まなきゃダメだよ」 まわりを巻き込んで、 さも盛り上がっているという感じを演出しよう。
■見切り発車したプロジェクトは、 たいていにおいて「手探り状態」なのである。 「なにぶん、手探りで進めているものですから」 事故にならないよう、願うばかりである。
■マッチョな海老一染之助さんを 想像してはいけない。 来客の方が帰るときに、 タクシーを手配すること。 むろん、それなりの来客に対して。
■携帯電話普及以前のマナー講座には こういった気遣いはなかったのかもしれない。 個人へかける電話はまずこのひと言から始まる。 「いま、お電話よろしいですか?」も同じ。 しかしながら、この質問は美容院における 「かゆいところはございませんか?」に似て なかなか真意を告げにくい。 また、「ちょっといま移動中で……」くらいのことを 言えたとしても、 「じゃ、すぐ済ませますので」などと言われて けっきょく最後まで話されてしまう。
■実際に何度もかけて相手がつかまらなかったことを 説明している場合もあるが、 1回しかかけていないのに こう言うこともあるから注意すべきである。
■部下が説明していることの意味がよくわからないとき、 上司がそう言うことがある。 といっても、部下はいい気になってはいけない。 「おまえの説明はわかりづらいぞ」の意味を含ませた 上司のやさしさであるということを知っておこう。 ただし、まれにほんとうに頭が悪い場合もある。
■何人もに話しかけられた上司が言いがちな言葉。 しかしながら、そのように言う上司は まんざらでもない表情であるので、 さほど反省する必要はないだろう。
■火消し部隊が到着する以前、 火を噴くプロジェクトは爆弾を抱えており、 たいへんなことになっており、 それを知らずに任されてしまった人は 地雷を踏んだわけであるが、 火消し部隊の到着が遅れると 「火だるま」になってしまう。 というわけで本日はこのあたりで 失礼させていただこうと思ったのですが、 先日の「ナベ」問題、 ひいては「部内に鈴木は3人おりますが」問題に対し、 全国のオフィスからさまざまな投稿が寄せられており、 それについてまとめさせていただきます。 しかしながら私のほうもバタバタしており、 いっぱいいっぱいであることが否めませんので、 その件につきましては、私のアシスタントのほうから 別途、報告させていただくこととします。 お先に失礼いたします。 ■■■ オトナ語に関する業務報告 ■■■ 全国のオフィスでがんばる諸先輩方、 お世話になっております。 お知らせいたしましたとおり、 ここからは私がご案内させていただきます。 先日よりお伝えしております 「ナベ」問題、「鈴木は3人おりますが」問題に関して 多くの反響がございましたので この場をお借りしまして紹介させていただきます。
以上、8件のケースをご紹介いたしました。 なお、メールの内容が内容ですので、 「これウチの職場じゃん!」と おわかりになられる方もいらっしゃるかと思います。 その際、オトナの方々には 述べるまでもないことでございますが、 「投稿したのは誰だ?」などと 無粋な詮索などなさらぬよう、 くれぐれもお願いいたします。 ちなみに、投稿者の方の名誉のために 注釈しておきますが、 いただいたメールはすべて、 勤務時間外にこちらに到着しております。 僭越ではございますがご報告させていただきました。 それでは、私もこのあたりで失礼させていただきます。 アシスタントでした。 |
2003-06-25-WED
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