BUSINESS
恋はハートで。仕事はマジで!

第1回
目的が違う人間が集まるのが会社。
でも、それでいいのか……究極の会社とは?

「High performance organization」という考え方がある。
これはMという外資系のマーケティング会社の
数あるコンセプトのひとつで、
「組織のあるべき方向性」を示したものである。
これによると、
「目的を共有し、集中してそれに向かうことが必要」
とされている。

組織とはそういうものに違いない。
しかし、実際はどうか。1000人を越える大きな組織で、
果たして全員が同じ目的 をもてるか? まず無理だ。
これほどの大人数で同じ目的をもって行動する組織なんて、
サッカーのサポータ ーかRolling Stonesの
ライブの観客くらいなものだろう。
いや、彼らだってお目当ての選手、artistが違うのなら、
目的が同じとは必ずしも言えない。

では究極の会社とはどんなものか?
本当の意味では「究極」ではないかもしれないが、
一般的な会社とは「対極」にある会社を紹介したい。
私の知り合いで、シリコンバレーのある著名なソフト会社の
directorに就いた人間の話である。
彼の会社では日常業務のすべてが「プロジェクト」であり、
そのアウトプットが会社の目的のすべて。
そのプロジェクトは、ほとんどが「夢物語」に近い代物 で、
現時点では完成しそうもないコンセプトの
ゲームソフトの開発だったりするわけである。
こういった組織を維持していこうと思うと、
全員の目的意識が同じ方向を向いていて、
しかもそれが達成できる、とポジティブに
思いこんでいることが必要。

ある日彼は、自分の部下であり
旧い友人でもある人間
(彼をその会社に誘ってくれた張本人でもあった)が、
当該プロジェクトの先行きに
一抹の不安を抱いていることに気づく。

金魚鉢のなかで1匹の金魚が死ぬと、
死んだ金魚の汚液で水が腐り、周りの魚が
すべて死んでしまうことがあるが、
この組織でも常に同様の危惧が抱かれていた……。
「死んだ金魚は排除するしかない」。
彼は数日悩んだ挙げ句、この部下を解雇した。
人生のなかでもっともツライ決断だったと彼は回顧する。

しかし、解雇された部下は
「これで楽になった。
自分の方向性と合わなくなったときから
自分でも辞めることを考えていたが、
なかなか動き出せなかった」と、
ポジティブだったそうだ。

この話はあまりに「極」すぎる例だが、
「究極の会社」を考えるうえで
参考にできるポイントを見いだせる……。

(1)
会社のパフォーマンスを最大化するためには、
社員の目的意識をできるだけ同質化すべき。

(2)
そもそも会社は、個人の満足・幸福を
満たすためのところではないが、
それを満たせる会社を選べば、それは可能。
といったところか。

会社にはさまざまなstake holderがいて、
おのおのが違う思惑で動いている……。
株主、 社長、取締役、課長、平社員、女子社員……。
これらすべての目的を統一することは確かに不可能。
しかし、完璧というものがあり得ないのを承知のうえで、
「あるべき姿」を追求していくことは可能。

次回以降、私が担当するこのページでは、
ビジネスマンにとっての「あるべき会社像」を
新しい切り口で追求していくとともに、あわせて
「悔いのない人生とは?」
「格好のいい生き方とは?」
といった課題にもチャレンジしていく予定。
乞うご期待 。
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>死んだ金魚がいても、
水槽の水がよごれにくいような「水循環システム」が、
熱帯魚屋さんにはあるんですけど、
ああいう発明ってのが、会社のなかにも
できてこないものでしょうかねぇ。
開かれたシステムという考え方とかが、
ぼくには興味あってね。
いちどに全部の金魚が死ぬより、
へんな金魚だけが生き残れる可能性が
あったほうがいいんじゃないかとか、
いろんなこと考えました。
( darling )

1998-06-08-MON

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