第5回・番外編
「新橋駅前で夜もはやいうちから酒のんでない
おとうさんからの投稿」
若いやる気のあるひとの連載に、
若くないやる気のあるおとうさんから反応があった。
年齢は53歳。会社では管理職側に立っている人だ。
「リ、リ、リストラしてぇえええっ!」という
自分の寝言で目が覚めたという経験をもつ、
なかなか我慢のいい人からの、これは投稿である。
◆最近、やたら腹立たしいというか、
気になることがあるのです。
『わたしの部下で使えるヤツは全体の20%です。
使えない80%は即刻整理して、20%でこなしきれない業務は
アウトソーシングしたほうがよっぽど効率的だ!!』
わたしがこんなふうに強く感じる背景を
まずお話ししなくてはいけない。
わたしは現在、企画セクションの管理職で、部下は25人程いる。
部下の平均年齢は35歳くらいだと思う。
会社では4年前に人事制度を改正して、成績考課制度を導入した。
能力給の色合いのかなり強い会社になった。
残業という概念をなくし、フレックスを導入。
この段階で年功序列という考え方は実質なくなった。
◆そもそも、わたしはこの制度の導入には反対だった。
わたし自身、長い間、年功序列と終身雇用を楯に
「そのうち、きっといいことがあるから、がんばれ」と、
会社から言われつづけ、それなりには頑張ってきた。
それが、この歳になって突然
「働いたら働いただけ処遇するよ」
そのかわり
「成果をあげられなかったら知らないよ。
もちろん年齢や経験は関係ないからね」と言われ、
簡単に「はい、わかりました」なんて言えるはずがない。
冗談じゃない。これじゃ、若い間は、
歳をとれば良いことがあると言われて働きに働かされて、
年齢をかさねたら、年寄りは成果を上げられないならいらないよ、
って言われたようなものだ。
それを、会社の若い連中は
「給料は成果に応じてもらうのは常識でしょう。
ろくに 仕事もできない年寄りが、自分の2倍も
給料をもらっているのはバカげてますよ」。
「年功序列なんて時代おくれですよ」なんて大騒ぎする。
確かに、この景況下で会社が生き残るためには、
この制度の導入も、やむをえないと長いものに巻かれてきたんです。
◆わたしのセクションは平均年齢が35歳ですから、
比較的若い連中の集まりです。
能力給を主張した若い連中の20%しか使えないとしたら
この会社はどうなっちゃうんだろう。
ひとむかし前、2:6:2の論理というのがあった。
「会社というところは、20%の優秀な連中が
60%の連中を手足のごとく使いながら、
20%のまったく使えないヤツを食わせていくところだ」
という話です。会社が右上がりに成長していた時代は、
なんとかそれでもよかった。しかし、今はちがう。
さらに、まずいことに、
会社はバブル期に人を増やしつづけてきてしまった。
◆それが突然こんな時代ですからたまりません。
単純な右上がり成長を前提に計画を立てられる会社があるとしたら、
よっぽど恵まれた業界か、飛びぬけた競争力をもった
トップ企業くらいのものでしょう。
世間の企業はいかに出銭を押さえるかに汲々としているはずです。
残念ながらわたくしの会社も例外ではありません。
神風でも吹かなければ大幅の成長が期待できないなら、
人間の問題に手をつけることも、視野にいれざるをえません。
◆わたしのセクションは企画セクションですから、
業務にオリジナリティとか提案性がなければ
受注に結びつかないんです。
これを、わたしは【企画業務】と呼んでいるのですが、
これを日々やってくれているのは20%しかいない、ということす。
あとの80%がなにをやっているかといえば、
マニュアルどおりにデータを切り貼りしたり
整理したりしているだけです。
このレベルの仕事は少し気が利いていれば
バイトの学生でもできるわけです。
これを【作業】と呼びます。
【企画業務】はうちの会社だけのオリジナルですから、
自社内でこなすしかありません。
他方【作業】はだれにでもできる仕事ですから、
なくすわけにはいかないにしても、
給料の高い社内のスタッフがこなさなくても、
安い社外とかに発注すれば効率はよくなるわけです。
このように考えるので、冒頭の乱暴な意見になるのです。
これからの会社には【企画業務】のできる20%だけいればよい。
【作業】しかできない(しない)80%はいらない、と言いたい。
このように思っても、会社という組織のことなので、
実際は簡単には実行できないですけれど。
◆蛇足になりますけれど、この80%のヤツほど
自分はすごく仕事をしていると勘違いしていたりする。
自分の評価は不当に低いなどと勘違いしているのです。
先日も会社に戻ると、新入社員を真ん中に、30歳と35歳の
“80%クン”たちがPCの画面をのぞきこんでいる。
なにをやっているかと思えば、
ふたりして新人クンにコンピュータの講習をしている。
こんなことで忙しかったり、仕事をしていると思っているから、
なにをかいわんやである。
わたしは今、80%に手をつけたくてうずうずしている。
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