BUSINESS
恋はハートで。仕事はマジで!

第20回
「就職」ということ
果たして人生の節目か……迷える学生諸兄に贈る


もう師走である。
私が大学3年のころには、この季節、
まだアルバイトに精を出し、学生気分を満喫していた。
近頃はどうか。
未曾有の不況という背景のもと、
もうこのタイミングで就職先の見当がついていないと
就職浪人となりフリーターと化す、という状況らしい。

学生諸兄は、再び
「受験戦争」に臨まなくてはならない、ということか。
全く馬鹿げた話である。
苦労してようやく良い大学に入って一息ついたら、
今度は「持ち上がり」だと思っていた一流企業への就職も、
狭き門と化している訳だ。

更に目も当てられないのは、「入社後」である。
常々、コンサルティングという仕事を通して
ひしひしと感じているのは、もはや「一流企業」ほど
入社後の生活は不安定だということ。
ご理解いただけるだろうか、この事実。

昨今の成長企業とはどんなものかをよく考えてほしい。
圧倒的なメリトクラシーを備え、十分アトラクトして
新入社員をむかえるにも関わらず、
「できない」人はどんどん会社を去ってもらう、
という仕組みになっているのだ。

常識で考えてもらいたい。
会社を成長させる原動力とならない人材を、
一流の組織が欲すると思うか。
ボランティアで会社が成り立っているなんて
誰も信じないいだろう。

実は、大方の企業のCEOは、
高度成長期が終わった直後から無駄な人材を
排除したくてしたくてたまらない時代を送ってきている。
バブル期に入り、幾分こうした意識が
薄れた時期はあったが、
本質的には不必要なコストは無くしたがっている。
当たり前だ。

そしてバブルの終焉とともに、
「不況」という大義名分を良いことに
堰を切ったようにリストラを始めた。
はじめのうちは、マスコミもこれを大きく取りあげ、
まるで「悪いこと」のように書き立てたが、
近頃は数千人をリストラしたくらいでは
新聞にも載らない勢いだ。もはや安住の地はない。

しかし、だからといって悲観的になる必要はない。
誰にでもチャンスが回ってきたのだということに
お気づきだろうか。
これは大げさに言っているのではない。

東大出身者で上層部が固められてきた末にボロボロになり、
最近になってようやくカルロスに目を覚まされかけている
某大手自動車会社が良い例だ。

経営陣に外国人が入ってくる……これは今後
どの会社にでも「バンバン」起こることである。
海外転勤するエリートだけがグローバルビジネスの場に
身をおいている訳ではなくなる。
すぐ隣のシマに「青目」が座るのも時間の問題だ。
私自身、実際に、現在進行形で
いくつもその「お手伝い」させてもらっているから、
これは信じてほしい。

もしそうなったらどうなるか。
東大を出ていようが京大を出ていようが
「全く」関係なくなる。
東大の文一の入試がいかに大変か、京大を出ていれば
婚約相手の親の顔がいかにほころぶか、など、
カルロスは知らない。

本質的な議論ができず、リスクを取ったことがなく、
行動に移すことを嫌い、高い目標を掲げることを恐れ
勇気がなく、その上、英語が話せないとなると、
次の日から給料をもらうことができなくなるのだ。
こういう方、結構いますが、
とにかく「カッコウワルイ」です。
とどのつまり……、
新卒時の就職など、人生の節目でも何でもなく
単なる通過点にしかすぎなくなってしまった、
ということである。

生活さえできるのなら、無理に就職する必要はない。
未だ未熟な人間(物事の本質がわからず、「勇気」がない
……私は特に後者を重んじるが)であったなら、
無理に就職などせず、フリーターでも何でもいいから、
人生のスタートラインに立てるような準備に
時間を費やした方がよいのだ。

今のご時世、未熟なままスタートしてしまうと、
ファーストラップで致命的なトラブルにより
リタイヤしてしまうだろう。
ピットにも戻れず、無惨な人生を送ることになる。
絶対やめた方がいい。

但し、「未熟」であることを完全に理解しつつ、
タイヤを暖めながらフォーメーションラップを刻むのは
悪くはない。
その間にコースの特性も理解できれば、
敵の出方をみることもでき、
闘いのその時まで準備ができるからだ。

焦ることはない。
十分鍛えてから勝負すべき。
但しさぼることは許されない。

学生諸兄。
今一度、「就職」なるものを考え直してみてはいかがか。
Good luck.

1999-12-27-MON

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