第5回 ほんとうに正しい、カメラの選び方。
at KENYA,AFRICA
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最近では、多くの携帯電話に
カメラ機能が加わったことによって、
考えようによっては、
この世の中はカメラで満ち溢れています。
しかし同時にその分、そのカメラの役割も
日に日に不明瞭になってきているようにも思います。
そこで今回は、写真を始める前に、
そのカメラについて
改めてどのようにそれらを選んだらいいか
ということについて、少しだけお話ししたいと思います。
まずこの現代社会において、
カメラ同様に満ち溢れているもののひとつに
自動車があります。
実はカメラを選ぶ時に、何となくで構わないのですが、
車のことを考えていただくと、
とても解りやすいかと思います。
現在世の中には、様々な種類の車が走っています。
例えば、一般的な4ドアのセダンにしても、
色やかたちも含めていろいろですよね。
中には、やたらと内装が豪華なものもあれば、
ただひたすらに、使いやすいという
機能を追求しているもの、
燃費にこだわったもの、
セダンとはいえ、その走りに特化したものなどなど。
セダン以外にもスポーツカーがあったり、
バスがあったり、トラックがあったりと
それこそ車と一言で言っても、多種多様です。
このように、もともとは「移動する」という目的から
始まった自動車も、
やがて、ある種の特化した目的を達成するために、
様々な形態が生まれ、
そしてそれは現在進行形のかたちで、
次から次へと新しい改良が施されてきました。
その結果として、世の中には
これだけ多くの種類の車が存在しています。
実は「カメラ」という機械も同様なのです。
最近では、カメラといえば
デジカメという時代になりましたが、
それもあくまでも選択肢のひとつと、考えてみて下さい。
車だって、ハイブリットカーだけが車ではないですよね。
一番大切なのは、そのカメラで
何を撮りたいと思っているのか、
あるいは、どのような写真を撮りたいのか、
ということだと思います。
こんなことを書いていると、
デジカメを否定しているように聞こえるかもしれませんが、
決してそういうことではありません。
現在のように、デジカメが普及して、
誰もが簡単に写真を撮れる様になったことは、
本当にいいことだと思っています。
ただ、最初は「写す」という行為から始まったカメラも、
車同様に、その目的の中で、
様々なカメラが作られて現在に至っているということを
頭に入れてから、自分が欲しいと思う
カメラを選んでみることも、
闇雲にデジカメではなくて、
大切なことのひとつなのではないかと思っています。
現在、カメラは大きく分けて、
デジタルカメラとアナログカメラに分けることが出来ます。
デジカメひとつとってみても、コンパクトなものから
一眼レフタイプのものまでいろいろあります。
同様にアナログカメラも、フイルムサイズによって様々で、
一般的な35mmフイルム用のカメラから、
8inch×10inchのシートフイルムを使用する、
通称「バイテン」と呼ばれる大型カメラまで、
それこそ多種多様です。
そしてそれらは、車と同様に
「何をどう撮りたいか」という
特化した目的の中で生まれてきました。
だからカメラを選ぶ時にも、
まず最初に「何をどう撮りたいのか」と、
少しだけ考えてみると
自ずとその大きさも含めて、
実際にどのようなカメラを使ったらいいのかが
はっきりしてくるように思います。
ぼくにもこんな体験があります。
ぼくは数年前にアフリカに行った時、
サバンナが眼前に拡がる丘の上に
先述の「バイテン」のカメラを設置して、
日の出を待っていました。
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やがて山の向こうから日が昇り、
その広大なサバンナを照らしていきました。
ぼくは、その100km先の山まで見える
果てしなく大きい景色を目の前にして、
現在、現実的には最も大きいカメラをもってしても、
この状況では、このカメラでさえ、
あまりに小さいと感じました。
そしてもっと大きいカメラが欲しいと思ったものです。
おそらくそんなことを繰り返す中で、
これだけ多くのカメラが
生まれていったのではないでしょうか。
(ちなみに、今回の記事の冒頭にある写真が
そのとき「バイテン」で撮った写真です。)
そして写真を撮るに際して、
第3回の「びくびくしながらも、真正面。」
でも書きましたように、ある人の写真を見て、
このような写真を撮りたいと思った時には、
その人と同じカメラを使ってみるというのも、
選択肢のひとつだと思います。
それから、これだけカメラというものが普及した現在、
どの家にも、使っていないカメラが
あったりするのではないでしょうか。
その眠っているカメラを引っ張り出して、
使ってみるのもなかなかいいものです。
例えば、おじいさんが使っていたカメラを
使ってみるのも楽しいし、
しかも何となくそれだけで、
いい写真が撮れるような予感がします。
実際に、昔のカメラは現在のものと比較にならない程に、
丁寧な作りをしているものが多くあります。
確かに、長い間お蔵入りしていたカメラの場合は、
それなりのメインテナンスも必要になります。
それも今だったら、まだ優秀な職人さんたちも、
辛うじていたりするので、ほとんどのカメラは
修理可能だったりするのではないでしょうか。
しかも修理代にしても、
それこそ車に比べれば大したことはありません。
フイルムの方も、
特にモノクロなどは世の中からなくなりつつありますが、
それでもまだまだ大丈夫です。
昨年も、このご時世に富士写真フイルムから
「NATURA
1600」という、
素晴らしい新製品のフイルムが発売されたりしました。
しかもそこそこ話題になって、
それなりに売れていたりするそうです。
ぼくは現在のように、
デジカメとかカメラ付き携帯電話の普及によって
「写真を撮る」ということが、
今まで以上に身近なものになった今だからこそ、
改めて、この「カメラ」という
素敵な装置を見直してみたいと思っています。
するとそこには、まだまだ皆さんが知らない
いろんな魅力が潜んでいます。
たとえ時に、そのカメラのせいで
容易く撮ることが難しかったとしても、
実はだからこそ、撮れる写真もあったりします。
そして何よりも、カメラというのは
手にするものだったりしまうから、
その手触り感も、カメラを選ぶ上で、
重要なポイントのひとつです。
もちろん優越感としての持つ喜びだけではなくて、
そこに具体的な「持つ喜び」を
感じることが出来るカメラは、
きっとそれを所有する人にとっても、
何にも代え難い喜びのひとつになるのではないでしょうか。
そういったカメラは、現在のデジカメに比べると
面倒な部分が多いのも確かですが、
きっとそれも、この連載が続いていく中で、
気が付けばどうってことのないことになるはずです。
幸いカメラは、それ程大きいわけではありませんから、
普段は便利なデジタルカメラ。
ここぞという時には、とっておきのお気に入りのカメラ。
というように、2台のカメラを使い分けるのも
ありだと思います。
実際ぼくも、最近では普段は「GR
Digital」
ここぞという時には「LEICA」という感じです。
とにかく、まず最初に
「何をどう撮ろうかな」と考えてみて下さい。
そしてそれが、何となく具体的に浮かんでこない時は
自分が「好きだ」と思えるカメラを選んでみて下さい。
そんなことはどうでもいい、
とにかく写真が撮ってみたい、という人は
一番簡単で、きれいに撮れるであろう
カメラを選んでみて下さい。
もちろんデジカメだって構いません。
そして、何よりも一番大切なのは、
やはりそのカメラで撮った写真を見て、
楽しいと思えることだったりするのですから。
カメラ選びは「何を撮りたいか」を
考えるところからはじめよう。
あたらしいカメラじゃなくてもいい、
家にある古いカメラでもいいかもしれない。
「持つよろこび」のあるカメラをさがしてみよう。
次回は「何が何でも、失敗は成功のもと。」
というお話です。 |