詩 人 と T シ ャ ツ 。
ボ ー ズ 、谷 川 さ ん ち に 行 く 。

第4回「ある日それを着てたらまったくおんなじのを」



ボーズ あと、Tシャツって、すごく種類があるから、
人とダブらないっていうおもしろさが
あるかもしれないですね。
谷川 あ、でも、まえに一度、
へんなダブりかたしたんですよ、ぼく。
猪熊弦一郎美術館っていうのが
四国の丸亀にあってさ。
そこのミュージアムショップで、
Tシャツを買ったんですよ。
それは人の顔がいっぱい描いてあってさ、
すごくかわいいのね。
で、ある日それを着てたら、
まったくおんなじのを、
地下鉄の前の席の女の人が着てて(笑)。
ボーズ それはちょっと困りますね。
谷川 ねえ。だからね、あの、
「猪熊弦一郎さん、お好きですか?」ぐらい、
こう、言やぁいいんだけど、
言いにくいんだよね(笑)。
ボーズ そうですよね。
谷川 むしろ席を立って、
戸口のほうへ歩いていっちゃう、
みたいなさ。
ボーズ でも、それはかなり稀な状況ですよね。
谷川 すごい稀だと思うんだよ。
みんながそんなに着てない
Tシャツのはずなんですよね。
ボーズ ねぇ。お互いに、
選びに選んで着てるっていう状況ですからね。
流行ってるブランドとかならまだしも。
向こうも絶対、「ん?」って思っただろうし。
っていうか、やっぱり、
それは話しかけたほうが
よかったんじゃないですか(笑)?
谷川 そう、ほんとはね。
「丸亀行ったの?」とかね。
ボーズ 「ぼくも行ったんですよ」って。
谷川 でも、そんなことで、
怪しまれるのも嫌だしねえ(笑)。
ボーズ あははははは。
Tシャツならではの
おもしろい体験ですよね。
谷川 と思うなぁ。
ボーズ ぼくなんかは、
友だちがつくったTシャツを着てると、
そのブランドが流行ってたりするから、
こう、街ですれ違う中学生なんかも
同じのを買って着てたりして、
それはちょっと恥ずかしかったりしますけど。
谷川 ああ、なるほどね。
ボーズ 最近、オトナと子どもが、
同じような格好してたりしますからね。
ぼくなんか、子どもと同じ格好してる
いちばん上の世代だったりして、
やばいんだよなー(笑)。
撮影:MIKA POSA

2004-03-25-THU

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