第四回 神輿の乗り方がうまい人
丸山さんは
「創業者としてならできる。
 会社が小さいうちは、やっていける」
とおっしゃいましたけど、
実際には、丸山さんがいた会社は
大きくなってますよね。
ソニーなんて、それこそ、
食うか食われるかをやり続けてきた
肉食獣みたいな会社で、
丸山さんも嫌だ嫌だと言いながらも
「戦乱の中」にいましたよね。
その時はどうだったんですか。
ストレスとかはあるんですか。
それとも、それはそれで
違うゲームを考えるんですか?
うーん‥‥難しいんですけどね。
会社がデカくなると、
まあ、つまらなくはなりますよね。
まず、まわりは全部、
「背広の人たち」になりますよね。
それで財務とかの話をするわけですよね。
してくる。
「あれをこう転がして」とか、
「これをああ使って」とか、
「行け!」とか、「切れ!」とか、
そういう言葉が、きっと何度も
丸山さんの口から出たわけですね(笑)。
そう、その通り(笑)。
だけど、そういうことって、
ぼくが不器用だから
代わりにやってくれるやつが必ずいるんですよ。
そうか。丸山さんには、
そのつど、誰かがいるんだ。
うん。それは必ずいる。
あまりにもオレに欠落している部分があるから、
「この人をこのままにしておいちゃマズイよな」
と、おれのそばにいてくれる人とか、
おれを取り巻くチームががんばって、
つじつまを合わせてくれるんですよ。
そうじゃなきゃ、ここまで来れないよね。
はっはぁー。
実業界の白洲正子みたいなものですね。
白洲正子って、白洲次郎の奥さんでしょ。
エッセイ書いたり、
骨董を観たりという人でしょ。
そう。あんな人生を送れるというのは、
まわりがよっぽど
しっかりしているんだろうと思うんですよ。
お金が天から降ってきているわけではないし、
他人だって騙しに来るでしょうし。
いるんですよ。そういう、
「お姫様であるがゆえに、セーフ」
というタイプの人って。
だから、おそらく、まわりの人は、
丸山さんを盛り立てることで
何かが活気づくんですよ。
盛り上げるのはうまいのよ、たぶん。
だから、自分でいうのもなんだけど、
オレは神輿の乗り方が
うまい人ではあるよね。
「神輿の乗り方がうまい人」ね(笑)。
うん、うん、なるほど。
で、一方で、より具体的な部分にいくと、
これはいま丸山さんが
まさに直面していることかもしれないけど、
丸山さんからいくら話を聞かされても、
「これは絶対にうまく行く!」と
ほんとうに思えている人って、
きっとなかなかいないと思うんですよ。
(ひじょうに険しい表情で)
ムーーーーーッ!
アハハハハハハハ!
なんでムッとするかっていうと、
図星だからなんだよね。
つまり、「これで大儲けしてやろう」という人が
簡単にわらわらと寄ってくるような
サイズの仕事じゃないと思うんですよ。
でも、「おもしろいから、俺にも覗かせて」
という人はものすごく多いですよね。
そう。多いと思う。
「mF247」をはじめるときもね、
まず、金を集めなきゃならないから、
いろんな会社に行っては
経営戦略について説明するんだけど、
みんな、うなずくというよりは
吹きだしちゃうんですよ。
(笑)
で、たいてい、
話を聞いたトップが自分の部下に、
「俺はおもしろいと思うから
 丸山さんの話を聞いてみて」
みたいな感じで話を下ろしていく。
で、その部下と話すじゃない?
するとその部下は話を聞いて、唖然とする。
アッハハハハ!
それを部下がトップにまた報告すると、
まあ、そこできっと話は
いったんストップするんですよ。
でも、こっちは返事がほしいから
「どうなっています?」
というのをずーっとくり返すんですね。
すると、くり返してるうちに、
「まあ、いいや、乗るわ!」
と言ってくれる人が出てきて。
うんうんうん(笑)。
でも、上がそう言うもんで、
下の連中はムッとした顔をしている。
「うちの親分は、
 なんというものに金を出そうとするんだ」
という顔をしてますよね。
ところが、ぼくは
「なに言ってるの!
 これはうまく行くんだから」と思ってる。
そのすれ違いは大変なものですよね(笑)。
だから、ルーレットでいうと、
「この数字が出るんだよ」
というのが丸山さんにはわかるんですよね。
わかる。
だけど、
「なんで出るんだよ?」という説明は‥‥。
できない。
できないよね。
「つぎは『24』が来るよ!」って(笑)。
「だって、お前、
 『24』が来るに決まってるだろ!」
「決まってるじゃない!」って(笑)。
でも、企業というのは、
「『赤』が来て、『黒』が来て、
 『黒』が来て、『赤』が来て、
 『赤』が3回続いているということは‥‥」
みたいなことが好きですよね。
そうですね。
「絶対につぎが『赤』だというんなら、
 俺は100億でも出す。
 1.2倍でもいいんだから」と。
でも、
「『24』には10万円も出したくない」
うん、そう! そういう話!
そうなんですよねえ(笑)。
2006-07-21-FRI
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