社長に学べ!

女性は街へ出ていった

安森

糸井さんの乗ったっていう飛行船って、
「低い」し、「遅い」でしょう。

われわれ人間が
ついていける目線と速度ですよね。
糸井 そうですね。
安森 新幹線なんて時速300キロでしょ。
糸井 早すぎますね。
安森 飛行機なんていうのは、
上空1万メートルを、時速800キロ。
糸井 高すぎます。
安森 そういう意味で言うと、
人間が皮膚感覚的に持っている「スピード感」が、
大事になってきてると思うんだよね。
糸井 それは、安森さんが
ビジネスの場面で感じていることですか?
安森 ロフトという会社に関して言えば、
首都圏・近畿圏を除くと
県庁所在地以外には、
出店の余地がないんですよね、今。
糸井 そうなんですか。
安森 たとえば「人口5万の都市」って、
けっこうな大きさなんですけど、
周囲に10万、15万、20万の都市があると、
完全に「衛星化」してしまう。
糸井 ええ、ええ。
安森

むかしは、その「人口5万の都市」にも
固有の文化や、暮らし向きがあったんですよ。

でも今は‥‥それがない。

これって、絶対にね、
日本人にとっては不幸なことだと思うんです。
糸井 うん。
安森 もちろんね、「昔はよかったなあ」なんて
簡単に言うつもりはないんだけれど、
でも、すべての人が
「まったく同じように暮らす」なんてことは、
ぜったいに、不自然なんです。
糸井 それとはまったく反対に、
「娘さんをお客さんとして見てた」安森さんは、
娘さんが必要としてるもの、必要としてないもの、
よく考えてるもの、気にしてないもの‥‥
そういうアナログな情報に、
毎日毎日、接してきてたんですよね。
安森

うん、それが、役に立った。

調査なんかで出てくる
「いま売れてる商品ランキング」以外にも、
娘がどんな行動をとってるか、
どんなものに興味を抱いてるかってことが
ロフトをやっていくうえで、ほんとに役立ちました。
糸井 そうでしょう。
安森

それから、もうひとつはね‥‥。

そういう視点で眺めてないと、
娘との会話が、成立しないんだよな。
糸井 ああ(笑)。
安森 だって、そうでもしなけりゃさぁ、
親父なんていうのは、
ただ単に小遣いねだられるだけの‥‥。
糸井 たまーに「取締役相談役」じゃない顔が
混じってくるのがおもしろい(笑)。
安森 だってさ、
「いま、こういう商品が
 ロフトで売れてるんだけど」っていうと、
「それ、ダサいのよね」なんて。
糸井 バッサリと。
安森

そう、辛口の批評家になってくれるんだ。

「こっちのほうが
 ぜったいかわいいのに〜!」とか。
糸井 最近、いろんなところで言ってるんですけど、
「女性」のおもしろさって
どんなに仕事が忙しかったとしても
「ちゃんと買いものしてる」ってことだと思うんです。
安森 ああ、それは、そう思うね。
糸井 そういう時間を、確保してますよね。
安森 うん、ほんと感心するよねぇ。
糸井

でも、もともとは、
男だって、そうだったと思うんですよ。

でも、少しでも効率よく脇目もふらずに
仕事をしなきゃならなくなって、
買いものしてるヒマがなくなっちゃった。
安森 興味もなくなっちゃうんだよ。
糸井 その一方で、女性たちは、
どんどん、街へ出て行ってたんです。
安森 うん、うん。
糸井 そういう意味での「女性性」こそ、
次の時代の「おもしろいもの」をつくりだす
ヒントになるんじゃないかなって。
安森 うーん、だからやっぱり
ハマちゃんなんだよな‥‥会社に必要なのは。
糸井 え。
安森 ほら、あの『釣りバカ日誌』の、ハマちゃん。
<続きます!>
2008-08-13-WED
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