──NHKの方にうかがいました #5 安否確認のルールについては、会社でも家庭でも
糸井 この前の地震では、
みんなが電話やらメールを
一斉に使って通じなくなりました。
そんななかでいちばん動いていたのが
ツイッターだったっていうのは、
ちょっとしたおどろきでしたね。
山下さん 取材で聞いた話ですが、
ある会社の社長は、実際にツイッター上で
社員に安否の報告を求めたそうです。
糸井 できますよね、それは。
PRさん できますね。
糸井 ということはもう、
この先に大きな地震が起きた場合、
電話はあまりあてにしない
という申し合わせを
お互いにしておく必要がありそうですね。
山下さん 「ああいうとき電話はつながらないよね」
という話はしておくべきだと思います。
糸井 いちばんつながるのは
やっぱりネットなんですか?
山下さん つながるという意味では、そうですね。
インターネットの場合は
PCや端末が必要だったり
年配の方で使えない人もいたりと
いくつかの条件・問題はありますが。
糸井 ツイッター、ふつうにつながったもんなぁ。
なんであんなにつながったんだろう‥‥?
PRさん インターネットは、
パケット通信の分散型ネットワークというか‥‥
要するにいろんな経路を迂回して、
なんとしてでも現地へ届こうとするのが、
インターネットの特徴なんです。
設計が、とにかく届くようになっているんですよ。
もともとが
アメリカの軍事用のネットワークなので。
糸井 ‥‥その話を、ぼくは久々に思い出しましたよ。
そうだわ、
そもそもが、そういうことだった。
PRさん 核戦争なども想定して、
確実にネットワークが機能するために
考えられた仕組みですから、
つながりやすいのは当然なんですよね。
糸井 ‥‥この言い方は失礼にあたるかもしれませんが、
PRさんはほんとうに、
ルックスがいいだけではないですね。
PRさん (笑)
糸井 時計のアイコンしかお見せできないのが
ぼくはもう、こころから残念(笑)。
やっぱり写真、お撮りしましょうか。
PRさん いや、大丈夫です(笑)。
実はいまの話、
ツイッターのフォロワーの人から
教えてもらったんです。
糸井 そうなんですか。
いや、でも、
はじめて明快に説明されましたよ。
「なんでこんなにネットは通じるんだ?」
って、みんな思ってましたよね。
PRさん 「もとが軍事用だから」という理由でした。
糸井 なるほどなぁ。
ツイッターなんかは
文字データで、あの分量が届けばいいわけだから、
ぜんぜん大丈夫ですよね。
PRさん そのあたりの話は
私どもNHKの、
IT ホワイトボックス』という番組のなかで

ときどき説明しておりますので、
ぜひ一度ご覧ください(笑)。
糸井 それはもう、
リンクを貼らせていただきます。
PRさん よろしくお願いします。
糸井 ええと、じゃあ電話は‥‥
みんなが最初に頼る電話っていうのは
今後も災害時には
あんなにつながらないものなんでしょうか。
山下さん そうですね、
携帯電話の会社に聞いたことがあるんですけど、
通話というのは、
たくさんの人が一度にかけるから
止まるのではなくて、
そもそも携帯の会社が絞っているのだそうです。
糸井 あ、蛇口を締めちゃってるんだ。
山下さん はい。
通話が集中してパンクすることを防ぐために。
ですから、混み合ってかからないんじゃなくて、
もう、かからないようになっている。
糸井 なるほど。
みんな意地になって、かけ続けますよね。
PRさん あれは、かけても無駄?
山下さん 無駄です。
糸井 そうかぁ。
山下さん だから、一所懸命リダイヤルをするよりも、
携帯メールを1本送ったほうが
つながる確率は高いんです。
通話とパケット通信は別に管理されているので、
メールの方がつながりやすい。
糸井 じゃあ、電話が通じなくなったときに
「あわてずにこうする」っていう約束は
ぜひ、しておいたほうが‥‥
山下さん いいですね。
糸井 会社で、
「半年に1回はそのことについて
 話し合う機会を持つ」とか。
山下さん ええ、必要ですね。
組織とか会社の場合、
災害発生時の安否確認というのはかなり重要、
といいますか、
いちばん最初にやるべきことだと思います。
それをしないと心理的に不安になって、
ほかの作業ができなくなってしまう。
糸井 そうですよね。
PRさん 安否確認に関しては、
会社のルールだけでなく、
家族のルールや友だち間のルール、
もしかしたら地域コミュニティのルール。
いくつかのフェーズがあると思うので
それぞれでルールづくりをして、
定期的に「こうだよね」という
確認をするのがいいのかなと思います。
山下さん そうですね、
社員同士の安否はわかっても、
家族の安否が確認されなかったりすると、
もう、仕事どころでないですから。
糸井 じゃあ、あれだ、
安否確認のチェックリストをつくりましょう。
PRさん チェックリスト。
糸井 災害に備えておく「モノ」の
チェックリストはよくあるけど、
「安否確認チェックリスト」っていうのは
たぶんないですよ。
会社、家族、友だち、恋人、学校、
それぞれのルールをメモしておくリスト。
PRさん なるほど。
それぞれで定期的に話し合いをして
決めたルールをメモしていく。
糸井 「災害ダイヤルを活用しよう」とかね。
山下さん ああ、それはすごくいいと思います。
糸井 立ち入った質問で恐縮ですが、
山下さんは、
奥様と安否確認のルールについて
話し合ったことは‥‥?
山下さん ‥‥してなかったです(笑)。
糸井 そうですか(笑)。
山下さん これからは、ちゃんとしておかないと。
糸井 そうですね、
愛しているがゆえに、心配ですから。
山下さん はい(笑)。
糸井 PRさんは、どうでしょう?
PRさん 私と、私の母のあいだでは、
「安否確認をしない」
というルールをつくっています。
山下さん お。
しないんですか。
PRさん 大きな災害があったとしても、
生きていれば、いずれ連絡はとれますから。
糸井 はい、はい。
PRさん だから、そういうときは
ほかの人の邪魔をしないで、
連絡はしないでおこう、と。
糸井 そのジャッジ、賛成。
うちもそうしますよ。
PRさん 安否は1週間くらいでわかるから、
やきもきするよりも
その時に自分ができることをがんばろう、
ということを母親に言われてるんです。
「何かあってもぜったいに
 安否の電話をしてきちゃダメよ」って。
糸井 かっこいいお母さんですね。
それはやはり、
お母さまも神戸の震災を経験してるから‥‥。
PRさん それは大きいです。
糸井 じゃあ、神戸の震災を経験してる人のほうが
もしかしたらそのへんは‥‥
PRさん 割り切ってるかもしれないです。
すごく「運だ」と思ってるところがあるので。
生きていれば会える、
そうでなかったら後で悲しめばいい、
そういうふうに考えています。
糸井 その強さは、やっぱりすごいですよね。

(株)東京糸井重里事務所の災害対策【ポイント5】

□大きな災害時に電話はほとんどつながらない、
 ということを理解しておく。

□最もつながるのはインターネット。
 携帯メールも、
 電話にくらべればつながりやすい。

□企業にとって、
 災害発生時の安否確認は最優先事項。
 その方法を全員で話し合う機会を、
 定期的に持つべき。

□安否確認のルールは、
 家庭、友人、地域、学校など、
 様々なフェーズごとにつくっておくべき。
 それぞれのルールを忘れないよう、
 チェックリストでメモしておくとよい。

(つづきます)

2011-06-16-THU