オトナな会話(仮)
さくらももこ×糸井重里の対談です。

その15
それを、たぶん、自由と言う。

糸井 タモリさんともその話になったんですよ。
旨いもの食いたいっていうのは、
ものすごくある。
で、それが旨いんだったら、
死んでもいいとまでは言わないが、
その直前くらいの思いになってもいいくらい、
ああ、旨いものが食いたい。
でも、ちょっと旨いくらいのものは、
もういらない。
いっそ、ぜんぜん旨くないものでいい。
その往復で、極北に、
ぜんぜん食わないっていう世界があって。
『人は食べなくても生きられる』
っていう本がある。
さくら 知ってる!(笑)
読みたいなと思ってたの。
糸井 タモリさんと隣り合わせに座ったときに、
「糸井さんさ、知ってる?」って、
訊かれたんだよ。
「知ってますよぉ」
「どうなんだろうね?」
で、じつは俺ね、
電話したんだよ、その人に。
さくら あ、そうなんだ。興味がある(笑)。
糸井 忙しいんで、少ししたら
会おうっていうことになってるの。
さくら ほんとぉ!
糸井 で、タモリさんに、
「来る?」って訊いたら、
「行く、行く」。
さくら あ、いいな!(笑)
糸井 2人ともおかしいのは、
半分しか読んでない状態(笑)。
読み切ってないところで、
コンセプトに感動してるんですよ。
さくら そうなんだ。
糸井 だいたいの本ってそうなんだけど、
半分から後ろって、
書かなくてもいいことなんですよね。
さくら うーん‥‥。
糸井 ビジネス書までそうなんですよ。
やっぱり、こういう本書きたいんだけど
どうだろう? っていうのが
いちばん面白いんです。
その話をタモリさんとしているときにね、
八嶋智人さんがそこにいて、
「すっごいグルメの話してるかと思ったら
 くだらない話をしてて、
 あのおやじたちはなんなんでしょう」って。
結局、行ったり来たりの、
距離が遠くて速い。
これが憧れなんだよ(笑)。
そうなるとですね、その、
食わないみたいなことの魅力を、
あの本はものすごく
語らなきゃいけないんだけど、
それにしてはまだ語れてないし、
読むとわかるんですけど、
食ってんですよ。
さくら ダメじゃん(笑)。
糸井 私はそれは、必要だからじゃなくて、
味として楽しむということで、なんて。
もうちょっと追及すると、
もっと食ってると思うんですよ(笑)。
自分で書いてもあのくらいなんだから。
さくら あっはっはっはっはっはっは。
糸井 その感じ、わかるじゃないですか、
ウソつきとしては。
つまりさ、自分で
“このくらい”として書いたことって、
その奥にもっとありますよね。
私はお金だってちょっとは欲しい、
っていったときには、
ほんとはいっぱい欲しい。
さくら うん、欲しいだろうね(笑)。
糸井 くれるもんならいくらでもなんだけど、
それにとらわれたくないってだけで、
ちょっと欲しいっていうのは、
自分で書くときの、礼儀みたいなもんで。
「ちょっとは欲しい」。
ほんとはいくらあっても欲しい。
人にあげてもいいくらい欲しい。
さくら どうせならね(笑)。
糸井 で、一方で、
一銭もなくて暮らせるんだったら、
もうめっちゃくちゃに憧れで、
できることならば、
そんなにつらくなければ、
やらないけどホームレスに
なってみたい(笑)。
さくら あ、そうそうそうそう!(笑)
そうなんですよ。
サバイバルスクールに行くことなんですよ、
それが。
糸井 その距離の遠さと速さ。
で、それを、たぶん、
自由っていって言うんだと思うんですよね。
そこを、わかってもらいたい(笑)。
さくら ほんとね。その速さっていうことは、
選択権があるっていうことなんですよ。
糸井 だから、無限の選択権があって、
間のちょぼちょぼのところは
どっちでもいいんですよ。
真ん中の上みたいなところで、
争いたくないですよ、あんまり。
できることなら。
似たようなことはね、
吉本隆明さんが言ってるんです。
知識とか知識人っていうのは、
しょうがなくなるもんだから、
もうとんでもないとこまで
なんなきゃダメだと。
で、それはもう0点だと。
一方で100点っていうのは、
そんなことなんっにも考えない。
100点と0点の間の
50点くらいのところは、どうでもいい。
さくら そうなんですよ。ね(笑)。
糸井 それはね、俺らなりに言えますよ(笑)。
さくら ね(笑)。言えるよね、ほんと、ほんと。
糸井 俺らなりに。
さくら うん、なりに(笑)。
糸井 それをさ、50点か60点かみたいなことで
ああだこうだ言うじゃないですか。
それはね、やっぱり虚しいですよね。
遊びとして、54点採ったら
次に56点採りました、
ああ面白かったっていうのはあるから。
さくら わかっててやってるぶんにはいいけどね。
糸井 だから56点、54点を
笑うみたいなことは、するなと。
さくら ほんとね。
0点か100点じゃないと(笑)。
生きてる醍醐味としてはね。
糸井 やっぱりね、
これからやんなきゃいけないのは
天国のイメージをどれだけ
豊かにするかだと思うんですよ。
歴史の中では、地獄絵図っていうのは
描いた人いっぱいいるんですよ。
で、豊かですよ、ある意味。
さくら ある意味ね(笑)。
糸井 もう、こんなひどい目に遭うぞって
いうことについては、
ダンテの『神曲』の地獄篇からさ、
説教するときの巻物から、
もういっぱいありますよ。
さくら うん、恐ろしい。
糸井 ホラー映画だって、
あれ、地獄の話ですからね。
で、一方の天国が、え?
‥‥マハラジャか?!
さくら ぬはははは。ちがうよ。
糸井 ちがうよね。で、あるいは、
天国っていうと、白い雲の上に、
白い服を着たおじいさんが、
頭に丸い輪っか載せて、
「ほっほっほ」っていって。
脚が丈夫じゃないらしくて
杖なんか持ってて。
さくら 年寄りでね(笑)。
糸井 それはね、羨ましくない。
だから、それをちょっとでも
ほんとに見てみたいと思った人がやることが、
みんなの憧れなんですよ。
アマンジオって知ってます?
さくら 行ったことないんですよ。

アマンジオ?!
ジャワ島のですよね。
そのお話は、来週につづきまーす。
2005-05-27-FRI
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