糸井 |
タモリさんともその話になったんですよ。
旨いもの食いたいっていうのは、
ものすごくある。
で、それが旨いんだったら、
死んでもいいとまでは言わないが、
その直前くらいの思いになってもいいくらい、
ああ、旨いものが食いたい。
でも、ちょっと旨いくらいのものは、
もういらない。
いっそ、ぜんぜん旨くないものでいい。
その往復で、極北に、
ぜんぜん食わないっていう世界があって。
『人は食べなくても生きられる』
っていう本がある。 |
さくら |
知ってる!(笑)
読みたいなと思ってたの。 |
糸井 |
タモリさんと隣り合わせに座ったときに、
「糸井さんさ、知ってる?」って、
訊かれたんだよ。
「知ってますよぉ」
「どうなんだろうね?」
で、じつは俺ね、
電話したんだよ、その人に。 |
さくら |
あ、そうなんだ。興味がある(笑)。 |
糸井 |
忙しいんで、少ししたら
会おうっていうことになってるの。 |
さくら |
ほんとぉ! |
糸井 |
で、タモリさんに、
「来る?」って訊いたら、
「行く、行く」。 |
さくら |
あ、いいな!(笑) |
糸井 |
2人ともおかしいのは、
半分しか読んでない状態(笑)。
読み切ってないところで、
コンセプトに感動してるんですよ。 |
さくら |
そうなんだ。 |
糸井 |
だいたいの本ってそうなんだけど、
半分から後ろって、
書かなくてもいいことなんですよね。 |
さくら |
うーん‥‥。 |
糸井 |
ビジネス書までそうなんですよ。
やっぱり、こういう本書きたいんだけど
どうだろう? っていうのが
いちばん面白いんです。
その話をタモリさんとしているときにね、
八嶋智人さんがそこにいて、
「すっごいグルメの話してるかと思ったら
くだらない話をしてて、
あのおやじたちはなんなんでしょう」って。
結局、行ったり来たりの、
距離が遠くて速い。
これが憧れなんだよ(笑)。
そうなるとですね、その、
食わないみたいなことの魅力を、
あの本はものすごく
語らなきゃいけないんだけど、
それにしてはまだ語れてないし、
読むとわかるんですけど、
食ってんですよ。 |
さくら |
ダメじゃん(笑)。 |
糸井 |
私はそれは、必要だからじゃなくて、
味として楽しむということで、なんて。
もうちょっと追及すると、
もっと食ってると思うんですよ(笑)。
自分で書いてもあのくらいなんだから。 |
さくら |
あっはっはっはっはっはっは。 |
糸井 |
その感じ、わかるじゃないですか、
ウソつきとしては。
つまりさ、自分で
“このくらい”として書いたことって、
その奥にもっとありますよね。
私はお金だってちょっとは欲しい、
っていったときには、
ほんとはいっぱい欲しい。 |
さくら |
うん、欲しいだろうね(笑)。 |
糸井 |
くれるもんならいくらでもなんだけど、
それにとらわれたくないってだけで、
ちょっと欲しいっていうのは、
自分で書くときの、礼儀みたいなもんで。
「ちょっとは欲しい」。
ほんとはいくらあっても欲しい。
人にあげてもいいくらい欲しい。 |
さくら |
どうせならね(笑)。 |
糸井 |
で、一方で、
一銭もなくて暮らせるんだったら、
もうめっちゃくちゃに憧れで、
できることならば、
そんなにつらくなければ、
やらないけどホームレスに
なってみたい(笑)。 |
さくら |
あ、そうそうそうそう!(笑)
そうなんですよ。
サバイバルスクールに行くことなんですよ、
それが。 |
糸井 |
その距離の遠さと速さ。
で、それを、たぶん、
自由っていって言うんだと思うんですよね。
そこを、わかってもらいたい(笑)。 |
さくら |
ほんとね。その速さっていうことは、
選択権があるっていうことなんですよ。 |
糸井 |
だから、無限の選択権があって、
間のちょぼちょぼのところは
どっちでもいいんですよ。
真ん中の上みたいなところで、
争いたくないですよ、あんまり。
できることなら。
似たようなことはね、
吉本隆明さんが言ってるんです。
知識とか知識人っていうのは、
しょうがなくなるもんだから、
もうとんでもないとこまで
なんなきゃダメだと。
で、それはもう0点だと。
一方で100点っていうのは、
そんなことなんっにも考えない。
100点と0点の間の
50点くらいのところは、どうでもいい。 |
さくら |
そうなんですよ。ね(笑)。 |
糸井 |
それはね、俺らなりに言えますよ(笑)。 |
さくら |
ね(笑)。言えるよね、ほんと、ほんと。 |
糸井 |
俺らなりに。 |
さくら |
うん、なりに(笑)。 |
糸井 |
それをさ、50点か60点かみたいなことで
ああだこうだ言うじゃないですか。
それはね、やっぱり虚しいですよね。
遊びとして、54点採ったら
次に56点採りました、
ああ面白かったっていうのはあるから。 |
さくら |
わかっててやってるぶんにはいいけどね。 |
糸井 |
だから56点、54点を
笑うみたいなことは、するなと。 |
さくら |
ほんとね。
0点か100点じゃないと(笑)。
生きてる醍醐味としてはね。 |
糸井 |
やっぱりね、
これからやんなきゃいけないのは
天国のイメージをどれだけ
豊かにするかだと思うんですよ。
歴史の中では、地獄絵図っていうのは
描いた人いっぱいいるんですよ。
で、豊かですよ、ある意味。 |
さくら |
ある意味ね(笑)。 |
糸井 |
もう、こんなひどい目に遭うぞって
いうことについては、
ダンテの『神曲』の地獄篇からさ、
説教するときの巻物から、
もういっぱいありますよ。 |
さくら |
うん、恐ろしい。 |
糸井 |
ホラー映画だって、
あれ、地獄の話ですからね。
で、一方の天国が、え?
‥‥マハラジャか?! |
さくら |
ぬはははは。ちがうよ。 |
糸井 |
ちがうよね。で、あるいは、
天国っていうと、白い雲の上に、
白い服を着たおじいさんが、
頭に丸い輪っか載せて、
「ほっほっほ」っていって。
脚が丈夫じゃないらしくて
杖なんか持ってて。 |
さくら |
年寄りでね(笑)。 |
糸井 |
それはね、羨ましくない。
だから、それをちょっとでも
ほんとに見てみたいと思った人がやることが、
みんなの憧れなんですよ。
アマンジオって知ってます? |
さくら |
行ったことないんですよ。
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