オトナな会話(仮)
さくらももこ×糸井重里の対談です。

その17
いつでも必死になれるおれたち。

糸井 まあ思えばさ、
マンガ雑誌が成り立ってることもね、
ふしぎな話ですよね。
昔は、電車の中で読んで、って
怒られたようなものが、
たくさんの人にご飯食べさせてる。
さくら だいたい私の職業自体が(笑)、
いっつも思うんですけどね、
必要ないんですもん、ほんとは。
幼稚園のころからやってたこと、
まだやってるっていう。
ねぇ、ただそれだけのことが
職業だってことになってる、
っていうだけなんで。
ほんとにね、マンガ家とか、
いろいろものを書く仕事っていうことに、
私、いまだに、
なれたっていうことが嬉しいんですよ。
糸井 ん〜、あ、そう。あ〜。
さくら うん。だって、なれるはずがない。
たとえばモーニング娘。になりたいって
思ってたのと同じなんですよ、
自分が小っちゃいころ、
マンガ家とかになりたいって思ってたこと。
糸井 その意味では、
いつでもやめられるっていうふうに
なっている状態っていうところまで、
たぶん作家っていくでしょう?
どうなんですかね?
たとえばね、アイドルなんかは、
やめるって前提で生きてますよね。
さくら ああ、そうかもね。
糸井 つまり、口では言わないけど、
心の奥では、
54歳のアイドルはいないでしょう。
さくら そうですよね。
糸井 それはさんざん天地真理とか
見てるわけだから、
あれはちがうな、って
思ってるんだと思いますよ。
で、その意味では、今のゴマキは、
10年後のゴマキとはちがうものですよね。
で、それを知ってて今、
咲いてるんだと思うんですよ。
さくら うん、うん、うん。
糸井 で、ほんとは、作家なんかでも、
その気持ちってどっかに
あるんじゃないかって
いう気がするんですよ。
さくら マンガ家はもしかしたら、
とくにあるかもしれないですよね。
糸井 とくにギャグ系はね、
ものすごくアイドルに似てますよね。
さくら そうですよね、うんうん。
糸井 そうするとさ、ほんとは、
ぴょんと飛び石を渡って、
ちがうことをしたら、
その人の持ってる力が
もっと活きるってことを、
ほんとは持ってたんじゃないか。
で、ももちゃん、
飛び石渡ってるよね、実際。
さくら そうなんですよ、勝手にね。
だから、なんかやめる気も
したこともないんですよ、べつに。
糸井 やめてるんですよ、無数に。
さくら うん、いろいろなことをね。
糸井 やめるのって、
よっぽど必死になんない限りは‥‥。
さくら よっぽど必死になんない限りは、
言えないかも(笑)。
糸井 だから、必死にならないように、
生ぬるくしてるわけですからね。
ただね、たぶんももちゃんも
そうだと思うけど、
必死になる局面がきたときに
必死になれるって自信、あるんだよね。
さくら ああ、それはそうかも、うん。
糸井 なんか現役なんですよ、そこは。
さくら うんうんうん(笑)。
糸井 なんなんだろうね、
こんなにいいかげんなことばっかり
なのにね。
さくら だから、もし
今までやってきたような事を
同じぐらいの仕事量で
やってくださいって言われたら、
たぶんできるんですけど、
やりたくはないんです。
もう次に遊んでますから。
糸井 自分がやってることを渡していかないと、
新しいアイデアが出せないんだよね。
つまり、アマンも1コで
終わりにしちゃったら、ダメですよね。
アマン、こんどはブータンですよ?
さくら すごいですね。ブータンって
直行便あるんですか?
糸井 だから、そういうことになれば
作っちゃったりするんじゃない?
ブータン観光局としてはさ、
1週間に1本でも直行便が
あったほうがいいんだったら、
国として考えるでしょ。
それ、僕聞いたばっかりなんですよ、
養老孟司さんがよくブータンに
行くんですって。
なぜかっていうと、
蝶々採りに行くらしいの。
昆虫採集に。
で、養老さんは、
アマンが好きなんだって。
さくら いいですねぇ。
糸井 ちょっといい話でしょ?
やっぱり、みんなね、
天国のアイデアが見たいんだよ。
さくら うん、そうなんですよね。

じゃあ、アマンじゃないリゾートって
どこがちがうのかなー。
というお話を、明日。

2005-05-31-TUE
  ホームへ
もどる
 
©さくらプロダクション
©2005 HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN All rights reserved.