吉田戦車エハイクの世界。
21世紀の武者小路実篤になるかもよ?






ほぼ日 さぁ、6年間の連載を、
今日も振り返ってまいりましょう。
戦車 ああ、はいはい。
ほぼ日 まずは、エハイクの特質が
非常によく現れたこの句など
いかがでしょうか。
戦車 ああ、はいはい。

エハイク その108


ほぼ日 こういうふうに、人の立場ではなく、
モノの立場から一句詠むというのは、
エハイクの大きな特長のひとつですよね。
戦車 そうですね。
この場合は、牛乳目線。
ほぼ日 「俺」が「牛乳」なんですよね。
戦車 人間じゃないものに語らせるっていうのは
俳句じゃあんまりやらないことですよね。
ほぼ日 俳句どころか川柳でもあんまりないでしょう。
エハイクでは、牛乳のほかに、
ハム、ガリ、駅など、さまざまな「モノ」が
一句詠んでらっしゃいました。
戦車 ありましたねー。

エハイク その112


ほぼ日 この句はすばらしいと思います。
戦車 うん。この5・7・5が
ぴったり決まったときは気持ちよかった。
「徘徊す」っていう。
ほぼ日 見事です。
雄大さと生活感の同居というか、
マクロとミクロの渾然とする感じ、
そしてそこで「生きている」という
たしかなリアリティーがあります。
戦車 ほめすぎじゃないですか。
ほぼ日 月の大きさは世界の大きさ、
そして月下を徘徊する
ちっぽけな自分のちっぽけな菌が、
その途方もない世界に
なんらかの影響を及ぼすのではないかという
じわじわとした怖さ。
あるいはそれは個としての存在の宣言。
戦車 ほめすぎじゃないですか。
ほぼ日 視野の大きさをもって
現実的な風景を切り取るさまは、
芭蕉の「佐渡に横たふ天の川」に
匹敵するのではないかと。
戦車 ほめすぎじゃないですか。
ほぼ日 あと、率直にいって、大丈夫なのかと。
家で寝てたほうがいいんじゃねぇかと。
戦車 そうですね。徘徊してないでね。
ほぼ日 ちなみに、これは実話ですよね?
戦車 うん。まぁ、徘徊っていうか、
買い物程度ですけどね。

エハイク その118


ほぼ日 ふははははははは。
戦車 言わなくてもいいことを
あえて言うような作品って、
やっぱり自分でも好きですね。
ほぼ日 ふははははははは。
戦車 「家に飯」って、
大きなお世話ですよね。
ほぼ日 でも、まぁ、トンカツを買って帰る人は、
「家に飯」があるんでしょう。
戦車 そうなんですよ。
そういう、なんていうか‥‥推理?
ほぼ日 ふははははははは。
戦車 まったく必要のない推理ね。
ほぼ日 ふははははははは、
なんて服着てるんだ、この人。
ふははははははは。
戦車 でも、この推理は当たってるね。

エハイク その145


ほぼ日 これは200回記念のランキング
2位になった作品ですね。
この100回200回のランキングは
自分の手応えはどのくらいシンクロしてます?
戦車 いやぁ‥‥なるほどなって感じですね。
自分の中に、はっきりとした
ランキングがあるわけじゃないですから。
ほぼ日 ああ、なるほど。
戦車 だからといって
意外なものがっていう感じでもないし。
あ、でも「えー、これが?」っていうのも
あったような気がしますね。
ほぼ日 この「シェーバ」は、
じゃらじゃらついてるストラップが
とってもいいですね。
戦車 ありがとうございます。

エハイク その149


ほぼ日 個人的な話になりますが、
納豆のタレを見ると
ときどきこの句を思い出します。
戦車 これはさ、わかりにくい作品が多い中で
わかりやすさがあるよね。
ほぼ日 わ、わかりやすさ?
戦車 なんていうの?
共感できる部分っていうかさ。
ほぼ日 き、共感?
戦車 いや、こういうことを
実際にやってるかどうかはともかく。
ほぼ日 ああ、よかった。
やらないですよ、これは。
戦車 でも、ちょっとしたタレやからしを
持て余したりはしてるでしょう?
ほぼ日 持て余してます、持て余してます。
戦車 そういう共感が。
ほぼ日 それはたしかにあります。
この工夫は、やってないですけど。
戦車 (笑)

エハイク その159


ほぼ日 ははははははは。
これは、実際にあった話ですか?
戦車 はい。私服でした。
ほぼ日 はははははは。
こんな格好してたんですか?
戦車 だいたいこんな印象。
ほぼ日 ひー、おもしろい(笑)。
戦車 やっぱり事実が一番おかしいよね。
でも、その事実を説明しても
しょうがないんだけど。

エハイク その168


ほぼ日 「なぁ腸よ」って(笑)。
戦車 これも実話ですね。
預かってた猫が下痢しちゃって、
ちょうど俺も下痢してましたっていうね。
そっくりそのままなんだけど。
ほぼ日 事実はおもしろいなぁ(笑)。
戦車 ああ、この猫は歳とって
死んじゃったんだよなぁ。
ほぼ日 あらら。
戦車 うーん、やっぱり、
いろんな思い出があるなあ(笑)。
ほぼ日 なにせ、6年ですからね。

エハイク その176


戦車 なんだ、こりゃ。
ほぼ日 あははははは。
戦車 もう、たんなる、自分のクセですよね。
ふとそのクセに気づいたというか。
「中年だわ、俺」みたいな感じで。
ほぼ日 それをわざわざ5・7・5にして
絵もきちんと添えるっていうあたりが
非常に希有というか。
その行為自体がおもしろい。
戦車 もう、なんていうか、メモですよね。
「このクセは、やらないほうがいいぞ」
っていう、自分へのアドバイス。
ほぼ日 評のほうにも
「刻みつけたい」って書いてます。
戦車 ほんとだ(笑)。

エハイク その240


ほぼ日 出ました!
「受験生」シリーズです。
戦車 「ほぼ日」の読者層に
受験生って多いんですかね。
ほぼ日 いや、どうなんでしょうか。
戦車 もし受験生の人が多いなら、
毎週「受験生」シリーズがあるのは
楽しいのかなと思って。
ほぼ日 そんな動機があったんですか。
戦車 いや、そうでもないですけど。
ほぼ日 どっちなんですか。

エハイク その241


戦車 この句にはちょっとしたエピソードがあって。
知人のデザイナーさんが、
仕事にトラブルか何かがあった上に
骨折したりしたらしくて。
ほぼ日 あらら。
戦車 という状態のその人から
「お願いがあるんだけどさ」って連絡が来て。
なにかと思ったら、
「『超吉』のおみくじが欲しいんだけど」って。
ほぼ日 わははははははは。
戦車 で、それ約束しちゃって、
まだ描いてないんですよね。
だから、「超吉」作らなくちゃ。
ほぼ日 そういえば、「超吉」は
糸井重里も気に入ってましたよ。
戦車 あ、そうですか。
意外に好評ですね、「超吉」。

エハイク その254


ほぼ日 こちらも大好評の
「チャーハン」シリーズ。
戦車 うん。このシリーズは
自分でも好きですね。
ほぼ日 「受験生」もそうですけど、
やっぱり、シリーズになる作品って、
1回目がインパクトありますよ。
戦車 ああ、そうですね。
ほぼ日 こうして読み返してみても
おもしろいもんなぁ(笑)。
ははははははは。
戦車 なんていうか、基本的に、
大きなお世話だよね(笑)。
で、チャーハン本人はふつうで、
このおばさんがずっとおかしいんだよね。
ほぼ日 うん、おばさん、おかしい。
戦車 ストーカーまがいで(笑)。
ほぼ日 ストーカーまがい(笑)。

(続きます)

2008-05-21-WED

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