ほぼ日 |
すっかり春も
中盤になってまいりました。 |
みうら |
なりました。 |
ほぼ日 |
(いつもとちがうお話をしてみましょう)
体調はいかがですか? |
みうら |
頭が痛くてしょうがないです。 |
ほぼ日 |
ええ? 毎日ですか? |
みうら |
「日々の暮らしで頭が痛い」
じゃない頭の痛さで、痛いんですよ。
頭が痛いから
もう煙草をやめます、わたしは。 |
ほぼ日 |
それほどまでに。 |
みうら |
いや、なにも煙草をやめる機会を
見計らっていたわけじゃないんです。
吸うと頭が痛いんですよ、
それは「煙草」じゃないでしょ?
煙草は、そもそも
気持ちよくなるためのものなのに
頭が痛い煙草なんて、ねえ。 |
ほぼ日 |
はあ、まあ。 |
みうら |
お医者さんにスキャンというのを
やってもらって
「何も悪くない」と言われたんですが
ぼくは「悪い」と思ってるんです。 |
ほぼ日 |
ところでみうらさん、
「リア王」は、やめたんですか。 |
みうら |
あれはあの時期限定ですから。
|
ほぼ日 |
すごく短い限定でしたね。 |
みうら |
ウチのおかんからも、
「あかんで、似合ってへんで」
という電話が入ってますのでね。
ぼくは、ウチのおかんが
言うことをやっているだけなんです。
おかんの言われたことに反発する時期は
37歳までで終わりました。
おかんの言うことは間違いないです。 |
ほぼ日 |
では、頭痛に気をつけつつ、
次の県にまいりましょう。
(みうらさんが引いた県くじを見る)
あ、熊本県です。 |
みうら |
熊本県、ああー‥‥
しゃべらなきゃいけないことが
たくさんあるんですが、いつも
この「ああー」のとき考えているのは、
「まず最初に言わなきゃならないことは
なんだ?!?!」
ということです。 |
ほぼ日 |
なるほど。 |
みうら |
「熊本県」と言われただけで、
どーんと押し寄せるんですよ、熊本が。
熊本勢が、しかも横並びでね。
しかしぼくはスナック大谷の話は
しなきゃなんないはずなんです。
他人はわからないけど、
ぼくはスナック大谷の話をしなきゃなんない
と思います。
高校2年生あたりからだったでしょうか、
「自分を褒めてあげたい」の
有森さんよりも前に、
期末テストや中間テストが終わったら
自分を褒めてあげる意味を込めて、
ぼくは日活のロマンポルノを観に行きました。
必ず、海女もの・女教師もの・SMものという
3本立てでした。
異種格闘技なものが混合された3本立てで、
まぁ、見に行った人間は、
最終的な4本目を自分で立てていけ、
ということなんです。 |
ほぼ日 |
‥‥‥‥。 |
みうら |
そのなかでも、SMものに出ておられた
谷ナオミさんという方は
大活躍でございました。
当時はアブノーマルという言葉も
あまり聞かなかったですし、
SMが好きな人たちはたいてい
「変態」と呼ばれていました。
80年代に、糸井さんがビックリハウスで
「ヘンタイよいこ新聞」を連載されて
そのときにはじめて、変態は
漢字からカタカナに変換されました。
その日からヘンタイは
次々に気が楽になって
大手を振って歩くことになりました。
いまはもうSMも、とてもライトな感覚で
「S? M?」
と、飲み屋のあいさつみたいに聞きますが、
前はとても言えないことだったんです。 |
ほぼ日 |
そんな時代が‥‥。 |
みうら |
ぼくは、谷さんのことを思えば
おかずなしでメシが食えるくらいの
童貞っぷりでした。
そしてすっかりそういうことを忘れて
大人になったある日、
旅行代理店の前を通ったところ、
「熊本」というパンフレットが、
たまたま目に飛び込んできて
なにか思し召しなのかわかりませんが
手にとって開きました。するとそこに
「あのSM女王の店 スナック大谷」
と、載っていたんです。
「ぼくはあの銀幕のスターに
会うことができるんだ!」
と思いました。
これは、望めば何でも叶う、
もう、元気だったらなんでもできる、
みたいなことですよね? |
ほぼ日 |
はあ。 |
みうら |
それからは、いつかはスナック大谷で、
一献傾けたいと思っておりました。
現在のところ、スナック大谷へは、
3度行かせていただいております。
ぼくが持っているレコードを
谷さんに見せたりして、
「わたしも持ってないのよ」
なんて言われたうえに
「おいしいとこがあるのよ」と
馬刺しを食べに連れて行っていただきました。
「そんな、昔のこと、
ずいぶん覚えてらっしゃるのね」
なんて言われて、こっちもすごく
いい気分です。
「みうらさん、今日はどこにお泊りですか」
「縛ってください」
と言われたらどうしようと思って
ドキドキしながら飲んでたいところ、
何もなかったです。
そこはクリーンです。
まったく何もなかったです。
|
ほぼ日 |
残念ですね。 |
みうら |
谷さんという方は、そんなことを
高校時代からいままで思わせてくれるんです。
どういうことなんでしょうか。
胃酸過多のように、
フェロモン過多である、と思います。
それがまぁ、熊本県のいちばんの思い出です。
‥‥えっと、ほかに熊本県熊本県‥‥
鹿児島県と熊本県って
ちょっと似てるとこ、ありますね。
県境にはステッチは入っていない
ということは、言いましたっけ? |
ほぼ日 |
ステッチが入っているということは
聞きました。 |
みうら |
そうでしたそうでした、
ステッチは入っているんですよね?
それは、旅人には見えるんです。
しかし、旅行に行かない出不精の方が
陥りがちなイメージを
払拭するために言いますが、
ステッチにひっかかって隣県には行けないと
思い込んでいる方が多いんです。
県境はほとんど地つづきです。
九州は、9この州があるんですよ?
‥‥あ、知ってましたか。
四国も4つあるんですよね? |
ほぼ日 |
そうですね。 |
みうら |
それは、
「ンもう、
わかりやすくしてあるんじゃない〜」
ということですよ。
そんな州がアメリカにあったでしょうか。
トゥエルブ州とか、
ないじゃないですか。ね?
これはすごいですよ。
で、えーっと、
隠れキリシタンの話はしましたっけ? |
ほぼ日 |
ステッチの話は‥‥? |
みうら |
もういいです。 |
ほぼ日 |
いいんですか。 |
みうら |
あのね、旅慣れてくると、
「その土地土地で
かぶるアポロがある」
ということがわかってきます。
これは
「その土地土地のアポロがある」
ということなんですよ。
いまのはつまり、もう一回言っただけです。
すなわち強調文です。 |
ほぼ日 |
うはははは。 |
みうら |
これは、誰が調べたわけではない、
ぼくが、足で稼いで
わかってきたことです。 |
ほぼ日 |
すばらしいですね。 |
みうら |
アポロというのは、当然、
アポロキャップのことです。 |
ほぼ日 |
アポロキャップ‥‥月面着陸に成功した
アポロ乗組員の方がかぶっていらした
帽子ですね。 |
みうら |
それを、宇宙飛行士でもないのに
かぶりはじめたのが、山本晋也監督です。
監督は、アポロをかぶって
レイバンのサングラスをかけていましたが、
それは、タモリさんに
差をつけるためだと思います。
タモリさんと監督が並ぶと
レイバン、レイバン、でしたが、
レイバン+アポロが監督です。
しかし、昨今はとーんと
アポロを見なくなりましたね。
この間お亡くなりになりました
百瀬博教さんという方はアポロでした。
ぼくは百瀬さんのお姿を拝見して、
久々にアポロを見ました。
ああ、まだこのアポロ計画は、
ずっとつづいてるんだと思いました。 |
ほぼ日 |
計画‥‥? |
みうら |
いまも日本には、アポロ計画が
じわっと根づいてるんですよ。
それは、熊本県に行ったときに
わかったんです。
熊本県は、隠れキリシタンの
天草四郎さんが有名です。
天草四郎さんは、いろんな活動を
なさったと思うんですが、
当然そこには、アポロがついてくるわけです。 |
ほぼ日 |
アポロが、ですか。 |
みうら |
「まさかな」と思いながら
おみやげやさんで発見したものを
ご紹介しましょう。
裏原宿をうろうろしてる若者でもなく、
特に野球を好きなわけでもない人間が
こんなにキャップを買っていくわけは、
──わけは「理由」と書いて
「わけ」と読みますが、──
その土地土地のキャップで
その土地土地の思い出を
集めるということなんです。 |
ほぼ日 |
これは‥‥。
|
みうら |
別府ですね。
「毎日が地獄です」キャップです。 |
ほぼ日 |
大分県の回で出てきた
地獄めぐりのおみやげですね。 |
みうら |
そこのみで買えるヴィンテージキャップ、
「毎日が地獄です」
まず、こういうアポロ計画がありますよね。 |
ほぼ日 |
はあ。 |
みうら |
こちらは、北海道。
土方歳三記念館のみで販売されてる
ヴィンテージキャップです。
|
ほぼ日 |
そして、これは?
|
みうら |
鳴門には、当然、
アポロ計画が入っています。
「WONDER鳴門」。 |
ほぼ日 |
‥‥うわはははは。 |
みうら |
そして、これです。
天草四郎さん。
「AMAKUSA SHIRO」と
ローマ字で書いてあります。
「NEW HISTORY HAS BEEN BORN」と
書いてありますでしょ?
これには天草さんもびっくりだと思います。
それから、北海道に行きますと
「SABURO KITAJIMA」と書いたものも
売っていますね。
もちろん買ってますから、大丈夫ですよ。
そんな情報、寄せなくていいです。 |
ほぼ日 |
はあ。 |
みうら |
こういう土地土地のキャップは
かぶっていこうぜ、ということに
自然となっていきます。
熊本県にいるときは、当然のように
ずっと「かぶりっぱ」でした。
そのかわり、県のステッチを越えたら、
もちろん脱帽でしょうね。
それは神仏と同じことです。
脱帽して、また隣の県のキャップをかぶり、
その土地土地に慣れ親しんでいく
ということでしょう。
これからの旅には、そういうことが
重要になってくるんじゃないかと思います。 |
ほぼ日 |
なるほど。 |
みうら |
歴史がこうやって変わっていくんです。
これは、歴史が動いた瞬間ですよね? |
ほぼ日 |
‥‥はい。 |
みうら |
「あれ? オレの知ってる歴史と
ちょっと違うぞ?」
というところから、
歴史というものは
少しずつ変わっていくんです。
そういうことをいま
お見せしたということです。 |
ほぼ日 |
それは、アポロ側から見ても、
天草側から見ても、
また違う、歴史ですね。 |
みうら |
両方がにじり寄って、
少しずつ時代が変わっていっている
ということです。
とにかく、アポロ計画も天草四郎さんも
教科書に載っていることだけじゃないぞ、
ということはわかっていただかないと
いけませんね。 |
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今回のお話をノーカットでごらんになりたい方は
下の動画でおたのしみください。 |