糸井 |
志の輔さんとやる、つぎのイベントでは、
落語について、いろんな話が
できたらいいなと思っているんです。
来てくださった人に、
いろんな噺家さんがいて
いろんな落語があることを
知ってもらいたいと思って。
ぼく自身も、落語を聴きながら
「いままでどうして
聴いてなかったんだろう!」
って思うことが何度もありますし。
たとえば、昇太さんの師匠の
(春風亭)柳昇さんなんて、
亡くなってから聴くようになった。
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志の輔 |
ああ、柳昇師匠はすごいですねえ。
亡くなったあとで、
あらためて柳昇師匠の作品を
ひととおり聴いてみたんですけど、
「あぁーー、こんな噺、絶対、
誰にも思い浮かばないよな!」
っていうものばっかりなんですよ。
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糸井 |
ああ、そうですか。
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志の輔 |
最後まで、新作をつくられてたんですよね。
これは昇ちゃんから
聞いた話なんですけど、
柳昇師匠に、昇ちゃんが、
「師匠はどうして古典をやらないんですか?」
って訊いたことがあったそうなんです。
そしたら、柳昇師匠は、
「ぼくはね、新作がつくれなくなったら
ぼくの価値はないと思うのでね、
新作をつくり続けるんだよ。死ぬまで」
って、おっしゃったそうです。
それを、まえに聞いたときには、
「いまさら古典なんてやれるかい」
というぐらいのことかなと思ってたんですが、
最晩年の「カラオケ病院」なんかを
あらためて聴くと、いやぁ、もう、
たしかにこんなことは誰にもできないぞ
っていうふうに思うんです。
ところが、それだけすごくても、
やっぱり世の中には
「落語の中には圓生の流れがないとダメだ」
「文楽の流れがないとダメだ」っていう、
表現のセオリーにこだわる人たちがいて、
そういう人たちには
なかなか認められなかったりするんですよね。
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糸井 |
うん、うん。なるほど。
あの、そういう話を、
イベントの当日にしていただきたいんです。
それが、「こたつ寄席」の部分ですよね。
そういう話がね、たぶん、
ふつうの人にも、わかると思うんです。
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志の輔 |
ほんとですか。
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糸井 |
具体的にその人のことを知らなくても
通じる話はできると思うんですよ。
あいだあいだで、
ぼくもどんどん質問させてもらいますし。
で、「はじめてのJAZZ。」のときに、
山下洋輔さんたちに
実際に演奏してもらったように、
その話が出たら、落語のレコードを
どんどんかけていきたいんですよ。
だから、こたつでこう、話していて、
柳昇師匠の「カラオケ病院」の話になったら
「ちょっと聴いてみましょうか」
っていう感じで。
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志の輔 |
ああ、ああ、なるほど。
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糸井 |
もちろん、事前に、
どのあたりの話をするのかを
ある程度、
絞っておかなきゃいけませんけど。
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志の輔 |
しかし、やっぱり、
糸井さんのお客さん‥‥
というより、
「ほぼ日」のお客さんというのは、
やっぱり、そういうような話がわかる、
というか、
わかるとかわからないというより‥‥。
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糸井 |
「わかりたい」というお客さんですよね。
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志の輔 |
うん。そういうことが
「たのしめる人たち」なんですかねぇ。
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糸井 |
だと思います。
これは、絶対、自信ありますね。
さっきのような話が、
きてくださったお客さんに
ウケることは自信があります。
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志の輔 |
ほぉー。
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糸井 |
たとえばそれが
「いつごろにつくられたどういう噺か」
みたいなことは、必要ないんですよ。
用語解説もあらすじも、
どうだっていいんですよ。
「いいなぁ〜」って思う
ギターフレーズがいいのと同じで。
「ここ、しびれるよね!」
っていう話がしたいんですよねぇ!
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志の輔 |
あああ、なるほどね。
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糸井 |
もちろん、落語の部分は
ちゃんと高座でやっていただいて、
まあ、ご無理をお願いすることに
なるんですけど、
こっちの「こたつ」の部分では、
落語についての話を
思う存分、していただきたいなと。
だから、「こたつ」では、
「落語家がいちばんの落語好きなんだよ」
っていうのがテーマになるんじゃないかと
思うんですけども(笑)。
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志の輔 |
「落語家がいちばんの落語好き」、
それはたしかにそのとおりなんですよ。
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