糸井 |
落語とラジオは、
ほんとはものすごく
相性がいいと思うんだけど、
あまりやらないですよね。
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志の輔 |
そうなんですよ。
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糸井 |
ラジオが焦ったのか、
落語がうまく乗れなかったのか。
ただ追い出されてしまった、
という感じですよね。
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志の輔 |
うん、ほんとに一時期は
毎日、落語番組があったんですものね。
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糸井 |
ぼくが子どものころは、そうでした。
じゃなきゃ、落語なんて知らなかったもの。
どうしてなくなってしまったんでしょうね。
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志の輔 |
それはきっと、いつの間にか
落語が「ライブ」じゃ
なくなったからじゃないですかね。
つまり、いつ聞いても同じものであるなら、
レコードで聴けばよい、
CDで聴けばよい、と。
どこかの時点で、落語は
「いつ聴いても同じものがよい」
とされちゃったんです。
たとえば、文楽師匠の逸話で、
「どのネタをやっても
プラスマイナスの誤差が15秒だ」
っていうのがあるんです。
20分の落語をやって
誤差がプラスマイナス15秒ということは、
セリフが1個も変わっていない。
「お運び様で厚く御礼申し上げます」
というところからはじまって、
最後のオチまでプラスマイナス15秒。
それはすごいことですけど、
その「誤差15秒の世界」を
たのしめる人というのは
多くないと思うんです。
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糸井 |
それは、おもしろいなぁ!
で、そんな文楽さんの落語がつまらないなら
話はわかりやすいんだけど、
‥‥つまんなくないんだなぁ。
おもしろいんだよ。
イヤんなっちゃいますよねぇ。
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志の輔 |
そうなんです。
たしかに、そこにおもしろさもあるんです。
あの、六本木に、
ビートルズのコピーバンドが
売りの店があるじゃないですか。
あそこへ行くと、
コピーバンドが演奏しているときは、
演奏も、仕草も、
ぜんぶいっしょにしてくれないと
イヤなんですよ。
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糸井 |
そうですよね(笑)。
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志の輔 |
いっしょにしてもらいたいんですよね。
だから、「ライブ」ならではの
落語もいいし、
「誤差15秒以内」の落語もいい。
‥‥複雑ですねぇ。
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糸井 |
複雑ですねぇ(笑)。
いやぁー、イベントの当日、
「こたつ」で
こういう話がお客さんの前で
できるかと思うと
めちゃくちゃたのしみですね!
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志の輔 |
ああ。でも、まだ、思ってますよ。
こういう話は‥‥
たのしんでもらえるのかな?
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糸井 |
それは、虫博士が、
「おれのアリジゴクの話は
おもしろいのかな?」
って不安に思うようなものですね。
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志の輔 |
あはははははは。
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糸井 |
でもまあ、「こたつ」は
おまけといえばおまけで、
メインはやっぱり
志の輔さんの落語ですからね!
こういう話をうけて、
さらに志の輔さんの落語が
聞けるわけですから。
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志の輔 |
こういう話をしたあとで
自分の落語をやるなんて、
それ‥‥
やりにくいだけじゃないですか?
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一同 |
(笑)
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