続・はじめての落語。 立川志の輔ひとり会
志の輔×糸井重里対談! イベントについてはこちら!
第7回 落語の著作権は?
志の輔 古典をそのまましゃべるということでいうと、
ほんとだったら、最初にその噺をつくった人に
ぼくらは印税を払わなきゃいけないわけです。
ところが、落語の場合、
なぜかそれをしなくていいんです。
あれ、一席しゃべるごとに印税を払うとすると、
かなーり、私たちは
困窮することになると思うんですが(笑)。
糸井 それは痛いですよね(笑)。
そっか、印税はないんですね。
志の輔 落語には印税がないんですよ。
印税がないから続いてきた世界なんですけど、
印税がないおかげで、
栄えなかった世界であるともいえるんです。
というのは、
もしも印税を払ってしゃべるとすると、
その元を取り返さなきゃいけないから、
絶対にウケることをやらないといけないわけです。
1万円の印税を払ってしゃべって、
5000円のギャラだったら儲からないんですよ。


糸井 あーー、いい話だなぁ(笑)。
志の輔 つまり、印税がないおかげで、
ぼくら落語家は、のほほんと暮らせるんです。
そのかわり、印税がないおかげで、
みんな、そんなにひっちゃきにならなくても、
「今日も明日も大丈夫」なんですよ。
一同 (笑)
糸井 そうかぁ、JASRACが
突如集金に来たりはしないわけですね。
志の輔 そうなんですよ。
まえに、びっくりしたことがありましてね。
富山の放送局で、故人の落語のCDをかけて、
前後の枠を私がつけるという番組があるんです。
で、CDをかけるんだから、
「著作権はちゃんとしといてくださいよ」
と言ったら、
放送局の人がJASRACに電話したんですよ。
「もしもし、あのー、
 落語をかけたいと思うんですけど、
 著作権のほうは
 どういうふうにしたらいいんでしょう」
とラジオ局の人が訊いたら、JASRACの人が、
「いやー、ウチでは
 落語というのは扱っていませんけれど‥‥
 いいんじゃないんですかぁー」
って言われて(笑)。
糸井 あはははははは、すごい(笑)!
志の輔 信じられないような話ですよ。
売り出されていれば、
もう、その時点で著作権はないんですよ。
すごいですよねぇー。
糸井 新作(その人が創作したオリジナルの噺)
なんか、どうなるんですかね?
志の輔 新作でもなんでも、ぜんぶ。
糸井 じゃあ、志の輔さんの新作を
他の落語家がそのままやるということも
ありうるわけですか。
志の輔 いやいや、もちろん、
そういうことはやっちゃいけないという
不文律はあります。
もっというと、古典にしても、
「誰かに教わったものでないと
 やってはいけない」
という不文律があるんですよ。
なぜ、そういう不文律ができたかというのを
自分なりに考えてみると、
おそらく、昔はそれが、
米びつだったからだと思うんです。
糸井 ああ、メシのタネですね。
いわば、マジシャンにとっての手品のタネだ。
志の輔 そうなんです。
ところが、いまはデパートで
手品のタネが売っている時代ですから‥‥。
そうなってくると、
「あれは、オレが考えた」
とかいう問題ではなく、
「売ってるんだから、やっていいじゃん」
っていうふうになっちゃうんですよ。
「CDで発売されているものを
 覚えちゃったんですよぉ」っていう状態。
だから、まあ、やろうと思えば、
私の新作だってなんだって、
そのまんまやれちゃうんです。
「いくらなんでも生きている人の新作を
 そのままやるのは申しわけない」という
ハートの問題でやらないことに
なってますけどね。
だから、私たちが著作権なしで
のほほんと古典を使っていたことの
しっぺ返しが、ここで来てるんですよ。
自分のものにも著作権はないんですよ(笑)。
糸井 いーい話だなぁ(笑)!

(続きます!)

2005-12-02-FRI
 
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