今年は相馬で
やりましょう!

立川志の輔×糸井重里 打ち合わせ

「相馬で 気仙沼さんま寄席」へのご協力を
今回もご快諾くださった立川志の輔さんと、
糸井重里が打ち合わせをしました。
師匠にとっては、はじめての相馬です。
どんなところで落語会を?
相馬はどんな街なのか?
3月に行った相馬での打ち合わせで、
糸井が見てきたこと、感じたことを、
師匠にお伝えしました。

糸井
昨年は「志の輔らくご」を気仙沼で
ひらいてくださって、
あらためてありがとうございました。
志の輔
こちらこそ、ありがとうございました。
糸井
「さんま寄席」をいったんお休みして。
志の輔
ええ、そうでした。
あの独演会ができて、私もうれしかったです。
糸井
それで、そこから1年後に、
今度は福島で「気仙沼さんま寄席」を、
ということになりました。
志の輔
福島の相馬で。
糸井
はい。
ご縁があって知り合った
福島県の相馬市で、
「気仙沼で実現したあのすばらしい時間を」
という企画です。
志の輔
なるほど。
福島県の他の地域では
数回演らせていただいていますが、
相馬市ははじめてです。
糸井
いい場所でしたよ、ほんとうに。
3月に打ち合わせを兼ねて行ってきたのですが、
人も、地域も、さらに会場も、
いろんな意味でいい場所でした。
志の輔
ほおー、たのしみですね。
糸井
たのしみにしてください。
まず、さんま寄席の会場は、
「相馬市民会館」というところです。
ええと‥‥写真も撮ってきました。
こういうところです(お見せする)。
志の輔
ああ‥‥。
糸井
震災後に建てられたまだ新しい会場で、
ぼくら見学したんですが、
もう、うるさいくらいに盛り上がっちゃって(笑)。
志の輔
これは立派ですね。
すばらしい。
糸井
「椅子の幅が広くて、
 座席の前後も広いから、
 ゆったり観ていただけます!」って、
市民会館の人がうれしそうに自慢してくれました。
志の輔
‥‥座り心地がいいっていうのは、
つまり「寝やすい状態」ですね。
それは私からすると、脅威です(笑)。
糸井
またそんな(笑)。
志の輔
会場はこういうところです、と。
わかりました。
で‥‥さんまは、あるんですか?
秋に「さんま寄席」というからには、
気仙沼の焼きさんまを
食べたくなると思うんですが‥‥。
糸井
師匠、大丈夫です。あります。
志の輔
ある。
‥‥でもたしか、ちょうどこの時期に
「目黒のさんま祭」があったような‥‥。
糸井
おっしゃる通り、
17日が「目黒のさんま祭」の日なんです。
志の輔
‥‥同じ日ですね。
糸井
「相馬で 気仙沼さんま寄席」と同じ日です。
志の輔
さんまを焼いてくれる気仙沼の人たちは
目黒に行くのでは‥‥?
糸井
大丈夫です。
気仙沼の焼き手の方々が、
なんとか駆けつけられるよう
方法を考えてくれているんですよ。
志の輔
そうですか。
それはよかった。ありがたい話ですね。
糸井
ご心配いただきありがとうございます(笑)。
しかも、焼き手のみなさんだけでなく、
気仙沼の女将さんたちも、
参加してくださるんです。
志の輔
気仙沼からいらしてくださるんですか。
糸井
ええ。気仙沼のおいしいものを持って、
寄席の翌日の朝市でお店を出す予定です。
志の輔
それはうれしいですね。
「金のさんま」も食べられる。
糸井
食べられます。
志の輔
うれしいですねえ。

それで、その相馬市は、
東京からどのくらいの遠さで?
糸井
気仙沼に比べると、近くなります。
車だと4時間半ほどですので、
そうですね、日帰りもできる距離でしょう。
志の輔
気仙沼から相馬は?
糸井
車で行ける距離です。
気仙沼のみなさんが行きたいと
おっしゃってくださったので、
気仙沼から相馬までのバスツアーが
組まれることが決まったんですよ。
志の輔
おお。
みんなでバスに乗って来てくださるんですね。
それは盛り上がりそうだ。
糸井
あの、相馬も気仙沼と同じで
街の人たちがとても魅力的なんですよ。

お米農家さん、お醤油屋さん、
お肉屋さん、そして市長‥‥。
いろんな人にお会いして、
ぼくはずいぶん気がらくになりました。
志の輔さんにも
ぜひ一度会っていただきたいです。
志の輔
ぜひ、それはお願いします。
糸井
まずは、立谷(秀清)市長をご紹介したいです。
ほぼ日で以前取材をしているのですが、
とても気さくで明るい方で、
それでいて当然ですが市長さんですから、
すばらしく冷静に様々な判断ができる方なんです。
エピソードを挙げていったら、きりがないくらい。
志の輔
お会いできるのがたのしみです。
糸井
天皇陛下もブータン国王も、
相馬市を訪ねているんですが、
それはやっぱり、行きやすいいい場所を
市長がつくっているからなんですよね。
志の輔
なるほど。
糸井
自分では「悪徳市長」とか言っていますが(笑)。
当日もいらっしゃる予定ですので。
志の輔
ぜひ、ご紹介ください。
糸井
もちろんです。

そして、人ももちろんですが、場所もいい。
落語会を開く市民会館の正面には、
屋根がある広い通路がありまして、
そこは市場などを催せるようにと
つくられた場所なんだそうです。
志の輔
はい、はい。
糸井
「寄席の次の日はここで朝市をやりましょう」
と地元のかたがおっしゃってくださって。
志の輔
いいですねー。
寄席の次の日も、
同じ場所で朝市をたのしめる。
糸井
いいでしょう?(笑)
魅力的なお店が集まった商店街をつくりたい
と相馬の方々はおっしゃっていました。
志の輔
商店街ですか。
商店街というと、あの、
ほぼ日が六本木ヒルズでされていた‥‥
糸井
「生活のたのしみ展」ですね。
志の輔
そうです。
あの展示の話しをうかがったとき、
糸井さんは商店街がつくりたかったんだなと
思ったんですよ。
糸井
はい、そのとおりですね。
志の輔
理想がつまった、夢の商店街。
糸井
志の輔さんも落語の中で
商店街をつくっていますよね。
いろんな人の物語を、
落語を通して話されています。
志の輔
たしかに、そうですね。
自分の落語の中で
自分にとって理想の商店街や街をつくって、
それを伝えているのかもしれません。
糸井
あの、
くじ引きをする商店街が出てくる噺‥‥
志の輔
『ガラガラ』です。
ほかにも『メルシーひな祭り』や
『踊るファックス』の商店街とか、
『ディアファミリー』にでてくる家族も、
みんな理想の場所なのかもしれないです。
糸井
愛すべき人が、次から次に(笑)。
志の輔
そそっかしい電気屋とか、
おせっかいな豆腐屋とか、
口は悪いけど根がいい人たちが集まっている、
そんな場所で私は暮らしたいんです。
なんともいえない味わいのある‥‥。
糸井
ああ、わかります。
たとえば、小津監督の映画作品などは
自分の世界観を街に凝縮していますよね。
その世界の中で、いろんな人が
恋をしたり、家族と別れたりする。
実は昔から、みんな自分の中に
理想の街を持っていたかもしれませんね。
志の輔
なるほど。
私の落語に出てくるどの商店街や街も、
自分が住みたい街であって、
理想の「遊び場」なんだと思います。
糸井
「遊び場」、いいですねぇ。
「志の輔らくご」は、
みんながよろこんでくれる場ですから。
志の輔
ありがとうございます。
日本中で公演することで
その地域に住んでいる人たちに、
「こういう商店街があってほしい」
という願いを私は、
まあ、届けているのかなと。
いま糸井さんと話していて思いました。
糸井
ぼくたちは、そういう機会に
ご一緒できることを感謝しています。
師匠にも、街のみなさんにも。
志の輔
うーーん‥‥。
ということは私はどうやら、
ずーっと落語を続けなくちゃならないようで(笑)。
糸井
志の輔さんは、
落語につかまえられちゃった人ですから(笑)。
志の輔
(笑)
糸井
はじめての相馬は、緊張されますか?
志の輔
はじめての場所で、
どうやって他の地域と変わらない気持ちで
落語をやれるのか、と考え始めると、
緊張はしますね。

1回目の「気仙沼さんま寄席」もそうでした。
あの時の得も言われぬ緊張感といいますか‥‥。
糸井
あれは、すごかったです。
志の輔
きっと、はじめての場所なので
そういう気持ちにはなると思うんです。
でもそういう緊張感を持ちながらも、
お客さんには普通にたのしんで聞いてもらえるよう、
私はがんばらないと。
糸井
相馬の方だけじゃなくて、
気仙沼の方々も9月17日に集まります。
そしてもちろん、
東京や日本全国からお客さんがやってきます。
お客さんが交わる場所としての、
「相馬」になるんでしょうね。
志の輔
はい。
いやぁ、たのしみです。
引き続き、いろいろ話しましょう。
糸井
話しましょう。
またおもしろくなりそうです。
今日はお忙しい中、ありがとうございました。
志の輔
こちらこそ、ありがとうございました。