第3回 はなを思い出す。
- ──
- ケンが亡くなってから2年して、
はなちゃんが佐藤家に
やってくることになったんですね。
はなちゃんとケンとでは、
栞里さんのなかで違いはありますか? - 佐藤
- ケンとすごした時期の自分は子どもでしたが、
はなを迎える自分は大人になっていた、
ということがとても大きかったと思います。
ケンとは、5歳からずっといっしょだったから
自分は「兄妹」のような気持ちでいました。
お世話も母と父が中心でした。
はなは、どちらかというと
「我が子」のような感じです。
だから、しつけもぜんぶ自分でやってみたいと思って
マンツーマンの犬のレッスンに
両親を誘って1年ほど通いました。 - ──
- はなちゃんを入れた家族全員で、
1年間通ったんですか。
すごいですね。 - 佐藤
- 休みの日曜に、親とそろって
はなのレッスンに通うことが
すごーく、たのしかったんです。
公園で遊びながら
犬のしつけを教えてくれるようなところでしたし。
- ──
- いつも栞里さんが率先して通ってたんですか?
- 佐藤
- そうです。
レッスンから帰ると、家で
教えてもらったことを
復習するように実践していきます。
そんなとき、おとうさんが勝手に
はなにりんごとかあげてると
「ちょっと!」と注意したりして(笑)。 - ──
- 犬と暮らすことによって、
自分が変わったことや
よかったなぁと思うようなことは
ありますか? - 佐藤
- 私は、じつは
あまり本音を人に言えないタイプの
ようなんです。 - ──
- さきほど栞里さんのマネージャーさんにも、
ふだんは親御さんにもお友達にも
愚痴や悩みなどの感情は
表さないかもしれない、と伺いしました。 - 佐藤
- そうなんです。
自覚はあまりなかったのですが、
犬がそばにいることで、それが
よりはっきりした感じです。
いちばん素直になれるのは、
いまは、はなの前じゃないかなと思います。
「こんなことがあったよ」という報告や
日々の悲しかったこと、悔しかったことを
はなのケージの隣に座って話します。
- ──
- ああ‥‥、はなちゃんがいて、
よかったですね。 - 佐藤
- ほんと、いてくれてありがたいです。
- ──
- お仕事の合間とかに、
はなちゃんのことを思い出すことは
ありますか? - 佐藤
- えーーーー!!
- ──
- えーーー?
- 佐藤
- しょっちゅうです!!!
- ──
- わはははは。
- 佐藤
- いつも、いっっっつも、
いっっっっっつも、ですよ。
携帯電話の待ち受け画面も
はなの写真ですから、
少なくとも携帯をさわるたびに思い出します。
本番前に緊張したり
「どうしよう!」という気持ちになったときに、
はなの顔を見ると気が抜けます。 - ──
- うん、うん、わかります。
お守りがわりですよね。 - 佐藤
- あとはね、
「今日、仕事が終わったら、
みんなでごはんを食べにいく
雰囲気になってるけど‥‥、
あーーー、でもちょーーーーっっっと、
はなに会いたいなぁぁぁぁ!」
という気持ちに、しょっちゅうなってます。 - ──
- あんな子が家にいたら
早く帰りたくなっちゃいますね。 - 佐藤
- だからいけないんですよね。
すぐに帰っちゃう。
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