第2回 ケンとはな。
- ──
- はなちゃんの前に佐藤家にいた犬、
ケンちゃんのことを教えてください。 - 佐藤
- ケンは私が21歳のときに
17歳で亡くなりました。
若い頃はすごく元気だったけど
最後は足腰も弱くなったし白内障もありました。
あ、これがケンの写真です。
もう年をとって、目が悪くなってるけど‥‥。
- ──
- 笑ってますね。
- 佐藤
- 笑ってます。
はなもケンも、写真を撮ると
いつも笑顔なんですよね。
ケンはあんなにやんちゃだったのに、
老犬になると「ちょこちょこ」という歩き方になって、
角っこにぶつかったりするようになってしまいました。
そのたびに「ああ‥‥(泣)」と
落ち込んでいたのですが、
だんだんとそれが
かわいく見えるようになってきたんです。 - ──
- 老犬は特有のかわいさがありますよね、
ピュアというか。 - 佐藤
- そうなんですそうなんです。
あばれんぼうだったケンが
静かに「ちょこん」としている姿を見て
なんだかいい子みたいだね、なんて
声をかけたりしていました。
そのうち、ケンが何かにぶつかりそうになると
先まわりしてヒョイッと
手を添えるのがうまくなって、
それがまたたのしくて、かわいくて、
介護するのもうれしかったです。
将来、親を看るときに役立つかもなぁ、
なんて思いながらすごしていました(笑)。
ケンがいなくなったのが、5年前で‥‥。 - ──
- はなちゃんがやってきたのが、3年前。
ということは、その2年間は。 - 佐藤
- つらい時期でした。
いや‥‥もう、つらかったです。
最初の1年は、公園のドッグランで
ワンちゃんを見かけただけでも
「うううう(泣)」となっていました。
でも、お散歩しているワンちゃんを
道ばたで見かけたり、
テレビでかわいいワンちゃんを見るうちに、
やっぱり犬はすてきだ! かわいい!
と再確認するようになりました。
でも、母はずっと
ケンがいなくなったさみしさを
もう味わいたくないと言っていました。 - ──
- そこから前向きになって、
栞里さんがはなちゃんを
家につれてきたんですか?
- 佐藤
- はい。
保護犬の集まる施設や
遠方のブリーダーさんのところに、
出会いがあるなら、と思って
長いこと通っていました。
ところが‥‥ぜんぜん意識してなかったけど、
さっき写真をごらんいただいてわかるとおり、
ケンはポメラニアンだったんです。 - ──
- あ、はなちゃんもポメラニアンですね。
- 佐藤
- どんな犬種でもたいてい、私は大好きなんです。
出会いがあればどなたでも!!
と思っていたのですが
「あ、これは『出会い』かもしれない」
と思ってしまう犬が
ぜんぶポメラニアンだったんです。
公園でも、保護犬の施設でも、
ブリーダーさんのところに行っても
ポメラニアンばかり見てしまう。
ポメラニアンのブリーダーさんのところに
行ったある日、
はなと会いました。
生まれた犬を見せてもらって、
なかでいちばんぶさいくな(笑)、
口の周りが黒くて
泥棒みたいな風貌をしていたのが
はなでした。 - ──
- でもいま、はなちゃんは
お口が黒くないですよね。
白くてフワフワで‥‥。 - 佐藤
- 黒い毛が抜けちゃったんです。
ほら、最初はこんなふうに。
- ──
- ‥‥たしかに、ちょっと泥棒ふうですね。
この顔もかわいいけど、人相がちがう。
仔犬時代のほうがおじさん調で、
いまはすっかり更生されて‥‥。 - 佐藤
- そう(笑)。
ほかの犬はもう、美少女ぞろいだったのですが
私はこの子にしか目がいかなかったんです。
もともとフレンチブルや狆などの
「ファニー顔」の犬が好きだったこともあって、
家に迎えるならぜったいにはなだと思いました。
そして、私が手をあげなければ
どこにも行けないかもしれない、
そうだったらどうしよう、という気持ちもありました。 - ──
- 栞里さん、さっきから気になってるんですが。
- 佐藤
- あ、なんでしょう?
- ──
- 5年前に亡くなったケンの写真、
そして、仔犬時代のはなちゃんの写真‥‥
スマホにぜんぶ入ってるんですか? - 佐藤
- そうです。
だから、あのぅ、番組とかで
携帯電話で写真を撮る企画があると
メモリがいっぱいすぎて使えないんです。 - ──
- 消さないんですか?
- 佐藤
- え‥‥消せません。
消せないですよ。 - ──
- パソコンとかに入れれば消せると思いますが。
- 佐藤
- やだやだ、消せませんよ。
写真はね、消せないです。
いつでもどこでも見たいので(笑)