糸井 |
昇太さんの仕事というのは、
どの程度自分でイニシアチブをとって
決められるんですか?
事務所とか、そういうものの
しばりはないんですか? |
昇太 |
いや、もうぜんぜんないですよ。 |
糸井 |
あ、大丈夫なんですか。 |
昇太 |
はい。いまある事務所は、ようするに、
ぼくがスケジュールとかを管理しきれないんで、
連絡事務所みたいな感じになっていて、
仕事はぜんぶ僕が決められるんです。
だから、こっからここまで休み、とか。 |
糸井 |
取れるんだ。 |
昇太 |
取れるんですよ。 |
糸井 |
とはいえ、毎日仕事してんでしょ? |
昇太 |
なんだかんだいって、そうですね(笑)。 |
糸井 |
ラジオが多いんですか? |
昇太 |
いや、そんなことないです。
ま、ラジオと、名古屋のテレビと、
レギュラーはそんなもんですね。 |
糸井 |
仕事の割合でいうと、
純粋に落語で高座に上がる仕事っていうのは
何パーセントくらいなんですか?
その、時間の配分でいうと。 |
昇太 |
んー、ま、そうですねぇ、やっぱり
60パーセントぐらいは落語ですね。 |
糸井 |
そうですか。でも、収入的には、
60パーセントまでいかない? |
昇太 |
いえ、収入のことでいうと、
まぁ、80くらいですね。 |
糸井 |
え? 80パーセントが落語? |
昇太 |
はい。 |
糸井 |
へえええ。ってことは、
落語で食えますよって、人に言えるんだね。 |
昇太 |
そうですね。落語のほうが、食べられますね。
ただ、それはやっぱり、
多少、テレビとかラジオとかに
出さしてもらってるんで
成立するんだと思いますが。 |
糸井 |
つまり、メインは落語なんだけど、
ラジオやテレビに、
ポスター貼り出してるみたいなことだ。 |
昇太 |
そうですね。 |
糸井 |
なるほどね。いや、でも、
健康的な状態なんじゃないですかね。 |
昇太 |
落語は、ま、うまく行き出すと、わりと、あの、
上手に食べられるような職業ではあるんですよ。 |
糸井 |
それは、いい話ですね(笑)。 |
昇太 |
ええ(笑)。 |
糸井 |
ふつうの人は、それを逆みたいに
思ってるんじゃないかな。たぶん。 |
昇太 |
あ〜。
|
糸井 |
落語だけではおそらく食えないと。
で、食えないから、テレビに出ちゃった、
みたいに、こう、見えちゃいますよね。 |
昇太 |
あー。また落語家ってね、その、
「貧乏です」みたいなことを
わざと言いますからね。 |
糸井 |
うんうん(笑)。 |
昇太 |
「お客さんが少ない」とかね(笑)。 |
糸井 |
「寄席に出るとギャラが人数割だから、
数百円のときがあった」とかね。
聞いちゃうと信じちゃいますよね。 |
昇太 |
ええ。 |
糸井 |
寄席に出ると報酬が頭割りっていうのは、
ほんとうなんですか? |
昇太 |
そうですね。 |
糸井 |
じゃあ、数百円はないけど、
そうとうなときもありえるんですか? |
昇太 |
うん、まあ、ありますね。 |
糸井 |
あ、そうですか。はぁ〜。 |
昇太 |
だから、寄席って昔は、数があったわけですよ。
落語家が200人ぐらいしかいないときに、
都内に200軒くらいの寄席があって、
ぐるぐる回ってたわけですよ。 |
糸井 |
それはいつの時代ですか? |
昇太 |
昭和の初期とか、そのぐらいの時代ですね。
落語ブームみたいなときもあったし。
ようするに、ほんとに、うなぎ屋の2階とか、
そういう小っちゃい寄席が、たっくさんあった。
それこそ、町内に一軒あるみたいな時代で。 |
糸井 |
風呂屋みたいなもんだね。 |
昇太 |
ええ。そうなるともう、
落語家はぐるぐる回ってたわけですよ。
だから、その一軒での収入が少なくても、
それをずっと回ればなんとかなる、
っていう時代だったらしいんですけど。
いまは、まあ、寄席の数が
そんなに多いわけじゃないですし、
落語家の人数はもっと増えてるんで。
だから、いまの寄席は、
ご飯を食べる場所じゃなくて、
ほんとにこう、修業の場みたいな、
道場みたいな感じなわけですよ。 |
糸井 |
稽古場なんですね。 |
昇太 |
ま、そうですね、
言葉はよくないですけど、そういう感じですね。
で、それとは別に、地方にある
市民会館とか文化会館でやる落語会があって、
収入はそっちのほうが大きくなるんです。 |
糸井 |
なるほどなるほど。 |
昇太 |
で、その、なんとか会館とかに行くためには、
多少テレビとかラジオ出てないと。 |
糸井 |
そうですね。 |
昇太 |
呼んでくれないじゃないですか。
だから、まあ、収入の比率的には
落語のほうが多いんですけど、
やっぱりテレビとかラジオも
出なくちゃならないんです。 |
糸井 |
ああ、ああ、ああ。
好きな落語で食っていくために、
そういうふうに組み立てていったんですね。 |
昇太 |
ええ。 |
糸井 |
そっか。全国が広いっていうことで、
うまくいくんだね。 |
昇太 |
そうですね。市町村が多いってことですね。
だから、あの、市町村には、
合併してほしくないんですよ(笑)。 |
糸井 |
(笑)
|
(続きます!)