糸井 |
どうして、最後のページを宮崎(駿)さんに?
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堤 |
ぼくもジェラルドも
アニメーションのイラストレーターなので。
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糸井 |
つまり、単純に「憧れの存在」であると。
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堤 |
「宮崎駿監督の作品で
このスケッチブックの最後のページを
飾ることができたら」
という気持ちは
二人とも、最初から持っていましたから。
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糸井 |
でも、当時は、まったくの夢物語でしょ?
だって「遊び」ではじめたくらいですから。
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堤 |
そうなんです。
なんですが、4年半の時間が経過する間に
ぼく自身、スタジオジブリとの企画を
やるようになってきて‥‥。
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糸井 |
そういうもんなんだねぇ。
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堤 |
本当に、不思議です。
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糸井 |
実際、4年半前には‥‥。
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堤 |
お会いしてもいませんでしたし、
100パーセント、ありえない話でした。
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糸井 |
宮崎さんとジョン・ラセターさん
(ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオと
ピクサーの
チーフ・クリエイティブ・オフィサー)の間では、
つながりはあったんでしょうけど。
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堤 |
ぼくがピクサーではたらきはじめたのって、
3年前なんです。
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糸井 |
そうか、じゃあ、
「スケッチトラベル」をはじめたころには‥‥。
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堤 |
別の会社ではたらいていましたから、
ジブリとのつながりなんて
本当に、まったく、なかったんです。
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糸井 |
はー‥‥。
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Jerome Opena |
堤 |
それと、もうひとつ‥‥。
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糸井 |
はい。
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堤 |
ぼくの妻、「メイ」なんですよ。
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糸井 |
はい?
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堤 |
いや、ぼくの妻、宮崎駿監督の姪っ子で、
『となりのトトロ』の
メイちゃんのモデルになった人なんです。
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糸井 |
え、それは、偶然?
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堤 |
ぼくと彼女、小学校がいっしょだったんです。
でも、そのときは
彼女が宮崎駿監督の姪っ子だってことは
もちろん知ってたんですけど、
ぼくたちは、
15歳から18年間、会ってなかったんです。
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糸井 |
ええ‥‥うん。それで?
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堤 |
ぼくは、高校を卒業して
アニメーションの世界へ入っていったんですが、
そうするともう、
宮崎監督の大ファンになるわけです。
でももう、そのときには
姪のメイちゃんとは全然つながりなんかなくて。
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糸井 |
うん、うん。
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堤 |
だから、メイちゃんのおかげで‥‥
つまり妻のおかげで
宮崎監督に近づけたというわけでもなくて。
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糸井 |
時系列的には‥‥そうなるのか。
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堤 |
彼女と偶然再会したのが3年前なんですけど、
すでにぼくはピクサーでしたし、
「トトロの森プロジェクト」のことで、
ジブリのかたと
はじめて、ごいっしょさせていただいたのも、
彼女と再会する前なんです。
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糸井 |
‥‥どうして結婚することになったの?
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堤 |
小学校1年生のときの、初恋の人なんです。
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糸井 |
メイちゃんが? うわー‥‥。
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堤 |
だから、初恋の人のことを
聞かれたときには
「サツキとメイの、メイだよ」って
答えていたんです。
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糸井 |
意外な方向に、おもしろくなってきた(笑)。
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堤 |
で、さきほども言いましたように
3年くらい前、
彼女と偶然、再会することになったんです。
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糸井 |
それは、どういう偶然で?
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堤 |
さっき話に出た「トトロの森プロジェクト」の
オークションをやりたいと思って、
スタジオジブリに許可をいただくために、
2007年に、日本に帰ってきたんですね。
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糸井 |
‥‥つい最近ですね。
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Sebastien et Marie Kerascet |
堤 |
ぼくは、その前にいちど
宮崎監督にお会いしたことがあったんです。
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糸井 |
はい。
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堤 |
で、そのときに
「ぼく、あなたの姪っ子のメイちゃんが
初恋の人だったんです」
‥‥ということを伝えたかったんですが、
緊張して、何にも言えなくて。
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糸井 |
それは‥‥そうでしょうね。
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堤 |
そのあと何年も後悔してたんですけど、
2007年、
2回目にお会いしたときに
「監督、じつはぼく、メイちゃんと幼なじみで、
彼女が初恋なんです」
と告白したら、とてもびっくりしてまして。
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糸井 |
それも‥‥そうでしょう。
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堤 |
‥‥で、びっくりしつつも
「変わった子だから
話まとまらなくてよかったね」とか言われて。
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糸井 |
あはははは(笑)。
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堤 |
‥‥なーんて言ってた次の日なんですよ、
妻と再会したのが。
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糸井 |
ええーっ!
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堤 |
日本に久しぶりに帰ってたものだから、
幼なじみの友だちと
飲みに行くことになっていたんですが、
そのうちのひとりが
彼女に連絡を取ってくれてたんです。
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糸井 |
はー‥‥。
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堤 |
そこで18年ぶりに、再会しました。
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糸井 |
ははー‥‥。
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堤 |
「昨日、叔父さんに会ってきたんだけども、
話がまとまらなくて
よかったねって言われたよ」って言って。
それが18年ぶりの再会でした。
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糸井 |
‥‥もう、涙が出そう(笑)。
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堤 |
ははははは(笑)。
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糸井 |
だって、本当の話だものねぇ‥‥。
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堤 |
はい。
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糸井 |
で、結婚したんだ?
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堤 |
なんかもう、展開めちゃくちゃですね(笑)。
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糸井 |
いやぁ、
オレもそういう人生を生きてみたいわ。
すばらしいですよ!
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Daniel Lopez Munoz |
堤 |
当然、結婚式には
宮崎駿監督がいらっしゃるわけですけど。
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糸井 |
あの、あこがれの人が。
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堤 |
信じられませんでした、その状況が。
アニメーションの仕事をしていたら、
神様のような存在ですから。
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糸井 |
いつの話なんですか、その、結婚式は?
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堤 |
2009年の10月です。
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糸井 |
つくり話みたい‥‥。
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堤 |
ニューヨークで脚本家やってる友だちに話したら
「それ、
出来すぎてて映画にできない」って(笑)。
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糸井 |
そうだろうなぁ‥‥で、いま、仲良しですか?
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堤 |
そうですね。まぁ、けっこう仲良くやってます。
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糸井 |
それはもう、何よりですね。
アメリカにいらっしゃるの、いっしょに?
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堤 |
はい。
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糸井 |
生まれ育ってない国にいるっていうのは
なにかと不自由も多いから。
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堤 |
そうですね。
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糸井 |
おたがいに頼りにし合うし、
逆に、悪口を言えたり愚痴を言えたりする
唯一の相手だから、
ケンカにもなりがちだろうし‥‥。
ともかく、すごい「濃く」なりますよね。
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堤 |
はい。でも、彼女、本物の‥‥というか、
『トトロ』のメイちゃんに
本当にそっくりなんです、性格が。
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糸井 |
モデルになっただけあって。
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堤 |
のんびり屋さんで、自分の世界がある人で‥‥。
ぼくはぼくで
休みのたびごとに本業とは関係ないことで
旅に出たり、
アーティストにスケッチブックを届けに行ったり、
そんなことばかりしてるので、
あんまりケンカもせず、仲良くやってます。
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糸井 |
いやぁ、ものすごい話を聞いたなぁ。
オレ、いま、本当に驚いてますもん。
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堤 |
すみません、なんだか(笑)。
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糸井 |
偶然とかめぐり合わせの要素も多いといえ、
「スケッチトラベル」の話は
「計画」とか「プラン」を立てられるタイプの、
つまり
「本当に心から意志を持って取り組めば
願いは実現するんです」
というたぐいの話に似てきますけど、
奥さんとのエピソードは
もっとこう‥‥「神の存在」すら感じるもの。
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堤 |
なんで、こんな話になったんでしたっけ?(笑)
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糸井 |
いや‥‥でも、その奥さんとのお話は
スケッチトラベルの話に
ものすごく「何か」を「乗せ」ますね。
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堤 |
そうで‥‥しょうか。
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糸井 |
だってもう、
今日は、この話だけでいいくらいだもん。
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堤 |
あの‥‥だめです(笑)。 |
MIchael Knapp |
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<つづきます> |