そもそもの始まりは2003年12月、
いまから6年余前にさかのぼります。
当時、東京の放送会社6社が、
600m級の新タワーを求めて
「在京6社新タワー推進プロジェクト」
を発足させました。
その6社とは、
日本放送協会=NHK、
日本テレビ放送網=日テレ
東京放送=TBS、
フジテレビジョン、
テレビ朝日、
テレビ東京、です。
うーん、そうそうたるメンバーですね。
これら、NHKと在京民放5社は、
かねてから新タワーの必要性と
その是非を検討していたのですが、
デジタル放送全般の幅広い普及と、
ワンセグなどデジタル放送特有の機能の
有効活用を図るためには
600m級のタワーの有効性は高い、
という共通認識に至りました。
そこで、放送事業者だけでなく、
誘致提案者や団体と連携して、
新タワーを推進させよう、
というプロジェクトが発足したのです。
そこから様々な経緯を経て、
東京スカイツリーを建設している現在に至っています。
つまりは、東京スカイツリーの
第一の役割は電波塔なんです。
一方で、地上波デジタル放送は
今現在すでに放送されていますから、
不思議に思われる方がいらっしゃるかもしれません。
そのあたりを補足しましょう。
関東地方の地上デジタル放送は、
先のプロジェクト発足と同じく
2003年12月より放送が開始されています。
ですが、当時から都心部には
200mを超える超高層ビルが林立していて、
そうしたビルの陰では電波が届きにくくなる
という影響が生じかねませんでした。
そこで、そうした影響を受けにくい、
より高いところからの電波送信が検討され、
具体的には600m級のタワーからの
送信が望まれたのです。
「在京6社新タワー推進プロジェクト」においてすでに
「600m級」という、
どんなタワーかを示す言葉が入っているのは
そうした経緯によるものです。
また、携帯端末向けデジタル放送サービスの
「ワンセグ」のエリア拡大や、
災害時等の防災機能のタワーとしての
役割も期待されています。
上下水道や電気、道路や橋梁、病院や公園など、
経済や生活環境のベースとなる
施設や設備のことを「インフラストラクチャー」、
略称・インフラといいますが、
東京スカイツリーも、
次代のインフラ的な性格を帯びたものだと思います。
「インフラ的な性格」をもっといいかえると、
多くの人びとが関係をつなぐ、
パブリックな性格といえるかもしれません。
そして、建築とは、
ほとんどの場合はだれもが
その存在を外から目にすることができ、
おのずと公(おおやけ)になることから、
本来パブリックな性格をもっています。
パブリックな性格をもつことの意味を
チャーチル元英国首相は
「私たちが建物をつくるが、
その後は、建物が私たちをかたちづくる」
という言葉で残しているように、
実は、建築や街によって、
私たち自身が大きな影響をうけているのです。
たとえば、
生まれ育った家の記憶。上京して初めて目にした街の印象。
普段意識することがなくても
建築や街から何らかの影響をうけていそうなことって
こころあたりがあるのではないでしょうか。
役割としても、存在としても
東京スカイツリーはパブリックな性格をもっています。
みんなの東京スカイツリーがどのように成長していくのか、
設計を担当したわれわれも楽しみでなりません。 |