乗組員やえの疑問

どうしてコンクリートじゃなくて、
鉄骨造なの?

スカイツリーおじさんの解説

前回まで、心柱制振という、
コムズカシイ話を続けてしまいましたが、
そもそも、なぜ鉄骨造にしたのでしょう?

建物の構造種類には、木造、コンクリート造、鉄骨造
などがあり、以前にお話ししたように、
海外のタワーではコンクリート造のものが多いです。

コンクリート造にした場合、
強度上、大きな開口部を設けることができずに、
住宅地が広がる東京スカイツリーの敷地では
近隣に対して圧迫感のあるものになってしまいます。
また、コンクリート造では、
クラックと呼ぶヒビがどうしても入ってしまいますし、
雷を受けた場合は、その部分が破損してしまいます。
そして何よりも、自重が重くなります。
地震力は自重に比例した力(慣性力)なんです。
そのうえ、スカイツリーは非常にスレンダーな
プロポーションのため、
倒れようとするときには大きな力がかかるので
できるだけ自重を軽くしておきたかったという
理由があります。

一方の鉄骨では、
足元を含めて開放的なつくりにすることができますし、
ヒビが入ったり欠けたりすることはありません。
もちろん、コンクリートでつくるよりも
自重を軽くすることができます。

そこで、塔体部分は鉄骨造にしたのです。
ですが、心柱はコンクリート造にしています。
これは、
心柱制振における「おもり」として、
また、非常階段室として必要な耐火性能を求めたこと、
心柱は内側部分であるために
周辺環境との調和や見た目を考慮しなくてもよいこと、
スリップフォーム工法という
高層煙突などをつくるときに用いられる施工法
(シャーペンの芯を出していくように
 連続してコンクリートを打っていく施工法)
を採用すれば、
経済性や、施工のしやすさ・早さが可能になることから
コンクリート造にしたものです。

つまり、東京スカイツリーは、
鉄骨造とコンクリート造のハイブリッドでも
あるというわけです。

構造の種類をどうするかというのは、
設計のかなり初期段階の検討でスムーズに決まりました。
同じような理由で、
日建設計がこれまでに手がけた9棟のタワーも
すべて鉄骨造になっています。
これは、もともと日本の建築は木造の文化であり、
細長い材を組み合わせていく鉄骨造の方が
馴染みやすかったせいかもしれません。
また、日建設計は戦後には大スパン鉄骨造の工場を
たくさん手がけていて、そこで培った技術を元に
その後のタワーや超高層ビルを設計してきました。
そうした技術の系譜の中に、それぞれのタワーや
東京スカイツリーの設計があるためかもしれません。

ところで、東京スカイツリーが
もしも木造だったら?
あるいは、プラスチック製だったり、
ガラス製、ゴム製だったらどうなっていたでしょう?
見た目もちがう形になるでしょうし、
ちがう特長が生まれてくるでしょう。
ちょっとわくわくした気持ちになりません?

現実的な問題はさておき、
あれこれ想像してみるのって楽しいですよね。
設計者も案外と、気ままな想像をしているものです。
そうしたイメージから技術は進化するのですから。

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2011-03-07-MON