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| スナック芸大全 |
これは危険ですぜ。一か八か、男ならやってみな、 一世一代の大勝負ですぜ。 失敗したら、ハリテが飛びますしねぇ。 成功しても、周囲の目がジワーッと冷たくなってくる。 しかし、やってやれないことはないし、 やるだけの価値はありそうだ。 さまざまな「スナック芸」を、さんざんやった後で、 「あ、そうだっ！清らかなくちづけって知ってる？」 と、思い出したように言います。 たぶん「知らない」と言われるか、 「なんか、また怪しいわね−」 なんて答えがかえってきます。 「これは名作だよ。《天国と地獄》より スゴイかもしれない」と、世論操作を開始します。 「誰にしたらいいかなぁ」と、まるで「してあげる」 という態度で、相手を選びます。 「あ、キミでいいや」と、指名します。 「じゃ、清らかなくちづけ、いくよ。 これは、怖くも痛くもないから、安心してていいよ。 ちょつと目をつぶって・・・そうそう」 周囲の目は、期待感に輝いています。 いろんなスナック芸」の後ですから、 「また何か、ある」と思ってるわけです。 で、あなたは、指名した相手に近づき、 一瞬のうちに、くちびるにキスをします。 清らかさが、微かにでも残っていなければ 「イヤラシイくちづけ」になってしまうのです。 そう、実は、これは「芸」でもなんでもない。 ただ単に、キスをしただけなのであります。 したがって、あなたは嘘をついたことになり、 みんなからナジられます。 「ちっとも『スナック芸』じやないじやない！」 相手の言い分のほうが、理にかなってる。 悪いのはオマエだ、このやろー。 しかし、天は罪人を見捨てたりはしません。 追いつめられたあなたは、本書のこのページを開いて、 陪審人たちに見せるのです。 「だって、ホラ、ここに書いてあったから・・・」 と、しおらしい声で許しを乞うのです。 許してあげてよ、皆さま方。 許してあげてよ、皆さま方。 これで一件落着するかどうかについては、 保証のかぎりではありません。人徳の問題です。 
イラストレーション：夏目房之介 |
2001-01-07-SUN
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