第104芸
灰皿パーティー(礼節と信頼) |
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煙草を吸う時、誰かにマッチをつけてもらうのと、
煙草を吸っていて灰皿が見あたらない時、
サッと灰皿が差し出されるのと、
どっちがうれしいかといったら、
そりゃもう灰皿のほうに決まってる。
ドーしてかといえは、マッチをつけてくれるのは、
みんながやってるからじゃないかと思うのです。
これがもし、あなたが煙草を吸っている間中、
ずっと手に灰皿を持っていてくれる人がいたら、
どうでしょう。
たぶん、なんだか申し訳なくて、
そのくせ好都合で、変に偉くなったような気分で
……といった複雑な心理状態になるでしょう。
「灰皿パーティー」に最も相応しいのは、
立食スタイルのパーティー会場です。
喫煙者は、各自、てのひらに灰皿を乗せ、
どんな人が来ても灰を落とせるようにしておきます。
自分が煙草を吸う時も、
決して自分の灰皿を使ってはいけません。
必ず他人の灰皿を使うのです。
灰皿を提供している人は、どんなに不便でも、
責任を持って、相手の灰を管理します。
手が疲れるくらいは当然ガマンしてください。
実際にやってみないと、
なかなかわからないはずですが、
「たかが煙草の灰」を優しく見まもる人がいる、
ということが、
あなたを、とてもリッチな気分にさせてくれるはずです。
灰皿に灰を落とす時、
煙草を相手の持っている灰皿でもみ消す時、
どちらもイイものです。
しかし、なんといっても素暗しいのは、
吸いかけの煙草を置きざりにする時でしょう。
よく、吸いかけの煙草を、灰皿にちょっと置いたまま、
コーヒーを飲んだりするでしょう。
あれと同じことを、やるわけですね。
「あ、山田君が呼んでる」などと言って、
吸いかけを相手の灰皿に預け(ゆだねる感じ)
再び戻ってくると、何くわぬ顔して
「灰皿人間」が待っている。これはスゴイ。
この遊びは、互いに誠を尽くし、
「思いやり」をもってやるところに面白さがあるので、
自分の灰皿も積極的に他の人に使わせてあげないと
楽しくありません。
「灰皿パーティー」が別名「礼節と信頼」と
名付けられているのは、ダテじやないのであります。
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