―― | 青木さんは、キギの植原亮輔さんとも 仲良しなんですよね。 |
青木 | 知り合ったのは植原くんのほうが先です。 |
―― | おふたりを見ていて、どうですか? |
青木 | ルーシー・リーとハンス・コパーみたい。 陶芸家の。 |
―― | わ‥‥まったく同じことを 先日、関直子さんがおっしゃってました。 「SANAA、ルーシー・リーとハンス・コパー、 そしてキギが、 わたしの3大最強ユニットです」って。 |
青木 | ほんとそんなふうに思ってました。 会うべくして会った 素晴らしいコンビだなあって。 関直子さんも最強なので、 類は友を呼ぶってやつですね(笑)。 |
―― | ちなみになんですが、 良重さんの「プロフィール」を見ていて 「山口大学教育学部卒業」 というのに、興味をそそられませんか? |
青木 | ああ、たしかに。 もともと中学の先生になりたかったらしいですね。 手に職つけたかったという理由で。 |
―― | どんなにすごい美大のご卒業かと思いきや、 地方の国立大の教育学部で、 何かを専門的にというわけでなく 彫刻、陶芸、版画、油絵‥‥を ひととおりやったら卒業、みたいな感じだったと。 で、教育実習のときに「教師は無理だ」と思ったって。 |
青木 | へえ。 |
―― | 授業で生徒さんに絵を描かせているときに 「この時間がもったいない。 自分で描きたい、自分でつくりたい」と‥‥。 |
青木 | そのころから「回遊魚」だったんだ。 宮田識(さとる)さんのドラフトに参加する前も いくつか別のデザイン会社にいたんですよね。 |
―― | たしか1社目は「クビ」になり、 2社目は「ヒマ」になって‥‥というような話を お聞きしたことがあります。 |
青木 | 今の輝き方からは、 ちょっと想像がつかないですけどね。 |
―― | ドラフトに入ったのも「引き抜き」とかじゃなく 2社目がヒマになっちゃったんで たまたま目にしたポスターが気になって、 それをつくったデザイン会社に手紙を書いたら ドラフトだったって言ってました。 宮田識さんのことも、ぜんぜん知らずに。 |
青木 | おもしろいですよね。 |
―― | 有名美大を出て、大手の代理店に就職して‥‥ みたいな デザイン界のエリートコースからは ぜんぜんちがう歩み方をしてきてますものね。 |
青木 | キャリア自体、型にはまってないんですよね。 |
―― | あと、おもしろいなと思った話では 「キギの展覧会2次会で 好きな サザンオールスターズの曲をかけようとして 少し雰囲気が‥‥と言われた」と。 |
青木 | 本人、サザンやミスチルも 好きですからね。 |
―― | キギの作品世界に照らしたら、 イメージとしては、クラシックとか、 フランスのちょっと暗めの曲とか、 少なくとも「洋楽」という気がするんですが‥‥。 明るい日本のポップスをかけちゃう。 |
青木 | そのへん「国宝級」ですよね。 |
―― | ご本人は「合わない」と指摘されたとき、 内心「えぇーっ?」と思ったそうです。 |
青木 | はい。国宝級!(笑) |
―― | そのあたりも 「すごいアートディレクターさんを 目の前にしてる感じ」とは ちょっとちがうなーと、思うところですよね。 いや、すごいアートディレクターなんですが、 気さくで、話しやすいという意味で。 |
青木 | ちなみに、植原くん(植原亮輔さん・キギ)も 「サザン・ミスチル・ジャイアンツ」ですよ。 |
―― | え、じゃあ、ふたりして‥‥。 |
青木 | ‥‥あの、今日って「ファッションの話」を しなきゃいけないんじゃありませんでした? |
―― | あ、はい、ではお願いします(笑)。 |
青木 | じゃ、強引にCACUMAの話にしますけど(笑)、 思うのは、なんでブランド名を 「良重ズ・クローゼット」にしなかったのかなと。 |
↑cacuma2013秋冬
「ウールのジャケット」「プリントのスカート」「ジャンパースカート」
―― | そんな、ストレートな(笑)。 |
青木 | いや、CACUMAというブランド名も 大好きなおじいさんの名前からということで すごく素敵なんだけど、 それにしたって、お洋服を見たら 「良重さんちの洋服ダンス」じゃないですか。 |
―― | 植原さんも、同じことを言ってました。 |
青木 | もう、お洋服に「顔」がついてきますよね。 良重さんの顔が、ポワ~ンと。 |
―― | 青木さんも ご自身のブランドをやってらっしゃいますね。 |
青木 | 良重さんのお洋服って 「オーソドックス」を基本にしつつ、 そこに 派手じゃないけど素敵なアイディアを載せてる。 わたしのつくっているものとは 方向性的に「真逆」だと思うんですけど でも、怖いくらいに洋服がかぶることがあって。 |
―― | 良重さんの服と、青木さんの服が? |
青木 | ぜんぜん量販店のものじゃなくて むしろ、マニアックなブランドの洋服なのに 同じものを着ていたりするんです。 |
―― | へぇー‥‥。 |
青木 | それは「地球が丸いから」かもしれない。 |
―― | ひとまわりして出会ってる、と(笑)。 |
青木 | 「お、今日はかぶってないな」と思っても 「靴下」が地味にかぶってたりして。 |
―― | 良重さんが 洋服のブランドを始めたとお聞きになって、 どう思われましたか? |
青木 | まずは、びっくりしましたよね。 それも「ほぼ日」さんとやるってところが イメージになかったんで、意外で。 |
―― | あ、そうですか。 |
青木 | でも、できあがった洋服を拝見したら 「あ、やっぱり良重さんだ」と思いました。 |
―― | なるほど。 |
青木 | 作品のクオリティというか、 そこの部分は、いい意味でイメージどおり。 自分の好きな洋服をつくってるんだろうし、 楽しんでやってるんだろうなって。 |
―― | 良重さん、本当に毎日といっていいほど、 春夏のCACUMAを着倒していて 秋冬へ向け、いろいろ研究されたみたいです。 |
青木 | だったら、どんどん良くなっていきますね。 これからも、やるたびに。 |
―― | そう思います。 |
青木 | 良重さんファンとしては楽しみ。 やっていくうちに 変わっていくかもしれないことも含めて これからも見ていたいなと思います。 |
↑cacuma2013秋冬で使用する渡邉さんのイラストのひとつ
<おわります> |
2013-11-05-TUE |