ちょっと浅めにつくられた碗です。
「持って頂くお碗というよりも
テーブルに置いたままで
大きな具材を頂くという事を想定しています」
と道歩さん。
おつゆが少なめの鍋のときにべんりです。
そして具材を食べ終わったあとに、
両手で持ち、おつゆを頂くことを想定して、
高台(うつわの底)は低めにつくられています。
鎬(しのぎ)は、うつわをつくってまだ乾かないうちに
へらで削って縞模様をつくる技法。
とても手間のかかる仕事です。
色ですが、黒い「アメ釉」は土鍋のアメ釉とは
すこしだけ、異なります。
それは道歩さんが、変化にとんだ
「アメ釉」を作ってみようと考え、
従来の土楽のアメ釉ではなく、
自分で新たに作り出した色を使っているからです。
「色の濃淡やムラ感が、うつわの凹凸に変化をもたらして
1枚1枚違った表情が生まれ、そこがいいなと思ってます」
そして「灰釉」は、土楽で以前つくっていた
うつわの色の感じに戻すことを考えました。
すこしだけ茶色がかった、渋めの緑です。
「この『灰釉』の調合がとても難しい仕事でした。
いまは昔と同じ材料が手に入りませんし、
同じところで採れる材料でも、
昔と今とでは採る地層が変わることで、色が変わります。
また、使う粘土との相性もあります。
ずいぶんと試行錯誤をして、
やっと表現できた色なんです」
中の「みこみ」を深くすることで、
料理がまんなかにあつまるようなかたちです。
大きな具材をのせたときでも、
ぎゅっとまんなかにまとまることで、
うつくしい盛りつけができます。
しっかりおつゆがあり、具材とおつゆを
熱いまま口に運ぶような種類の鍋には、
この取碗をお使いいただけたらと思います。
手に持つことを想定していますので、
高台がやや高めになっています。
「大きさは、他のお皿を邪魔しないサイズを考えました。
食卓には土鍋があって、
豆皿を置いたりおそうざいのどんぶりがあったり、
そしてご飯茶碗、グラス、湯呑みなどがありますよね。
そういう中に入って、でしゃばらない大きさです」
道歩さんご自身の小さな手でも、
男性の大きな手でもしっくりなじむように
バランスを考えています。
「碗を手に取って食べる場合は、
高台(底の部分)に左手親指以外の4本の指を添え、
縁に親指を添えて頂く形になりますよね。
この親指と他4本の指で持つ空間に、
あるていど小柄なかたでもきれいに入るように
大きさを決めています」