山下・稲村・清水
三橋さん、きょうはどうぞ、よろしくお願いいたします。
三橋
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
山下
こどものころは「おやすみなさい」と、ふとんに入って、
次に目がさめたら朝だったことってありましたよね?
清水
ありました。よく眠ってすっきり目覚めてました。
山下
大人になってから、あの感覚がないんですよ。
じまんじゃないけど、ねむれない歴は長いです。
学生のころから夜ふかししてて、
30代になると、寝つけないし眠りが浅くなりました。
いやな夢を見たり、寝言もひどくて。
三橋
なるほど、かなり本格的ですね。
山下
そのかわり昼間は眠くて、電車やタクシーでの移動中とか、
会社でもたまに居眠りしちゃう‥‥。
清水
あれ? たまに?
稲村
(きっぱりと)よく事務所で寝ているお姿を拝見します。
山下
すみません、申告がひかえめでした(笑)。
それなのに、自宅のふとんでだけ、
うまく眠れないんですよ。
三橋
不眠のわりと典型的なパターンです。
脳が「ふとん=眠れない場所」と認識していて、
ふとんに入ると、また眠れないのでは‥‥と
緊張しちゃって、よけいに眠れない。
山下
つまり、ぼくは不眠症なんでしょうか?
三橋
山下さんは、日中の生活に大きな支障がありますか?
山下
いえ、そこまでは。
三橋
ですよね。
だとしたら、山下さんの場合は「不眠症状」です。
三橋
「不眠症」と「不眠症状」はちがうんです。
不眠症状というのは、寝つきがわるい、
夜中に何度も目がさめて眠りが浅い、
朝早く目ざめすぎてそのあと眠れない、
朝起きたときに熟睡感がない、といった状態のことで、
成人の約3割にみられます。
清水
あ、そんなにいるんですか。
三橋
はい、いっぽう、不眠症というのは病気です。
不眠症状があって、
なおかつ日中の生活に深刻な支障がある場合に、
病気として専門医による治療が必要になってくるんです。
稲村
眠れないからといって、不眠症とはかぎらないんですね。
三橋
不眠症と診断される人は、
不眠症状がある人のうち3分の1くらいです。
日中に職場や学校で困っていなければ、
寝る時間や起きる時間の習慣を変えたり、
寝る前のリラクゼーションを取り入れたりしていけば、
改善することができます。
山下
「不眠症かも」と思うとよけいに眠れなくなりそうだし、
心配しすぎないほうがいいですね。
三橋
そう、勝手に深刻にならないほうがいいです。
三橋
日中に眠気におそわれて寝てしまうということは、
山下さんは睡眠のリズムが乱れている気がします。
山下
それは、どういうことでしょう?
三橋
極端な夜型だったり、
寝る時間と起きる時間が日によってちがっていたり、
平日と休日で睡眠時間に大きな差があると、
身体が時差ボケ状態になっちゃうんです。
時差ボケになると、身体がだるくて、やる気が出なくて、
胃腸の調子が悪くて、昼間眠くて夜眠れないですよね。
山下
たしかに夜型で、寝入りの時間と朝起きる時間が、
日によってばらばらです‥‥。
稲村
私も夜型で、深夜2時、3時まで起きています。
平日は7時半に起きますが、
休日は昼くらいまで寝てしまう日があります。
三橋
山下さんも稲村さんも、かなりの強者ですね(笑)。
山下
クラスに何人かいる不良グループですよ。
眠りの不良(笑)。
三橋
寝ても疲れがとれないんじゃないですか。
山下
まさにそうです。
三橋
「いい眠り」のためには、睡眠時間もですが、
実はリズムがだいじなんです。
清水
リズム‥‥?
三橋
体中に体内時計がたくさんあるとイメージしてください。
脳に親時計があって、全身に子時計があります。
親時計と子時計のリズムをそろえるためには、
規則的な睡眠をとることがだいじです。
メトロノームがたくさんあるとして、
同じリズムでカッチ、カッチと鳴っているのが、
体内時計がそろっている状態です。
稲村
それが、いい状態なんですね。
三橋
ところが、日によって、
寝たり起きたりする時間に大きな差があると、
体内時計のリズムがバラバラになってしまい、
ホルモン分泌や体温調節機能が乱れてしまうんです。
山下
身体のいろんなところで、
時計やメトロノームがバラバラに動いているって、
なんだかおそろしい(笑)。
三橋
睡眠のリズムを気にしていない人が多いんですけど、
想像以上に日中の体調に影響します。
山下さんと稲村さんには、
体内時計のリズムを整えることを心がけてみてほしいです。
山下
具体的にはどうすればいいでしょう?
三橋
いちばんだいじなのは、朝起きる時間を決めることです。
決めたら、休日もとりあえずその時間に起きる。
稲村
わあ、休日も。
起きる時間を決めたほうがいいのはなぜですか?
三橋
体内時計がリセットされるのが朝だからです。
決まった時間に起きて、太陽光を浴びて、
朝食をとる流れで体内時計は調整されます。
朝寝坊をすると、光を浴びるのが遅くなってしまって、
そこから1日がスタートするので
体内時計が後ろにズレてしまいます。
眠くても、とりあえず朝、起きることがだいじなんです。
山下
つぎの日の仕事の予定に合わせるので、
ぼくは起きる時間がばらばらなんですが‥‥。
三橋
ばらばらなりに、何時くらいが多いですか?
山下
9時半くらいかな。
そこから逆算して、寝る時間を決めてます。
三橋
寝る時間もだいじですが、優先順位は起きる時間です。
どうでしょう、9時に起きるって決めませんか?
山下
おっ、いま決めちゃうんですか?
わかりました。やってみます。
ぼくは6時間眠れればだいじょうぶなので、
寝るのは夜3時ごろでもいいですか?
三橋
はい、3時に寝て、9時に起きることを目標にしましょう。
稲村
私は平日は7時半くらいです。
休日は昼12時のこともあるけど10時くらいが多いです。
三橋
平日と休日で2時間半の差は、ちょっと大きいですね。
できれば休日も7時半に起きるのがいいんですけど、
まずは8時半起床を目指しましょうか。
稲村
平日と休日の差を1時間におさえるわけですね。
三橋
休日も8時半に起きて、太陽の光を浴びて、朝食をとって
シャキッとすると体内時計がリセットされます。
そのあと眠かったら寝てもいいですよ。
朝いったん起きることがだいじなんです。
稲村
それなら、ちょっと気がらくです。
清水
お話をうかがっていると、
朝に太陽の光を浴びるのが重要な気がしました。
三橋
ええ、よく晴れた朝、窓際で1分くらい陽の光に当たれば、
(体内時計の)親時計がリセットされます。
山下
へえ、1分でいいんだ!
三橋
ほんとうは、午前中にトータル30分くらい、
太陽光を浴びられたら理想的です。
そうすると、脳内でセロトニンという、
気分を明るくしたり、やる気を高める
神経伝達物質がつくられます。
そして、夜暗くなるとセロトニンは、
メラトニンという睡眠ホルモンに変わります。
朝、太陽の光をじゅうぶんに浴びることは、
昼間の元気の素であり、夜の熟睡の素なんです。
清水
そっか、夜寝るほうにも効くんですね。
三橋
30分間、日光浴だけしている必要はなくて、
ベランダや窓際で朝食をとったり、
なんならスマホを見ていてもかまいません。
もしくは散歩したり、通勤で歩くのもおすすめです。
山下さん、よければ朝のお散歩はいかがですか?
山下
やってみたほうがいいですよね。
三橋
コロナ禍で不眠の人が増えているのですが、
それは、ステイホームによる日光浴不足で、
睡眠ホルモンが十分につくられないことも関係しています。
お散歩、いいと思いますよ。
山下
実は、そういう気持ちもあって、
2カ月くらい前にランニングシューズを買ったんです。
まだ下ろしてないんですけど(笑)。
三橋
いいじゃないですか。
山下
散歩、やってみたいと思います。
眠りの不良なりに、更生に努めたいです(笑)。
眠りのなやみ、
おしえてください。
日ごろ、眠りについて気になっていること、
疑問に思っていること、困っていることはありませんか?
ささいなことでもかまいませんので、ぜひ教えてください。
「ねむくま」編輯部と、顧問の三橋美穂さんが、
いっしょに調べて回答します。
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