ほぼ日の「おちつけ」インタビュー 子どもにとっていちばんの味方であるために、おちつけ。田中茂樹
子どもと暮らしていると、
不安になったり、悩んだり、焦ったり、
ときにはカッとなってしまうこともあります。
そんなとき、自分に言い聞かせたい
「おちつけ」のことば。

子育ての悩みに20年以上寄り添い続けてきた
医師・臨床心理士の田中茂樹先生に、
親と子がずっといい関係でいるための
「おちつけ」のお話を聞いてみました。
お子さんの受験や就職活動などで、
そわそわしている方に届きますように。
(1)余計なことを言いそうな自分に。
──
「おちつけ」ということばが、
子育ての中でどう活かせるのかを
今日は教えていただきたいです。
取材前にお送りした「おちつけ」の掛け軸を、
田中先生は職場で飾ってくださっているんですよね。
田中
「おちつけ」の掛け軸、ありがとうございました。
診察室のね、自分から見える位置に飾ってますよ。
シャーカステンってわかりますかね、
レントゲンフィルムをガチャって掛けるものです。
デジタルになってからはモニターに出るので
シャーカステンは使わなくなったのですが、
それを外さずに残してあるんですよね。
その陰に、自分からは見えるけれど、
患者さんからは見えないところに掛けています。
──
ありがとうございます。
先生が見るものとして
掛けてくださってるんですね。
田中
そうそう。
癒されるなっていう感じはありますね。
掛け軸の紐をほどくのさえ焦ったりして、
「あれ? なんかほどけへん!」となって、
もう壊しそうになってましたけどね(笑)。
──
あらら、おちついて。
田中
この「おちつけ」を見たときに思ったのが、
カウンセリングの基本は、
「聞く」ということなんですよ。

相手の人がしゃべって、こちらは聞く。
相手の話のなかで意味がわからないところがあったら
「それはどういうことですか?」と質問するけれど、
こちらから積極的に「それはいつからですか?」
「それはなぜですか?」などと聞いたりはしません。
基本的に話し手主導なんですね。
──
まずは相手の話を聞くこと。
田中
そう。でも、だんだん問題が見えてきて
「あ、こうかな」と思えてきたら、
こちらからもどんどん聞きたくなって、
アドバイスしたくなることがあります。
──
話の流れではそうなりますよね。
田中
でも、そこで「おちつけ」。
早く解決してあげたいなと焦ったり、
他の例と同じパターンだからと決めつけたり、
そう思ってしまうこともあるわけです。
そうなると、相談者の方よりも先に
いろいろ言っちゃいそうになるんだけど、
「おちつけ」という字が目に入ることで、
いやいやいや、と立ち止まることができるんです。
ぼくの仕事でとても役立っていますよ。
──
そんな形でお仕事のお役に立てて嬉しいです。
田中
それに、石川九楊先生が書かれたんですよね。
ぼく、福井の仁愛大学に長く勤めていまして、
石川先生は昔の今立町、いまの越前市のご出身で、
福井では有名な方です。
だから、石川先生の本をたくさん読んでいました。
その石川先生の書が
カウンセリング中にちらっと見えるおかげで、
おちついてやり過ごすことができています。
──
そんな偶然も重なっていたんですね。
大切にしてくださり、ありがとうございます。
田中先生にお伺いしたかったのは、
著書の『子どもが幸せになることば』を読んだときに、
親と子のコミュニケーションでは、
おちついていればなぁという場面が
いっぱいあるなあと思いまして。
田中
ああ、ありがとうございます。
──
田中さんはお仕事でたくさんの
カウンセリングをされていますし、
ご家庭でも4人のお子さんがいらっしゃいますよね。
まさにいまは受験シーズンでもあるし、
おちつけない状況にあるような
親御さんや、お子さんに対して、
どういうふうに「おちつけ」のことばを
伝えたらいいのでしょうか。
田中
子育てでも、カウンセリングでも、
「おちつけ」ということばが
役立つのは、
「いらんことは言わない」
ということです。

親から子どもへのことばだったら、
言わなくていいことが多いぐらい。
またいらんこと言いそうになってるなって
自分で意識をするのに、
「おちつけ」ってすごくいいでしょうね。
──
子どもに対してだけじゃなく、
夫婦間でも言えそうですね。
余計なこと、なんで言っちゃうんでしょうね。
田中
親子でも、夫婦でも、
「話を聞いてもらう」っていうのは、
愛情をかけてもらうこと
なんですよ。
だから、聞いてほしくなるんだと思います。
──
カウンセリングでも、
話を聞くことが基本ですもんね。
田中
カウンセリングでは、
こちらから何かを薦めるというものではなく、
ただ来て、話してもらうだけです。
なかには「何から話しだそう」って考えて
なかなか話しだせずに、
10分、15分、20分とずっと黙って、
言いかけては止まって、ということもあります。
でもそれはね、すごくいいんですよ。
その時間を大事にしようとしているわけなので。
──
先生からきっかけを作るのではなく、
ただ待つのでしょうか。
田中
そうですそうです。
「どんな気分かな」って思いながら
ぼくは待つわけです。
──
親子間でもそういうタイミングはありますよね。
子どもが何か言いたそうに
モジモジしているんだけれど、っていう。
田中
そうそう、似ていると思います。
たとえば学校で悪いことしたりすると、
担任の先生から電話がかかってくることが
うちではよくありましたね。
子どもからすると「これ言わんといかんな」って
思ってはいるけども、なかなか話し出せない。
──
子どもとしては気まずいですよね。
自分が悪いことしたのはわかっているけれど、
親から怒られるのは嫌だろうし。
田中
親はどこまで知ってるのかなって思いながらね。
でも、子どもにとっても、
ちょっと理不尽に思っていたり、
納得していないこともあったりするから、
「親は味方になってくれるかな」と
不安に思っているかもしれません。

だから、ぼくも子どもの思いを感じながら
黙っておくようにしていました。
結局、話に出ることもなく消えていっても、
それはそれでいいと思うんですよね。
──
おそらく、先生から電話がかかってきたら、
その内容を問い詰める親の方が
多いんじゃないかなって思うんです。
でも、子どもは自分でわかってるはずですよね。
先生に怒られた直後ですし。
田中
学校の先生もね、電話をかけたくて
かけているんじゃないと思いますよ。
そういうマニュアルに従って、
電話をかけさせられている感じなんです。
──
田中さんの『子どもが幸せになることば』を
読ませていただいた時に感じたのですが、
先生のスタンスは終始一貫していますよね。
子どもがどんな年齢であっても
「親がその子にとっていちばんの味方である」
という姿勢がずっと貫かれてるなと思ったんです。

最初は「自分が子を変えてあげよう」みたいな気持ちで
本を手にとった読者もいるだろうなと思うんです。
でも、まずは子どもが過ごしやすい環境を作ることから
意識していかないといけないんだなって思いました。
田中
ありがとうございます。
まあ「していかないといけない」
というよりは、
「そうした方がたのしい」
ってことですね。
──
ああっ、そうですね。
そうした方がたのしい。
田中
いま、この世界のこの状況で、この空間で、
この生き物がどう育っていくんかなあ、
どうやって生き延びていくんかなあっていうのを、
ずっと考えるんです。
自分が子どもだった時とは違うはずだから。
本能の力をいちばんに発揮するには、
親からの干渉は少ないほどいいだろうなって思います。
(つづきます)
2026-01-31-SAT
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