「SUOMIの森だより」のテーマは、 「ながく、愛着をもって使いつづけられるもの」。 ではいったい、どういうものだったら、 そうなふうに思えるんでしょうか。 スタイリストの井伊百合子さんに、 ご自身の愛用品を見せていただきながら、 「ながく着られるもの」「だいじにしたくなるもの」 について、語っていただきました。 |
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── | さっそく、きょう持ってきてくださったものを、 拝見していいですか? |
井伊 | はい、これはカシミア100%のセーターです。 いただいたものなんですけど、 わりと、ごくふつうのかたちです。 |
── | ひろげて見せていただいていいですか。 |
井伊 | ちょっとしわっとしてるんですけど‥‥(笑) ふつうの丸首セーターでしょう? |
── | なるほど、そうですね。 |
井伊 | でも、とにかくサラサラ、フワフワしてて、 すごく肌ざわりがいいんです。 かたちもなんてことないんですけど、 着るとこれ一枚で決まるっていうか。 上になにか着なくても、ちゃんと成り立つ。 |
── | さまになるわけですね。 |
井伊 | 本当はカシミアのものって、 ちゃんと手入れをしないといけないし、 そんなに毎日毎日着るものじゃないんですけど、 ついつい着てしまって‥‥。 ちょっとポロポロほつれてきちゃったりしてます。 |
── | ほんとだ。 あ、繕ったりもしてますね。 |
井伊 | そうなんです。 |
── | だいじに着てる感じがしますねー。 |
井伊 | ものすごいハードに 登場していたものなんですけど。 |
── | いまも着ている? |
井伊 | はい、いまも着ます。 でもなんか、もうこれ以上ボロボロにしたくないので、 ちょっと控えめにしてます。 |
── | 飽きたわけじゃなくて、殿堂入り? |
井伊 | あ、そんな感じです。 |
── | ジーパンが好きなひとって、 わりとそういうの、ありますよね。 |
井伊 | そうそうそう。 |
── | すごくはき込んで、いい感じになったところで、 やめるっていう。 |
井伊 | そうなんです。 それで一枚、ジーパンだめにしちゃったことがあって。 膝にちょっとほつれがあったんですけど、 それでもはきつづけてたら、 ついにあるときバリって破れちゃって。 こういうことをしたらいけないと思って。 |
── | それが教訓になってる。 |
井伊 | そうです、そうです。 いま、3本ぐらい大好きなデニムがあるんですけど。 ちょっとはいてやめて、はいてやめて、 っていう感じでチビチビと。 |
── | じゃ、このカシミアはもう、育ちきった感じで。 |
井伊 | そうですね。 |
── | 着はじめて何年ぐらいなんですか? |
井伊 | 4年ぐらいですね。 でも、本当にすごくハードに着てて。 |
── | サマーセーターっぽい編みかただから、 あまり季節も問わない感じですね。 |
井伊 | そうですね。春も秋も冬もみたいな感じですよね。 でもやっぱり、あったかいですよ。 |
── | あったかい。 |
井伊 | カシミアって、すごく保温性があるというか、 とにかくあったかいです。 |
── | 一般に、カシミアのアイテムっていうのは 井伊さんにとって、どういうものなんでしょう。 |
井伊 | やっぱり、ぜいたくなものっていう気はしますね。 10%入ってるとか、そういうのはちがうんですけど、 100%っていうのは、ぜいたくな気持ちになります。 けっこうね、「カシミア混」みたいなのは あるじゃないですか。 |
── | ありますね。 「混」だと、印象がちがいますよね、やっぱり。 |
井伊 | そうそうそう。 アンゴラが入ってたりとか、5%カシミアが入ってるとか、 一見というか、ちょっとさわるだけだと、 カシミア100%なのかなって思うようなものも、 すごく増えてるんですけどね。 |
── | 100%は、やっぱりちがう? |
井伊 | ちがうと思います。 そもそも、値段がぜんぜんちがう(笑) ちょっと、がんばって買うっていう感じじゃないですか。 |
── | ああ、そうですよね、たしかに。 高いから、自然にだいじにする、みたいなのも、 ある気がしますね。 |
井伊 | 自然にだいじにするし、そうするのがうれしい、 みたいなところも、ありますね。 わたしも、着たあとはちゃんと、ブラシでとかしますし。 |
── | あ、ニットもブラシで? |
井伊 | カシミアのニットは、やわらかいブラシで とかしてあげます。 |
── | この子も? |
井伊 | この子も。 |
── | ああ、そうですか。 |
井伊 | やっぱり、すごい毛玉になりやすいので、 そこは注意をします。 あまりガシガシやるんじゃなくて、やさしく。 |
── | あ、やさしく。 |
井伊 | それでも、袖からどんどん、ほつれちゃって。 作業で、袖をまくったりも多いので、 それでもう、ここからどんどん。 ちょっとそれは、くやしいです。 ちゃんと手入れしてるのにって。 |
── | ブラッシングもしてるのに。 |
井伊 | そうなんですよ。 |
── | 井伊さんって、わりとあれですか、 もの自体が好きなところ、ありますか? |
井伊 | もの自体も、もちろん好きですね。 |
── | たぶんそうですね。 |
井伊 | 好きです、好きです。 |
── | ややちょっと、男っぽい?(笑) |
井伊 | そうかもしれないですね(笑) なんか靴とかも、みがいてきれいになったとかいって、 おいといたり、眺めてたりとかします。 |
── | ああ、男っぽいですね、それ。 |
井伊 | 靴は、すごくしますね。 |
── | そうですか。 |
井伊 | いいなぁ、って(笑) |
── | じゃあ、せっかくなので靴のお話も。 |
井伊 | はい。 (後編につづきます) |