洗濯ブラザーズ三男の今井良さんは、
ガジェット好き、ファッション好き、おもちゃ好き。
そんな今井さんに生活愛用品を教えてください、
と訊いてみたところ、出てきたのが
「LIXTICK®のランドリーネット」でした。
大小、平面と立体の6つのサイズの
色鮮やかな洗濯ネットが、
アメリカンなデザインの紙の箱に入っているものでした。
そのかわいらしさだけでなく、今井さんいわく
「性能も、ばつぐんなんです」。
入手してみたところ、なるほどこれは使いやすい!
その後、LIXTICK®の代表であり、
このランドリーネットをつくった
大楠さんをご紹介いただき、
「ほぼ日」とコラボした特別カラーの製品をつくることに。
ふだん、表に出ないという大楠さんをお招きして、
今井さんとともに、いろいろなお話をうかがいましたよ。
大楠さんが最初につくったのは「つまようじ」、
そしてモノづくりの発想の原点は
大阪のおばちゃんの「アメあげる」なんですって。
‥‥って、いったい、それは、どういうこと?!
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enricheveryday 今井 良
洗濯ブラザーズ・三男。
1974年神奈川県出身。
総合商社、外資製薬会社、IT企業を経て、
2018年2月に茂木貴史・康之兄弟と
「洗濯ブラザーズ」を結成。
一般目線で洗剤や洗濯をかみ砕いて
分かりやすく紹介する活動をしている。
ウェブショップ「enrich everyday」を主宰、
毎日が楽しくて気分が豊かになるモノ、
毎日に欠かせない大好きなモノを紹介している。
前編_はじまりは、
ミント味の「つまようじ」。
- ──
- 今回、そもそもは、
今井さんの愛用品として、
LIXTICK®(リックスティック)のランドリーネットを
紹介してくださったことから始まりましたね。
そのランドリーネット6枚セットが、
すごくポップなデザインと色だったので、
てっきりアメリカ製のものかと思ったら、
「日本で、オリジナルでつくっているんです」
と聞き、びっくりしました。
それで、それをつくっている
LIXTICK®の代表である大楠さんを
ご紹介くださった。
- 今井
- 僕が大楠さんを知ったきっかけは、
自分の好きなお店に、
LIXTICK®のつまようじ
(LIXTICK® MINT TOOTHPICK)があったことです。
- ──
- つまようじ?!
- 今井
- つまようじです。
- ──
- どんなつまようじなんですか?
- 今井
- それは、大楠さんに説明していただこうかな。
- 大楠
- 喋っていいですか?(笑)
ミントフレーバーのつまようじなんです。
LIXTICK®の創立時から、
うちの一番バッターとして出している商品です。
- ──
- 創立時から! ブランド創立のきっかけは
どんなことだったんでしょう。
- 大楠
- 僕はもともととある出会いがあって、
セレクトショップの販売員、兼、
アメリカに買い付けに行くバイヤーをしていました。
あとブラックミュージック関係の仕事を経て、
その頃は、広告のグラフィックの作業を
フリーランスで受けていたんです。
でもそれは、仕事を受けて渡す、
つまり単価でいくらです、じゃあ仕事を受けます、
渡します、終わり、という流れですから、
そのあとの動きが、自分では何もわからない。
それを繰り返しているのって、
ようは「手ごたえがない」んですよね。
消費されて、時間に対しての労働給を貰っている感覚です。
だから「なにか残るものがやりたいな」と。
音楽の世界では、
レーベルをインディペンデントで立ち上げて、
アーティストを輩出するというおもしろさを知りましたが、
その頃はプロダクト、物が先行して動いていくことに
興味があったんですね。
それで、バイヤーの時、アメリカで
フレーバー付きのつまようじを買い、
大阪のおばちゃんが「アメあげる」みたいな感覚で
お土産として友達にあげていたのを思い出しました。
あるとき、その全部が合致して、
「じゃあ自分でやろう、ブランドをやろう、
つまようじを作ろう」と思いました。
服をやるか、物をやるかっていうなかで、
つまようじを作ったんです。
LIXTICK
MINT TOOTHPICK
¥300 – ¥3,000
- 今井
- ははは。
- ──
- ミントのつまようじを作るのって、
きっと、簡単なことではありませんよね。
手づくりをするわけにはいかないでしょうから、
工業製品、大量生産品ということになる。
それを、個人で?
- 今井
- そうですよ、どうやって作ったんですか?
- 大楠
- 最初は海外から買い付けたものを
販売しようとしましたが、
口に入れるものなので、
実は日本の食品衛生法の基準に達していないものが多く、
なかなか難しかった。
じゃあ日本の基準に合うものをつくろうと、
香料だとか白樺材だとか、
食品分析センターを介して検査をして、
全部口に入れてもOKというものを考えました。
各々資材の工場を探して、実際に試行錯誤を繰り返し、
できるまで1年半くらいかかりました。
- 今井
- ‥‥最初の発注量、すごかったんじゃないですか。
きっと、「え?」っていう単位ですよね。
そういうものって、大きな企業がつくるもので、
個人でつくるものじゃないですよね‥‥。
- 大楠
- わけもわからずはじめたから、
在庫のダンボールに囲まれて生活することに(笑)。
半年ぐらい、家からミントの匂いが消えなかったです。
きっと、コンビニで売っているミントのガムって、
ものすごい数をつくっているんだろうなぁ、
と思いながら暮らしてました(笑)。
- ──
- その在庫、なんとしてでも販売しないとなりませんね。
- 大楠
- そうです。起業で準備した資金の全額、
それに使いましたから、
売らないと生活ができません。
- ──
- 販路はどうやって拓いていかれたんですか。
自前のネットショップだけでは
捌けない量ですよね、きっと。
- 大楠
- はい。その頃の僕は「卸し」という仕事が
全くわかっていませんでした。
ただ、CDを売っていた経験があったので、
その流通を思い出して、
そういうふうな感じでやればいいんだと思いつつも、
上代(販売価格)の決め方もわからず、
もちろん下代(卸し価格)もわからず、
「いくらだったら自分が買うかな?」と。
でも、最初は、町で、1万本くらい、
友人や知人周りの人に配りましたよ。
- 今井
- 宣伝として?
それこそ大阪のおばちゃんの
「アメちゃん」的な‥‥。
- 大楠
- そうです、そうです。アメちゃんです。
「これ、いる?」みたいな。
- ──
- でも、口コミ大事ですよね。
いちど使ったら「これいいね!」ってなる。
きっと欲しくなりますよね。
- 大楠
- はい。そこから主にアパレルや、
雑貨を取り扱っているお店で、
おつりで買っていただけるように、
レジ横に置いてもらうように営業をして。
簡単ではなかったですけれど、
人にも恵まれてだんだん増えていったんです。
- ──
- コンビニの「レジ横大福」みたいなことですね。
- 今井
- そうです、僕が最初に見たのはそれです!
かっこいいつまようじが
アパレルのお店のレジ横にあって、
「え? これ、何ですか?」って。
- 大楠
- そう。「これ、何ですか?」がやりたいんです。
僕はずっと。
あと、10年後に「いいでしょ!」と
言える、思えるものづくり。
ここすごい大事なところで、
一番は自分自身が、面白いか、面白くないか、という基準。
- 今井
- よく知っているお店だったので、
「これ、何ですか?」「つまようじです」
「つまようじ?」「味がするんです」。
- ──
- つまようじが洋服屋のレジ横に置いてある。
しかも「味がするんです」と。
- 今井
- 「おもしろい、これ!」っていうので買ったのが、
LIXTICK®というブランドを知ったきっかけです。
でもそのときはまだ大楠さんに行き着いていないんですよ。
月日は流れ、今から4年、5年くらい前かな、
僕が仲良くさせてもらっている
ナリフリ(narifuri)っていう
自転車とそのまわりのブランドがあるんですけど、
営業の子がおもしろい靴下を履いてたんですよ。
それがLIXTICK®のものだと知ったんです。
調べてみて「あの、つまようじの?!」と、
そこで、やっと、つながりました。
- ──
- 当時、大楠さんは、
家が占拠されるほどのつまようじの在庫を売って、
次に靴下を?
- 大楠
- その間に、「タイベック®」っていう
特殊資材を使った ペーパーウォレットをつくったり、
ブラス(真鍮)のミニマムなキーリングをつくったり。
ようは、つまようじからスタートして、
「アメちゃん、どうぞ」の感覚で、
ポケットから出てきたらおもしろいもの、
若干の機能美を持っているものをつくってきたんです。
ただ、ポケットの中にしまうものばかりつくっていたので、
欲を言うとブランドのアピールができないんですよね。
- ──
- 「それ、何?」って言われない。
- 大楠
- そこで、ちょっと見えるものをやりたいなと、
その頃、たまに書いていた
「やりたいことメモ」を見返したら、
「靴下にドリップ」っていう一行があって、
それで、そのまま、「ドリップ柄の靴下を売ろう」と。
そこでドリップのことなら、と、
懇意にしているグラフィティーライターに相談して。
大事なのは「っぽい」モノではなく
限りなくホンモノであることを意識しながらやる。
僕はアパレルでもなければ、雑貨メーカーでもなく、
気になったものを手探りで調べて、
知識をつけて作っているんです。
だから余計に「っぽい」モノじゃダメだと思っていて。
- ──
- すごいなぁ。ちなみにほんとうにおひとりで?
- 大楠
- 聞かれたらいつも「後ろに数百人いる」なんて
適当なことを言っているんですけど。
実質ひとり、とは言っても
プロジェクトごとにクリエイターやアーティストと組んだり、
友人の経営してる工場や、
いわゆる顧問やフリーランスの仲間もいるので、
ひとりとは言えないかもしれない。
あと、妻が僕のケツ叩きみたいなことをしてくれています。
- 今井
- それ大事です!
で、僕はLIXTICK®の靴下が好き過ぎて、
自分でやっているエンリッチエブリデイ
(enrich everyday)っていうサイトで取り扱ったんです。
- ──
- お店をなさっているんですか!
それは「洗濯ブラザーズ」とは違う活動なんですね。
- 今井
- はい、そうなんです。
4年前に立ち上げたオンラインショップです。
- ──
- それは今井さんが気に入ったものを仕入れて販売する?
- 今井
- 仕入れもしますし、
革小物などはオリジナルも作ってます。
そのなかで、LIXTICK®の靴下を扱いたいと思い、
そのオファーが縁で、
大楠さんと面識ができたんですよ。
- ──
- ああ、ようやく、つながりました。
- 大楠
- 2年前のことですね。コロナ禍が起きてからでした。
- 今井
- そして、渋谷で開かれたLIXTICK®展示会で、
ランドリーネットのサンプルを見たんです。
「これ何?」と、また、びっくりして。
もうまずパッケージがかわいくて!
- ──
- こんなの、ないですもんね。
- 今井
- ないです。
僕もはじめはアメリカ製の輸入品だと思いました。
そしたら、オリジナルで作ったと知って、
またびっくりです。
新鮮でした。いままでランドリーネットって、
白とか薄いピンクとかしか見たことがなかったし、
こんなパッケージに入っていなかったし。
2022-03-31-THU