yamahon hobonichi branch
アートの同一線上に。
元永紅子さんインタビュー ききて 山本忠臣+ほぼ日

「そろそろ、いいもの。」
第2回は、アーティストである
元永紅子さんのアクセサリーです。

部屋全体を使うインスタレーションや、
その一部となる平面作品と同じつくりかたの
紅子さんのブローチやバレッタ。
いわばアートがそのまま身につけられる、小さな作品です。
アート作品としての“強さ”とともに、
ふしぎと人に寄り添うあたたかな印象を持っています。

この作品が生まれた過程を知りたくて、
紅子さんの伊賀のアトリエに伺いました。
やまほんの山本忠臣さんとともに
お聞きした話、お届けします。

元永紅子さんのプロフィール
その2 あなたの個性に寄り添う。
アートのかけら、街に出る。
山本さんは、器のように「使う」ものに限らず、
「飾る」ものも紹介しています。
そのなかで、紅子さんの作られたものを、
どうとらえたのでしょう。
最初にあったのが、小さな驚きでした。
油絵だったら、具象画であれ抽象画であれ、
奥行きのある平面作品は
比較的多いかなと思うんですけれど、
紅子さんのアート作品は、
すごく平面的だということでした。
“平面らしい平面”っていうか。
色絵の折り紙を破っただけのものを壁に飾る、
というふうに見えたんです。
あとは、色。
ビビッド‥‥というか、なんとも言えない色。
しかも、見入っていくと、
細い線がめちゃくちゃ立体的に積み重なっている。
紅子さんは、こういう、アートと実用っていうのかな、
両方なさるじゃないですか。
スタートはどんなことだったんでしょう。
大学の3回生の頃から彫金を始めました。
もともと、それがしたかったんですけど、
平面をやりなさいと父親に言われて。
絵を描いて想像力を豊かにしてから
技術を学ばなければいけない、
技術から入ったらダメだって。
それで父親が高校の美術の先生に勝手に話をして、
「金工にはいかせない」と言われて(笑)。
それで美術のほうに行ったんですけど、
やっぱり彫金がしたかったので、
3回生のとき、大阪に習いに行きました。
そこの先生は自由で、カリキュラムを脱線してもいいし、
素材も何を使ってもいい、と。
それで、絵画と金属、両方をするようになったんです。
彫金を始めた紅子さんに、
お父さんやお母さんは何か言ったんですか?
いや、何も。
制作するとっかかりとして、
絵から始めたほうがいいけれど、
それでもまだ金工がやりたかったらやったらいい、
という感じでした。
ブローチやバレッタを見て思うのは、
紅子さんのアートの平面作品と、
この小さな作品の作り方は、
同じらしい、ということでした。
それで「絵のかけら」という表現もなさっていて。
はい。大きな平面作品って、
展覧会に行かないと見られないじゃないですか。
作品は固定されるので、購入していただいても、
おうちの中で楽しんでもらうことになります。
そこに行かないと見られないわけですね。
だから、作品の一部をブローチやバレッタにして、
絵のかけらを身につけて外に出て歩いてもらおう、
そうしたら、両方を見てもらえるかなって、
小さなものをつくり始めたんです。
じつは、最初は絵とセットだったんですよ。
これは、ジュエリーと絵画を両方してきたから、
できたことだと思うんですけど。
ということは、ホントに、
絵のかけらなんですね。
はい、かけらなんです、私の中では。
アートを身につけるって、
とても素敵で贅沢なことだと思います。
ありがとうございます。
いろんな人がつけてくださるので、
「あの人がつけてるのを見たよ」って、
だんだん、言われるようになりました。
アートのカケラのつくりかた。
これ、どうやってつくるのか、不思議です。
とっても簡単ですよ。
ビニール袋に絵の具を入れて、
端の方を、ちょっとだけ切って、
細い線を1本ずつ出して、
ずーっと線を描いていくんです。
ケーキのデコレーションと一緒ですね!
それを固めるということですか。
はい、というか、絵の具は自然に固まるので。
それが何層にもなっていますね。
乾いてから、また線を引いて、
ということを繰り返します。
よく見ると、線も1本1本に個性があります。
1本ずつ描いてるからですね。
5本ぐらい出るように工夫したらいいのに、
と言われるんですけど(笑)、
それじゃあんまり、意味がないんですよ(笑)。
同じ色のはずなのに違って見えるのは、
線が立体なので、
それぞれ個性的な影ができるからですね。
重ねることで影が深くなっていくのが
おもしろいんです。
絵の具の色は、
もともとの色なんですか。
もともとの色もあるし、
調合しているものもあります。
この「かけら感」なんですが、
大きなものをつくって、それを切るのか、
それとも最初からこのかたちに?
それぞれにベースのかたちを切ってから、
線をのせていきます。
好きなつけかたでどうぞ。
どんなふうに身につけてもらえたら、
という姿は、紅子さんにあるんですか。
それとも、使う人にお任せ?
お任せですね。
重ねてつけてくださってる人もいますし、
帽子につける人もいる、
みなさんがそれぞれに使い方を工夫して
つけてもらえたらとってもうれしいです。
このまま額にいくつか入れて
飾っていらっしゃる方もいます。
それは、それぞれの楽しみ方でいいと思っています。
男性もいけますね。
全然いけます。
でもブローチをつける、っていうと、
男の人は抵抗あるのかなと思ったりするので、
例えば、ジャケットの胸ポケットから
ちょっとだけ出して、
ポケットチーフみたいにしてもらっても素敵です。
実はポケットチーフじゃない、という遊びですね。
そのやり方いいですね、カッコよさそうです。
もちろん抵抗のない男性は、
どんどんつけていただけたら嬉しいです。
男の人は帽子もつけやすいかもしれないです。
ちょっと大きいかな? 
ちっちゃいのだったら、よさそうです。
大きさもいろいろあるので。
楽しんでください。
山本さんもお持ちですよね。
持ってます。
僕のは、紺色です。
色も形もさまざまだから、
「直感でお求めください」
としか言えないですね。
複数の色を楽しんでもらってもいいと思います。
インタビューの映像で、お母さまが、
すごく自然につけてらっしゃって、
素敵だなと思いました。
それは、黄色でしたね。
結構、いつも付けてくれてます。
胸のど真ん中につけたりしてますよ。
それぞれ、つけやすい位置があると思うので。
これ、質感に比べて、軽いんですよね。
軽いです。支持体が紙なんです。
金具をつけるため、障子紙とか、
いろいろな紙を3枚ぐらい貼り合わせているんです。
そして、全部に、紅子さんのサインが入っています。
これを見逃さないでほしいですね。
作品性があります。
そうなんですよ。
軽い平面なのに奥行きがあって、不思議ですよね。
いっけん、プラスチックみたいな、
ケミカルな感じがしますけれど、
じっさいに手に取ると、
裏もちゃんとキレイに塗られていることもあって、
温もりがあるんです。
みなさんにご紹介するのがたのしみです。
ありがとうございました。
元永紅子さんのかけらブローチとバレッタは、
2023年10月24日(火)販売開始です。
2023-10-20-FRI
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