Symposium ボーダーシャツを語ろう。[井伊百合子さん篇]

  • 井伊 百合子さん(スタイリスト)
  • 江藤 公昭さん(「PAPIER LABO.」ディレクター)
  • 尾崎 雄飛さん(「SUN/kakke(サンカッケー)」デザイナー)
title:

File 03 めざすは、ボーダーシャツの原点。

date:

2013/02/21 THU

content:
井伊 尾崎さん、さっき見せていただいた
昔の「オーシバル」を、もう一度見せてもらえませんか?
尾崎 T字型シルエットのやつですね。
ほぼ日 そのボーダーシャツが、気になってる感じですか?
井伊 はい。
なんだか、すごくいいと思います。
この、デザインされていない感じが
今の服にはほとんどない気がして。
尾崎 やっぱりフランス軍のユニフォームとして
つかわれていたものなので、
量産性や経済性が重視されているんだと思いますね。
服のつくりとしては、
原始的というか、めちゃくちゃシンプル。
ほぼ日 極端にいってしまえば、このボーダーシャツから、
ボーダーの歴史がはじまっているわけですね。
井伊 うんうん、まさにボーダーシャツの原点。
尾崎さん、これ、ちょっと着てみてもいいですか?
尾崎 もちろんです。どうぞ、どうぞ。
井伊 (ボーダーシャツを着ながら)
やっぱり着ないとわからないので‥‥。
尾崎 たぶん、ゆったりめの、
ちょうどいい感じになるんじゃないかな。
井伊 ボディの部分に余裕があって
袖が広めなところとか、すごく好きです。
尾崎 うん、いいサイズ感だと思います。
江藤 『なまいきシャルロット』のときの
シャルロット・ゲンズブールみたい。
ほぼ日 (シャルロットの写真が載っている
 雑誌を差し出しながら)
この写真ですね。

photo: Interfoto / AFLO

江藤 そうそう、これこれ。
井伊 オーバーサイズで着ることで、
型にはまらない、チャーミングな感じが
生まれる気がします。
尾崎 うん、なるほど。
そういえば、さっき話した
かっこよくボーダーシャツを着る友人も
ジャストサイズじゃなくて、
あえて2つくらい上のサイズを着てました。
井伊 ふだんボーダーシャツはあまり着ませんが、
これだったら、着るかもしれません。
ほぼ日 どうしてそう思われるんでしょう?
井伊 実際に着てみて思ったんですけど、
このT字型のざっくりとした形って、
着る人の体のシルエットしだいで
いろんな表情になるんじゃないかと。
ボーダーシャツが、
着た人なりの形になるというか。
尾崎 さっきもいったように、服のつくりとしては、
生地と生地をT字型に縫い合わせた感じで、
とても平面的なんですよ。
つまり、着たときのシルエットをきれいに見せるよう
立体的につくられていないんですけど、
それだけに、たしかに着る人のシルエットで、
服の見え方が変わると思います。
井伊 それって、きっと着ていておもしろいと思うんです。
オーバーサイズで着るスタイルは同じでも、
たとえば、ドレープ(服のしわ)1つでも
人によって表れ方がちがう。
江藤さん、どう思います?
江藤 うん、いいと思う。
このボーダーシャツの着方だったら、
「パンツにイン」するスタイルとか
チャレンジする人もいるんじゃないかな。
ぼくは、どちらかというと長らく
「パンツにイン」スタイルだったので、
あんまり抵抗ないんですけど(笑)。
井伊 わたしも「パンツにイン」が好きで、
スタイリングするときに
モデルさんによくインしてもらいます。
パンツにイン、いいですよね。
ほぼ日 たとえば、
井伊さんがこのボーダーをつかって
モデルさんのスタイリングを考えるときにも、
そのおもしろさって、感じそうですか?
井伊 このボーダーシャツを
いろんなモデルさんに着せて、
その人のシルエットに合うスタイリングを
考えるということですよね。
うん、それはおもしろいと思います。
ほぼ日 おおー、いいですね。
形の方向性が、ばっちり見えた感じ。
井伊 そうそう、色でも気になったのがあって。
さっき見せていただいた、
紺なんだけど紫っぽいやつ、ありますよね?
尾崎 ヴィンテージの「ウエッソン」の色ですね。
そういえば、「フレンチブルー」っていうのは、
この色のことを言うらしいですよ。

▲ヴィンテージの「ウエッソン」のアップ。

尾崎 この色のボーダーシャツ着ている人がいたら、
「おっ、あの人、通だな」って思います(笑)。
江藤 ボーダーマニアの目線(笑)。
ぼくはこの、はっきりとした青のほうが好きだけど。
尾崎 ああ、たしかに江藤さんは、
はっきりとした青を着ているイメージ、ありますね。
井伊 こっちも体に当ててみてください。
江藤 はいはい。
(当ててみて)‥‥どう?
尾崎 おっ、通っぽい。
井伊 わたしも、わたしも。
尾崎 いやぁ、通ですねぇ。
井伊 尾崎さんも。
尾崎 どうですか?
井伊
江藤
通だ!(笑)
井伊 通かどうかは別にして、
この紫がかった紺色、素敵だと思いました。
この色でボーダーをつくれたらいいなぁ。

(つづきます)

井伊 百合子(いい・ゆりこ)

スタイリスト。
東京生まれ。
2004年文化服装学院アパレルデザイン科
メンズデザインコース卒業。
在学中よりスタイリスト ソニア パーク氏に師事。
2008年独立。
現在、「GINZA」や「装苑」などの雑誌や広告等、
幅広い媒体で活躍する人気スタイリスト。
「実際に使える」ことが、しっかりと考えられている、
ナチュラルで上品なスタイリングを得意としている。

閉じる

江藤 公昭(えとう・きみあき)

「PAPIER LABO.」ディレクター。
ランドスケーププロダクツにて
インハウスデザイナーとして在籍時に
紙にまつわるプロダクトを取り扱うショップ、
「PAPIER LABO.」を設立。
2010年1月に独立し、
店舗運営を中心にデザインや印刷の窓口的役割を担う。
もののよさを見抜くセンスは紙ものだけにとどまらず、
ジャンルを超えて活躍中。
井伊さんとはご近所さんで、ふだんから親交がある。

閉じる

尾崎 雄飛(おざき・ゆうひ)

1980年愛知県生まれ。
大手セレクトショップバイヤー、
ヴィンテージショップ店主を経て、
2007年に「フィルメランジェ(FilMelange)」を立ち上げ、
ディレクターとして活動。
2011年に独立し、
フリーランスのデザイナーとして
様々なブランドのデザイン、ディレクションを手がける。
2012年1月に自身のブランド
「SUN/kakke(サンカッケー)」をスタート。
洋服に対する愛情と深い造詣に定評がある。

閉じる