糸井 |
睡眠中の脳の活動や周期について なんとなくわかってきたとして‥‥ では、寝不足というのは いったいどういうことですか。 |
池谷 |
いやぁ、わからないです。 |
糸井 |
はははは。 |
池谷 |
寝不足という症状は、確かにある。 睡眠量というものは、 人それぞれで決まっていて、 足りないと集中力が落ちます。 記憶力も落ちる。 定着も落ちる。 まず、それはあります。 それに、眠りが深いときに目が覚めちゃうと、 ものすごくつらい。 しばらくボーッとしますよね。 場合によっては、それで 1日のパフォーマンスが決まっちゃうこともある。 ですから、深く眠っているときに 目覚ましが鳴ると大変なことになる。 |
糸井 |
日常的に おおいにありえることです。 |
池谷 |
会社の始業時間などで いつも起きる時間が一定の方は多いと思います。 だけど、寝る時間はまちまち。 こういう状況の人は、特に 深い眠りのときに目覚めてしまう場合があります。 |
糸井 |
じゃあ、目覚ましは どんなにいいのを考えても、ダメだね。 |
池谷 |
いや、脳波を取っちゃえばいいんです。 |
糸井 |
ああ、そうか。 睡眠の意識レベルが 上に行ったところで起きるといいんだ。 |
池谷 |
けっこう安くできるんじゃないでしょうか。 脳波を測る機械は原価で 1台1000円とか2000円とか、かな? 脳波を見ると、 現在レム睡眠かノンレム睡眠かがわかるので、 レム睡眠のタイミングで 起こしてくれる目覚ましがあればいいんです。 ただ、細かいことをいうと レム睡眠のところで起きてもダメです。 レム睡眠が終わった瞬間がベストです。 レム睡眠のピークで起きると 金縛りになる可能性が高い。 |
糸井 |
そうか。意識レベルが上がったときは 体が寝ているんでしたね。 |
池谷 |
その状態が終わって、 もう一度眠りが深くなる直前に起きるんです。 そのときに、特殊な脳波が出るので、 それがわかる目覚まし時計があるといいですね。 ちなみに、眠りの深いところで 目が覚めてしまう病気があります。 それは、夢遊病です。 |
糸井 |
ああ、そうか。 そっちは逆に、体は起きているから。 |
池谷 |
「浅い眠り」「深い眠り」と呼びますが、 体は逆で、 意識がないほど体は正常に起きています。 レム睡眠中は、 あまり寝返りをうちませんし、 動いているのは眼球くらいのもので、 体はほぼ弛緩しているんです。 だから金縛りになる。 |
糸井 |
子どもはよく寝言を言いますが、あれは? |
池谷 |
子どもは、筋肉が弛緩しきらないことが多いんです。 夢の中でサッカーをして、 ほんとうに手足が動いてしまうこともあります。 夢を見ている浅い眠りのときに 筋肉が弛緩することの意味のひとつは、 夢を現実の体で表現しちゃわないように、 ということかもしれないです。 人を殺す夢を見て、 ほんとうにやっちゃったらまずいから。 だから脳と体を切り離す。 こういう解釈をしている研究者は けっこう多いです。 |
糸井 |
そうか。弛緩する必要があるんだ。 |
池谷 |
そう。 なんてったってFですからね。 |
糸井 |
Fの悪夢は、体に現さないほうがいい。 (つづきます) |
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2007-12-06-THU