タカモリ |
生まれて初めて編む方が、
たったの2週間でここまでできたのは
とても立派なことだと思います。 |
トリ |
ありがとうございます。 |
ぼうた |
犬のほうが処女作ですよね。 |
トリ |
はい、こいつ。 |
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山下 |
作品名「いぬ」。 |
トリ |
ええ、いぬ。 |
タカモリ |
ご実家で飼われていた
ミニチュアダックスが亡くなって、
その想い出に編もうと思ったんですよね。 |
トリ |
はい、華之介という名の犬でした。 |
きはら |
じゃあ、
作品名「華之介」にすればよかったのに。 |
トリ |
それが、編みはじめたら
なかなか思った通りにならなくて、
編み目もきたないし‥‥。
これを華之介にしてしまうのは、
なんだかしのびなくなってきて‥‥。 |
ぼうた |
それで「いぬ」に。 |
トリ |
はい。 |
山下 |
なるほど、
こうやってよくみますと
たしかに編み目がじゃっかん‥‥。 |
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トリ |
こんなの展示してしまって恥ずかしいです。 |
タカモリ |
そんなことないです、
私はすごくカワイイと思います。
編み目は慣れればきれいになるんですけど、
なんというか‥‥
じつは受け取る人たちって
そんなにきれいさを気にしてないんです。
たとえばトリハルさんのこの子は、
縫い目がガタガタしてますよね。
でもそれは決して
手を抜いてガタガタしているわけじゃない。 |
トリ |
はい、必死に編みました。 |
タカモリ |
一生懸命やってガタガタだから、
それだからカワイイんですよ(笑顔)。 |
トリ |
‥‥‥‥ありがとうございます。 |
山下 |
‥‥そして、2作目。
イベントのテーマに合わせて
トリバタケさんはクマも編みました。 |
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ぼうた |
マレー熊(笑)。 |
きはら |
なんでマレー熊にしたんだっけ? |
トリ |
前から好きなんですよ。
かたちがすごいヘンなので。 |
山下 |
ベロをこんなに長くしたのは? |
トリ |
あ、ほんとに長いんです、
マレー熊は舌が長いんです。 |
山下 |
へええ、そうでしたか。 |
トリ |
とにかく、あの、がんばります。
部長の作品のように、
ちゃんと自分色が出るようがんばります。 |
タカモリ |
‥‥トリバタケさん、
色が出てないと思ってるんですか。 |
トリ |
え? ‥‥ええ、はい。 |
タカモリ |
すごい出てますよ。 |
ぼうた |
僕も出てると思う。 |
きはら |
うん、出てるよね。 |
山下 |
はっきり出てますよ。 |
トリ |
み、みなさん‥‥。 |
タカモリ |
2作目で自分の思った形ができるなんて、
それは十分個性が
出てるということなんです。
だから、迷わず
突き進んでください(笑顔)。 |
トリ |
ありがとうございます! |
タカモリ |
ひとつアドバイスするとすれば‥‥
中に詰める、わたの量ですね。
もう少し入れていいかもしれません。 |
トリ |
クタクタにしたかったんですが‥‥。 |
タカモリ |
クタクタにしたいときは、
ゆるく編むんです。
わたを減らすんじゃなくて。 |
トリ |
ああ〜。 |
全員 |
なるほど〜。 |
山下 |
ええと、それでは部員の最後に
僕の作品を‥‥。 |
|
タカモリ |
パンクちゃん。 |
山下 |
はい、僕はこういう耳のたれた
パンクという名のうさぎを飼ってまして、
どうしてもそれが編みたくて
テディベアイベントに参加するにも関わらず
これを編んでしまいました。 |
きはら |
自分に嘘はつけねえ、と(笑)。 |
山下 |
はい(笑)。
ただ、テディベアみたいに編んだんです。 |
ぼうた |
その手足のつきかたがそうですよね。 |
|
山下 |
ええ。
それと、テディベアのように
固く編みました。 |
タカモリ |
そう、カチカチ!(笑) |
山下 |
可能な限りきつく編んだんです。
限界までしぼりこんだ編み目に、
かぎ針をギリギリと押し込むその様子は
畳職人だったと思います。 |
きはら |
その耳も、固いよね(笑)。 |
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山下 |
実物に近いコシがあります。 |
タカモリ |
女子の生徒さんが来てくれたんですけど、
みんなパンクちゃんに触るなり
「きゃー」って(笑)。 |
ぼうた |
ありえない固さなんですね。 |
タカモリ |
あみぐるみをつくったことがある人は
わかるんですよ、
この固さがどれだけすごいことか、
編むのがどんなにたいへんか。 |
山下 |
根性でした‥‥。 |
きはら |
たぶん世界一固いあみぐるみだよね(笑)。 |
山下 |
わたも、ぎゅんぎゅんに詰め込んだので。 |
タカモリ |
でも、すごくカワイイと思います。
山下さんの気持ちが、ゴーッと詰まってて。 |
山下 |
ありがとうございます。
できあがったときはほんとにうれしくて‥‥
じつはとても満足はしているんです。
テディベアっぽくつくることで、
クマのイベントに出品することへの
折り合いも自分のなかでついたし。
なんてカワイイんだ!
僕はものすごいものをつくってしまった!
などと思っていました。 |
トリ |
その気持ちわかります。 |
山下 |
ところが、
実際に会場で展示をしてみると‥‥。 |
ぼうた |
どうだったんでしょう。 |
山下 |
‥‥かすんでしまうんです。 |
ぼうた |
‥‥ほお。 |
山下 |
打ちのめされました。
みなさんの作品の中に置くと、
かすんで見えてしまって‥‥。 |
きはら |
そんなふうに思いましたか‥‥。 |
山下 |
もちろん、
この子への想いは変わらないんですよ。 |
|
トリ |
うみの親ですからね。 |
山下 |
大満足なんです、手放せません。
でも、みなさんの中に置くと
この子はやっぱりかすんでしまう。
これがすなわち、
イラストとかデザインとか
ビジュアル表現をなりわいとするかたと
自分との違いなんだなあと痛感しました。
そして同時に、
そういうすばらしい仲間と一緒に
活動できていることを誇らしく思いました。 |
ぼうた |
‥‥物書きみたいなこと言いますね。 |
山下 |
え? いや、恐縮です(笑)。 |
タカモリ |
とてもいいお話だと思いました、
客観的にみることも大切なので。
でも、かすんじゃうだなんて
そんなことはぜんぜんないんです。
パンクちゃんはほんとカワイイし、
こんなにカワイイのに
じつは畳のように編まれた
いちばん男らしい作品だし。
私には、すっごく輝いて見えましたよ。 |
山下 |
あ、ありがとうございます。
‥‥でも、
いくらなんでも固すぎますよね。 |
タカモリ |
今回はテディベアっぽくという
テーマがあったので構わないですが、
そうですね‥‥
次はゆったり編んでみましょう(笑顔)。 |
山下 |
はい(笑)。
もともと僕には
きつく編むクセがあるようなのですが、
これはどうすれば‥‥。 |
タカモリ |
毛糸が毛糸玉に巻かれている状態を、
イメージしながら編むといいですよ。
「毛糸のおかげ」と思いながら、
無理なテンションをかけず、
自然な状態のままで糸を合わせていく、
そんな感じです(笑顔)。 |
全員 |
なるほど〜。 |
山下 |
ありがとうございました。
それでは、最後に先生、
先生がコンベンションのために編まれた
そちらを。 |
タカモリ |
はい、わんわんを。 |
|
トリ |
衝撃でした。 |
きはら |
これにはやられましたねー。 |
ぼうた |
こうきたか、と。
動かすか、と(笑)。 |
山下 |
この、ちょっと間抜けな表情がまた‥‥。 |
|
タカモリ |
これは、なぜこういう顔にしたかというと、
会場では床にいると思ったからなんです。 |
山下 |
え? 床にいるから、ですか‥‥。 |
タカモリ |
そう、
下から見上げる視線になるでしょ? |
全員 |
‥‥‥‥ああ!! |
トリ |
すごい! 先生はやっぱりすごいです!!
僕はもう、感動しました!! |
タカモリ |
あ、ありがとうございます(笑)。 |
トリ |
‥‥いやあ、そうかあ、下から。 |
きはら |
その、しっぽの動きも人気だったよね。 |
|
タカモリ |
せっかくのイベントなんだし
やっぱりたくさんの人に
集まってほしいなと思って、
こういう動くのを思いついたんです。 |
きはら |
効果てきめんでしたね。 |
ぼうた |
子どもたちの食いつきすごかったですよ。
「これ買って〜!」って
泣いてる子もいましたもん(笑)。 |
山下 |
動くオモチャを
あみぐるんでしまうなんて‥‥。
普通なら生徒がそういう暴走をして
先生はとめる立場ですよね(笑)。 |
タカモリ |
いや、なんか、思うんですけど‥‥
やっちゃいけないことなんて
ないですから(笑顔)。 |
全員 |
‥‥‥‥おおー。 |
ぼうた |
やっちゃいけないことなんて‥‥ |
きはら |
ない‥‥。 |
トリ |
せ、先生、またしても感動しました!! |
タカモリ |
あ、ありがとうございます(笑)。 |
山下 |
大切なことばを
いただいたところで部長、
反省会ぼちぼちお開きにしましょうか。 |
きはら |
ですね。
みなさん、お疲れさまでした。 |
全員 |
お疲れさまでした! |
きはら |
えー、なにやら一段落した感じですが
まだまだ僕らはじまったばかりであると、
どうかそれをお忘れなく。
ね、先生、そうですよね? |
タカモリ |
はい、その通りです。
みなさん、
このかぎ針で、いつの日か、
パリをたぐりよせましょう! |
全員 |
おー! |