タマムシ研究家・芦澤七郎さんに 手がかりを聞きました!

「玉虫研究所」所長、
芦澤七郎さんは、タマムシ飼育・研究の第一人者。
このような本も出版されているかたです。


『千年の輝きーヤマトタマムシ生育の秘密』(知玄舎)


そんな芦澤さんにお話をうかがうため、
われわれは静岡県藤枝市にある
「タマムシの里」という場所を訪れました。


▲出迎えてくださった、こちらが芦澤七郎さん。

「タマムシの里」は、
芦澤さんが主催するアクセサリー工房です。
アトリエの中には、
ここで作られた装飾品がいくつも展示されていました。


ほんもののタマムシの羽を使った装飾品です。


ふたりの女性が手を動かし、
一品ずつアクセサリーを作っていらっしゃいました。


そして‥‥
それはさりげなく、ぽんと、
テーブルの上に、置いてあったのでした。


タマムシの標本です。


あこがれの輝き、虹色の標本を眺めながら、
芦澤七郎先生にタマムシのお話をうかがいましょう。


▲芦澤七郎さん(81)
 1932年静岡県富士市生まれ。明治大学卒業。
 1989年にタマムシの飼育をはじめる。
 2005年「玉虫研究所」を設立。

ほぼ日 タマムシという昆虫は、
種類でいうとどういうグループなのでしょう。
芦澤 グループは、昆虫の中の甲虫類ですね。
カブトムシなどの羽根の堅い種類に入ります。
コウチュウ目、タマムシ科。
そのタマムシの部類でも、
世界中に200数種類のタマムシがおります。
ほぼ日 そんなに種類が。
芦澤 日本のタマムシに、きれいなのが多いんですよ。
「ヤマトタマムシ」
これは、きれいです。

ほぼ日 ああ‥‥美しい。
タマムシといえば、これだけだと思ってました。
芦澤 この、左の羽がヤマトタマムシ。
右の羽は、タイのタマムシです。

ほぼ日 へええーーー。
これを使って、アクセサリーを作っているんですね。
芦澤 そう、
この場所ではそういうことをしています。
ほぼ日 なるほど‥‥。
ということは、この羽が手に入るくらいの
タマムシは、いるということでしょうか。
芦澤 ああ、はい、いますよ。

ほぼ日 そうですか!
芦澤 ええ。
ほぼ日 実はぼくたち、
生きている天然のタマムシに会いたい、
という企画を進めているんです。
芦澤 ほぉ、そうですか。
生きているタマムシに。
ほぼ日 はい。
しかも飼育されたタマムシではなく、
自然の中で生きているタマムシに会いたいのです。
芦澤 なるほど。
ほぼ日 標本なら、見たことがあるんです。
生きて、動いているタマムシを見たことがなくて‥‥。

芦澤 はい、はい。
ほぼ日 もう絶滅してるんじゃないか?
くらいにぼくは思ってたんですよ。
でもどうやら、いることは、いるらしい‥‥。
ならば、
むずかしいことでしょうけど、
「ほんとにいるならタマムシに会いたい」
という企画をやってみようと思ったんです。
芦澤 そうですか。
ほぼ日 ‥‥芦澤先生、どうすればいいんでしょう?
いつ、どこに行けばタマムシに会えるでしょう?
やっぱり絶滅寸前で、
めったに会えるものではないのでしょうか?
芦澤 あのー、ここのところ毎年ですね、
「タマムシ観察会」を開いているんです。

ほぼ日 ‥‥そ、それは、天然のタマムシを鑑賞するんですか?
ここ、藤枝市で?
芦澤 藤枝市のある場所に、
大きな榎(エノキ)がありまして、
そこへ行くと見られるんです。
タマムシは榎を食べますから。
ほぼ日 そ、それは毎年、見られる?
芦澤 見られます。
ただし天気が良くないとだめ。
カンカン照りの日がいいですね。
時期は7月の半ば頃。
高い榎がありまして、
その榎の上をよく飛ぶんですよ。
ほぼ日 高いところを飛んでいる‥‥
ということは、近くで見ることは?
芦澤 それはできないですね。
タマムシはこうして羽を広げて
高いところを飛んでいます。
下から見えるのは、黒い影。

ほぼ日 黒い影‥‥。
できれば、この美しい昆虫を
手のひらに乗せて見てみたいのですが‥‥。
芦澤 そういうことでしたら、
低いところに卵を産みにきたのを
見つけるしかないですね。
8月になると、
卵を産みに降りてくるんですよ。
ほぼ日 おおー。
芦澤 ふだんは10mとか15mとか、
高いとこを飛ぶんです。
「タマムシを捕まえた」って言ってるのは、
7月の下旬から8月になってから
交尾済みで卵を産みに降りてきたのを
捕まえているんだと思います。
だから、そういうタマムシはほとんどメスです。
ほぼ日 なっるほどーーーーー。
ということは芦澤さん、
生きたタマムシを手のひらに乗せて見るためには、
8月の暑い日に榎の下で待っている、
というのがよさそうですね。
芦澤 そうですね。
ほぼ日 ‥‥でも、数はすくないんですよね。
芦澤 いっぱいいますよ、このへん。
一同 ‥‥へ?
芦澤 ただ、見ないだけなんです。
ほぼ日 高いところにいるからですか?
芦澤 そう。
それと、人間は真夏の暑いときに
わざわざ外へ出ることはしないですよね。
ほぼ日 そうかー、快適な生活環境が、
人間とまったく違うから出会わないんだ‥‥。
芦澤 そう思います。
あと、雨のときはだめですね。
雨の日はまったく動かないです。

ほぼ日 国内でいうと? どのあたりにいるんですか?
芦澤 北海道にはいませんが、日本中に。
ほぼ日 ‥‥とくに多い県は?
芦澤 そうですねぇ、どこにでもいます。
ほぼ日 どこにでも?!
芦澤 榎さえあれば。
ほぼ日 榎さえあれば‥‥。
‥‥いやいや、とはいうものの、
たくさんいるわけではないですよね?
芦澤 どのくらいからがたくさんなのかわかりませんが、
絶滅のおそれはまったくないです。
ほぼ日 ええーーー!
芦澤 ま、いっぱいいます。

ほぼ日 い、いっぱい?!
‥‥はああーーーー、
すごく希少な昆虫だと思い込んでました。
芦澤 見つけにくいだけであって、
榎さえあればどこにでもいると思います。
ほぼ日 ‥‥そんなに珍しくはないんだ‥‥。
芦澤 そう思います。
ほぼ日 ‥‥芦澤さん、
たいへん貴重な手がかりを、ありがとうございました。
芦澤 こんなお話でよかったですか(笑)。
ほぼ日 重要な聞き込みができました。
なんだかほんとうに、この手のひらに、
天然の生きたタマムシを乗せられるような、
そんな希望をもてました。
芦澤 がんばってください、応援しています(笑)。

お話をうかがったあと、
われわれは「タマムシの里」で、
アクセサリー作りを体験させていただくことになりました。


▲作業に挑戦する、ほぼ日タマムシ捜索隊。


▲特別に「ヤマトタマムシ」の羽でも作らせていただきました。
 (初回の体験はタイのタマムシからなのです)


▲ヤマトタマムシのネックレス(山下作)


▲タイのタマムシのネックレス・金粉入り(田口作)


▲タイのタマムシのネックレス・金糸入り(モギ作)

この3つの手作りネックレスを
有力情報をお寄せくださったかたに
お礼としてプレゼントいたします。
(ほぼ日グッズも数点、添えさせていただきます)

どんなちいさな手がかりでもかまいません、
タマムシ情報、お待ちしています!

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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
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