オーラル元年
こんにちは。
どうもこんにちは。
今日は、来てくださって
どうもありがとうございます。

毎年、この時期になると
タモリさんにおいでいただいて
今年をふりかえったり、
来年を見るフリをしていますが、
ふりかえるような出来事は、
今年は、ありましたか?

ないですねぇ。
(笑)イイなぁ。

最近、ぼくのほうは、
小林秀雄とか、
吉本隆明さんとかの講演を録音したものが
おもしろいなぁと思っていて。

iPod でそれをきくのにハマっているんですよ。

ためしに、きいてみます?

きいてみましょうか。
じゃあ、小林秀雄の講演から。

アナウンサーの声:
「えー
 ただいまよりー
 小林秀雄先生のー……」
また、ふるいアナウンサーだなぁ。
(笑)
昔のNHKみたいな。
アナウンサーの声:
「……と
 もうしますけれどもー
 日本でー
 最初にー……」
……このへん、とばしますね。
(笑)とばそう。要らない。
小林秀雄の声:
「……念力の実験、ってのをやって、
 おおさわぎになった、
 ってのが、ありますね。
 アレ、ぼく、おもしろかったんです。
 ユリ・ゲラーが……」
志ん生に似てるなぁ。
マネしたんですって。
あぁ、そう。
小林秀雄は
最初は講演がヘタだったんだけど
ウケたくて、志ん生をきいて、
一生懸命マネしたんだって。
そっくりですよね。
そっくりだよねぇ。

(志ん生のマネ)
「船頭が、むこうにいますからな。
 おい、船頭さん、
 舟を、うわての方へやっとくれよ」

(笑)

じゃ、つぎ、
吉本さんのを流しますね。

吉本隆明さんの声:
「……というように
 農耕というものは重要ではありますけれども
 しかし、何千年経っても、
 おなじことをしているわけです。
 春がきたら、種をまいてという……」
(小声で)
農民、バカにしてんのかな?
(笑)いやいや。
吉本さんの声:
「ヨーロッパでもそうでしたが、
 文化を発展させてきたのは、いわゆる
 そうした農耕をする人たちではなくて、
 神人(しんじん)という、
 あがめられたと同時にいやしめられた、
 というような存在であると、
 そのことが重要であると思われまして……」
へぇー。
こういう講演きくの、ちょっとイイでしょう?
うん。いいですねぇ。
もう、最近、やめられない。
ずーっと、iPod できいていて……。
ちょっと、ほしくなっちゃうでしょう?
うん。
きいときたいねぇ。
きいときたいの。

どこか、でかけるときとか、
iPod で講演をきいていると
本を読んでいるようなものですよね。
目が疲れないし。
講演は、聴衆の反応を見ながら
しゃべっていますから、
小林秀雄も、吉本隆明も、
「ぜんぜんわからない」
ということは、活字ほどはないんですよ。

本より、いいよねぇ。
最近、ものを読むと、目がつかれちゃって。
つかれるでしょう?
つかれる、つかれる。
本、ますます、読まなくなるもんなぁ。
じゃあ、この講演の世界ですね。
オーラルな世界。
(笑)オーラルな世界ですねぇ。
来年は、こっちかもしれない。
(笑)オーラル元年。
(笑)オーラルイヤーに。
(笑)……どういうイヤーだろう?
明日に、続きます
次へ

2006-12-25-MON

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN