糸井 |
それじゃ、タモリさんが
いちばんモテてた時期って、いつですか?
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タモリ |
だいたいはモテない歴史なんですけど‥‥、
強いていえば
たぶん30代ぐらいじゃないでしょうか。
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糸井 |
もう、こちらの業界で。
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タモリ |
ええ、こちらの業界で。
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糸井 |
タモリさん、すごく忙しかった時期でしょう?
やっぱり、
そういうときのほうが、モテるんですかね?
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タモリ |
あんときは、命かけてたからな‥‥。
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糸井 |
イグアナのマネに。
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タモリ |
ほら、あんときはさ、
スタントマンみたいなスケジュール
だったからね、オレ。
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糸井 |
そうですか‥‥。
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タモリ |
いやいや「そうですか」って。
スケジュールはふつうでしょう。
スタントマンは。
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糸井 |
そうか、危ないだけで(笑)。
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タモリ |
でも、いまでも覚えてるんですけど、
金曜日の朝、家を出て
『笑っていいとも!』だなんだかんだあって、
で、結局、仕事終わったのが
「日曜日の朝」っていう日がありまして。
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糸井 |
はぁー‥‥。
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タモリ |
たしか朝の5時過ぎに終わったんだけど、
いったん家に帰って、
風呂に入って、したくをして、
またすぐ札幌へ行かなきゃならなかったり。
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糸井 |
「イヤだ!」と思ってるヒマもなく。
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タモリ |
とにかく、スケジュールが目に入ると
「今月は生きていけるんだろうか‥‥」と、
命の危険すら感じてましたね、あの時期は。
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糸井 |
でも、逃げ出したりもせず。
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タモリ |
‥‥出てたよね、オレ。
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糸井 |
だからモテたんでしょうね。
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タモリ |
ガッキーでさえも、オレんとこ来てたね。
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糸井 |
「干した布団のにおいがする」と。
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タモリ |
「ずっと顔をうずめていたい」と。
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糸井 |
でも、そういう「出てる自分」に
勘違いしちゃうケースも、
きっと、いっぱいあるでしょうね。
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タモリ |
うん、それで負けてく人は多いよね。
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糸井 |
たぶん、そこでタモリさんは、
なんていうのかな‥‥「いい気になる」ことが
できなかった人なんでしょうね。
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タモリ |
うーん。
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糸井 |
そんなに売れちゃったら、
「いい気」になれるじゃないですか。
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タモリ |
なれますね。
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糸井 |
ぼくは、そのころ、タモリさんのことを
テレビでしか知らなかったけど、
「いい気になってる姿」は見たことないと思う。
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タモリ |
それはたぶん、
30歳までサラリーマンやってたからでしょう。
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糸井 |
ボーリング場の支配人‥‥でしたっけ。
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タモリ |
そのせいなのか、
どうしても「こっちの世界」だけの感覚には
なりきれないんですよね。いまだに。
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糸井 |
ああー‥‥「いつか見てろよ」という感じが
薄かったのかもしれないですね。
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タモリ |
もともと赤塚さんとこの居候の出ですから。
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糸井 |
そうか、そうか‥‥。そこは重要ですね。
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タモリ |
たぶん、大きいと思うんですよね。
だって、30歳までサラリーマンやってたら、
そのころの感覚って、消えませんから。
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糸井 |
うん、うん。
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タモリ |
まだ「博多でテレビを見ていた人」の感覚が
残ってるんですよ。奥のほうに。
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糸井 |
視聴者が「どう見てるかな?」というのが
わかるわけですね、つまり。
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タモリ |
たぶん。
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糸井 |
でも、タモリさんのその「訓練」って
30代の時期に、
やっとかなきゃならないものだったかも
しれないですね。
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タモリ |
うん、この業界って、「場数」というのが
どうしても、あるていどは必要ですからね。
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糸井 |
息止めてでも
できるくらいにならないと。
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タモリ |
そう。
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糸井 |
きっとダメなんでしょうね。
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タモリ |
まぁ、とにかく12月なんかは、
「オレ、正月迎えられるのかなぁ」なんて
思うぐらいなんですね、毎年。
だから、山と積まれた仕事を前にして
とにかく、やんないと次の日が迎えられない
というような状況なんです。
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糸井 |
うん。
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タモリ |
でも、極端に疲れた果てたときに、
なんかひとつ、
「‥‥ん?」と思うことが、あるんですよ。
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糸井 |
はぁー‥‥。
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タモリ |
こういうふうな気持ちでやったから
よかったんだなとか、
今回は、こうやって、うまくいったな‥‥
みたいなことに気づくんですけど、
それがね、
のちのち、役に立つっちゃ立つんです。
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糸井 |
なんか、ひとつ抜けたときに見えるものが。
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タモリ |
ありますね。
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糸井 |
息を止めても、目をつむってても
できるぐらいになったとき、
はじめてわかることっていうのが。
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タモリ |
ある。
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糸井 |
はからずも。
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タモリ |
イイ話に(笑)。 |
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<つづきます> |