黄昏 た そ が れ  日光・東北編       南伸坊さんと、糸井重里。昔なじみのふたりが、始終しゃべりながら小旅行。前回は鎌倉の名所をめぐりましたが、今回は日光、松島、花巻あたりを回ります。ゆっくと変わる風景と、めくるめく無駄話。いったいいつまで続くのかな‥‥? そしてこの不思議な企画は、なんとすべてをまとめて本になるのです。いえ、ほんとの話です。
南 こないだ、吉本隆明さんの
講演のCDを送ってもらったじゃない。
糸井 ああ。
南 聞いてたらさぁ、糸井さんの声に似てるね。
糸井 それ、ときどき言われるんだけど。
南 いや、いままでは、ぜんぜん
そういうふうに思ってなかったんだよ。
糸井 オレも思ってないし、いまも思ってない。
南 でも、似てるんだよ、どこか。
どこだろうな、声の響きみたいなのが似てる。
糸井 ああー。
ときどき読者からも言われるんだけど、
そうなのかなぁ。
南 うん。なんか、どこか、似てる。
糸井 違うと思うけど、まぁ、いいや。
南 ふつうにしゃべってるときは
ぜんぜん違うんだけどね。
ときどき、似てるときがある。
糸井 あの、軽くしゃべるんだけど、
実は腹にためてるみたいな、
ぼくも吉本さんも、そういう系統の
声の出し方だなっていうのは、思いますよ。
南 ああー、系統ね。
糸井 うん。あと、「ンぐっ」っていう声が
ときどき混ざっちゃったり。
南 はいはいはいはい。
糸井 そういうのはあるかもねぇ。
南 あと、あの、「なんていいましょうか」とか、
「なんていいますか」っていうの、
すごく言うよね、吉本さんは。
糸井 言う。「なんていいますか」。
南 ものすごく「なんていいますか」。
糸井 ものすごく「なんていいますか」。
南 ものすごく言ってるよね。
糸井 一生「なんていいますか」だよね。
南 「ええーと」と
「なんていいますか」で話してるよ。
糸井 うん。いまのいまも、
「なんていいますか」って言ってるよ。
南 言ってる、言ってる(笑)。
糸井 あの人の人生は
「なんていいますか」でできてる。
南 あの、追っかけるように
こだまするように言うでしょ?
あれが、すごくいいなと思う。
糸井 「なんていいますか、
 なんていいますか、つまり‥‥」。
南 そうそうそう。
「なんていいますか、 
 なんていいますかね、
 なんていいますか」。
糸井 うん、うん(笑)。
南 「なんとかいえ」って言いたくなるほど
「なんていいますかねぇー」って(笑)。
糸井 あと、年をとったからっていうわけではなく、
若いころからなんだけど、
ものすごく「繰り返す」んだよね。
南 そうそうそう、文章でもそういう傾向がある。
糸井 そうだね。
南 だから、たとえば、
吉本さんがしゃべったものを
誰かが文章にまとめたりするじゃない?
まとめるわけだから、そこは、
同じことを繰り返さなくてもいいわけだよ。
でも、なぜか、繰り返してしまうという。
糸井 あの人の言ってることをまとめてると
繰り返す必要を感じるんだよ。
南 はははは。
こんだけ繰り返してるんだから、って思うんだ。
糸井 そうそうそう。いや、ほんと。
で、それ、じつは、オレも同じ傾向がある。
南 あ、そう。そこも似てるのか。
糸井 あの、なんていうか‥‥。
南 「なんていうか」(笑)。
糸井 なんていうか(笑)、
ほんとに言いたいことって、
そんなにないんだよ。
で、オレも吉本さんも、きっと、
何度も言ってみて、こう、
伝わるのを待ってるみたいなところがある。
南 あー、はいはい、なるほど。
糸井 そうすると、ああなっちゃうんだよね。
南 へぇー、おもしろいねぇ。



(なんていいますか、つづきます)

2009-10-08-THU

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