黄昏 た そ が れ  日光・東北編       南伸坊さんと、糸井重里。昔なじみのふたりが、始終しゃべりながら小旅行。前回は鎌倉の名所をめぐりましたが、今回は日光、松島、花巻あたりを回ります。ゆっくと変わる風景と、めくるめく無駄話。いったいいつまで続くのかな‥‥? そしてこの不思議な企画は、なんとすべてをまとめて本になるのです。いえ、ほんとの話です。
第9回 日光となまはげ。
糸井 ぼちぼち、日光だね。
そうだね。
糸井 わざわざ来たってことは、
眠り猫だの、なんだの、見るんだろうね。
見ざるだの、言わざるだの。
糸井 煮ざるだの、茹でざるだの。
おだやかじゃないね。
一同 (笑)
糸井 焼きざる!
ははははは。
ほんとは、焼かざるって言うべきかな。
糸井 「生ざる」なんてのもあるんだろうね。
生のさるね。なまざる。
糸井 生ざる、煮ざる、焼きざる。
生はげ、煮はげ、焼きはげ、
っていうのはどうかな。
糸井 ははははは。
だったらさ、「生なまはげ」から
はじまったほうがいいんじゃない?
なまなまはげ?
糸井 生なまはげ、煮なまはげ、焼きなまはげ。
ははははは。
「焼きなまはげ」ってのはすごいね。
どっちなんだって感じだね。
かなり怖いな、それは。
糸井 なまはげってさ、思えばさ、
子どもじゃなくても怖いよね。
「悪いごはいねがー!」なんつって
突然、家に入ってきたらさ。
そうだね(笑)。
糸井 去年だか、一昨年だか、
どこかの村のなまはげが、
女湯に入ってっちゃって、
女の人のおっぱいを触ったんだよね。
あ、はいはい、あったね。
精進が足りなかったんだろうね。
その場合、なまはげの「なま」は、
なまぐさぼうずの「なま」だね。
糸井 「なまぐさなまはげ」だ。
「学名:ナマグサナマハゲ」。
一同 (笑)
糸井 実際、その、おっぱい触っちゃったなまはげは、
年齢的に若いなまはげでさ。
ずいぶん、問題になったらしいよ、なまはげ界で。
「なまはげ界」(笑)。
糸井 いや、ほんとの話、会合が開かれてね、
なまはげなりのルールをつくるべきだとか、
なまはげガイドラインが必要だとか、
そういう話になったらしいんだけど。
「なまはげガイドライン」(笑)。
糸井 いろいろ話し合った結果、
ルールでしばるのはやめて、結論としては、
「なまはげの原点に戻ろう」と、
そういうことになったんだって。
「なまはげの原点」(笑)。
糸井 そこのところは、ちょっといい話だよな。
なまはげのなまはげがいればいいんだよね。
糸井 え? どういうこと?
だから、つまり、
「悪いなまはげはいねがー」っていう
なまはげがいれば、問題ない。
糸井 あ、そうだ(笑)。
ただ、うるさくてしょうがねぇな。
悪い子を探すなまはげと、
悪いなまはげを探すなまはげと、
二重で叫ぶことになっちゃうから。
糸井 ばかなこと言ってるうちに
駐車場に着いたね。日光。ケッコウ。
「日光と言えば、けっこうと言うな」。
糸井 違うだろう。
違うよな。
糸井 「言うなかれ」だ。
はははは。
糸井 「日光を見ずして、けっこうと言うなかれ」。
もう、縮めちゃってさ、「日光と言うなかれ」。
糸井 もっと、どんどん縮めて「日光と言うな!」。
ははははは、「日光と言うな!」。
糸井 もう、子どもの言いぶんだね。
「日光って言うな!」(笑)。
はははははは。
(日光に着いたみたいですが、つづきます)

2009-10-09-FRI

前へ 最新のページへ 次へ

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN