黄昏 た そ が れ  日光・東北編       南伸坊さんと、糸井重里。昔なじみのふたりが、始終しゃべりながら小旅行。前回は鎌倉の名所をめぐりましたが、今回は日光、松島、花巻あたりを回ります。ゆっくと変わる風景と、めくるめく無駄話。いったいいつまで続くのかな‥‥? そしてこの不思議な企画は、なんとすべてをまとめて本になるのです。いえ、ほんとの話です。
第14回 天狗、大威張り。
南 天狗の話の続きだけどね。
糸井 ぜひ、やってください。
南 あの、ドライアイスをね。
糸井 ドライアイス?
南 うん。やっぱり天狗だけに、登場したときに、
霧がこう、漂ったりしてるといいなと思って、
ドライアイスを買おうとしたのよ。
糸井 ああ、なるほどね。
こう、モクモクさせようと。
南 そうそう。
で、現地で調達しようと思って調べたら、
なんか、葬祭センターで買えるらしい、
ということになって。
糸井 あ、つまり、お葬式用の。
南 そそそそ、お葬式でご遺体を。
糸井 なるほどね。
南 で、そこに行って、突然、
「あのー、ドライアイスを5、6キロください」
って言うとね、ギョッとされて、
「‥‥なにするの?」って言われるわけだ。
糸井 ははははは。
死体でも隠し持ってるのか、と。
南 そうそう。
おばちゃん、怪訝な顔してるからさ、
しょうがなく、説明するわけ。
「いや、これからね、迦葉山に、
 天狗になりに行くんで」と。
糸井 ははははは。
南 「こう、登場するときに、
 霧がモクモクしてたほうがいいかなと思って」、
「‥‥天狗?」。
糸井 (笑)
南 で、迦葉山のお寺に行ってね、
断られるだろうなと思ったんだけど、
ダメもとで、お坊さんに、
「そこで天狗になって写真撮っていいですか」
って、訊いたらばね、
「かまいませんよ」と、こうくるわけ。
糸井 いいね(笑)。
南 でね、天狗になるにもさ、顔、塗ったりなんだり、
いろいろやんなきゃいけないからさ、
「なんかこう着替えたりしたいんですけど、
 場所貸してもらえますか」って
お坊さんに訊いてみたわけ。そしたら、
「そのへんでやればいいじゃないですか」って、
そっけなく言われちゃって。
男なんだし、みたいな感じでさ。
糸井 うん、うん。
南 じゃあ、っていうんで、
裏っ側の広めの廊下みたいなところで、
こう、顔、真っ赤に塗ってね、
鼻もつけて、衣装も着て。
で、天狗になって出て行ったら、
「おおおおー」ってものすごく驚くわけ。
糸井 はははは、クオリティー高いからね。
南 そりゃそうだよ。
糸井 素人じゃないからね。
南 何年やってると思ってんだ。
糸井 ははははは。
南 お金もらって、天狗になってんだから。
糸井 ははははは。
南 もう、さっきのお坊さんなんかは、
完全に態度が変わっちゃってるわけ。
ま、ある意味、そのお寺のご本尊だからさ。
糸井 そうか、そうか。インドの人たちが
牛を大事にするのと同じようなもんだ。
南 そうそう。だからね、
「あそこの鐘のあたりで
 写真撮ってもいいですか?」なんて訊くと、
「どうぞ、どうぞ」ってなもんでさ。
糸井 (笑)
南 「楼閣に上がりたいんですけど」なんて言うと、
「もう、どんどん上ってください」と。
糸井 なにしろ、天狗だからね。
南 天狗だからさ。もう、大威張り。
そのうち、ドライアイス買ったときの
葬祭センターのおばちゃんなんかも
見物に来ちゃってさ。
糸井 「天狗になるって言ってたけど、
 ほんとかしら?」って。
南 で、天狗のオレを見て、
「まぁ、上手、上手!」って(笑)。
糸井 「上手」(笑)。
南 近所のおばちゃん3人ぐらい連れてね。
あれは、なかなかたのしかったな。
糸井 いい経験だねぇ。
それで、幼稚園行って、子どもおどかして。
南 そうそう。いろいろやりましたよ、天狗は。
ふと、木にのぼってみたりさ。
糸井 ははははは。
南 消防署なんかに行くとさ、
消防車が停まってるわけだよ。
で、消防車って真っ赤だからさ、
「ちょっと乗ってみようかな」って思ってね。
糸井 赤いものつながりで。
南 赤いものつながりで。
オレもおまえも真っ赤だし、ってことで。
で、見回すと幸い誰もいないから、
天狗、運転席でハンドル握って、
こーんなんなったりして。
糸井 はははは、なにをやってるんだ(笑)。
南 あとね、そのときに学んだんだけどね、
ドライアイスで大量にモクモクさせたいんなら、
お湯をたっぷり持っていかなきゃダメだ。
糸井 モクモク、失敗したんだ(笑)。
南 うん。お湯が少なすぎた。
あれは勉強になった。天狗、反省。
糸井 (笑)



(感想メールも待ってます。つづきます)

2009-10-15-THU

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